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事業承継

 当事務所では、税理士や公認会計士と提携し、事業承継分野にも積極的に取り組んでおります。会社経営者様の相続問題は、後継者にスムーズに事業を承継させるためには乗り越えなければならない問題が多岐にわたります。株式の価値の評価から始まり、株式の価値が想像以上に大きい場合は遺留分の問題も発生し、これらを手つかずのままにしておくと、株式は散逸してしまい、安定した会社経営が不可能となってきます。これでは、せっかく後継者が育っていたとしても台無しになってしまう可能性があります。

 当事務所では、会社経営者様の相続案件を取り扱ってきた実績もあり、事業承継についても力を入れております。

 以下では、事業承継においてよく質問される事項をご紹介します。

① 会社の株式の相続と遺留分との関係について

 確かに、会社の株式を全て後継者に相続させると、どうしても他の相続人の遺留分を侵害するケースが出てくる可能性があります。

 そのような場合は、経営承継円滑化法の活用を用いることを検討すべきです。旧代表者の株式を後継者に贈与し、他の推定相続人との間でこれを遺留分基礎財産に算入しないことや(除外合意)、贈与時の価額で遺留分基礎財産を計算する旨の合意(固定合意)することができます。固定合意ができれば、A5で解説した後継者の経営意欲を削ぐようなことは回避することができます。

 また、株式には、配当を受ける権利である自益権と、議決権を行使する共益権という二つの権利が内包されております。この権利を分離して、後継者に議決権を行使する共益権を全て承継させ、自益権を法定相続に応じて承継させるということも考えられます。共益権は財産的価値が0と評価されますので遺留分の問題を回避することもできます。具体的な方法としては、種類株式の導入や、株式を信託財産化し相続人を受益者としますが、後継者にのみ議決権の行使を指図する権利をもたせるという方法もあります。

② 旧代表者の認知症に対応する方法

 遺言書を作成する際、生前と死後の間に判断能力が低下(喪失)する時期があるというのを意識することが重要です。超高齢化社会となっている現在、会社の代表者が認知症により判断能力が低下する時期を意識した事業承継(相続)が求められます。

 仮に、会社の代表者が認知症により判断能力を失った場合、どうなるでしょうか。何も法的な手当をしていない場合は、裁判所に成年後見人の選任申し立てを行うこととなります。成年後見人は親族よりも弁護士や司法書士などの専門家が選任されることが多いとされています。そうすると、成年後見人は、本人の生活を維持することを目的として財産管理を行いますから、これまで会社の代表者が考えていた財産の相続、承継とは全く異なる方針で財産管理が行われることとなります。これでは、会社代表者がせっかく考えていた適切な事業承継も無に帰してしまいます。

 そこで、事前に会社代表者の判断能力がしっかりしている間に、親族(後継者)を後見人とした任意後見契約を締結する必要があります。任意後見契約を作成する段階で、会社代表者の意思も明らかとなり、後継者もその意思を受け継いで財産管理を行うことができるようになります。

 ただし、任意後見契約は、あくまでも会社代表者本人の生活を守ることが中心となる制度です。ですから、後継者が任意後見人となったとしても、自身のためや会社のために財産を処分することは制限されてしまいます。事業承継という意味では、この任意後見制度も完全なものではありません。

 ですので、ケースによっては、会社の株式や不動産については、あらかじめ後継者との間で信託契約を締結することも検討するべきだと思います。信託契約を結んでおけば、会社代表者の財産ではなくなるので、仮に会社代表者に認知症が発症しても成年後見人が管理する財産に含まれませんし、会社のために財産を処分することも可能となります。

 なお、信託契約において、判断能力に問題が生じた場合の取り決めも行っていれば、経営に空白を生じさせることはありません。

③ 後継者が決まらない場合

 この場合は、M&Aという手法もあり得ます。他方で、会社を廃業するという方法もあります。廃業するには清算手続、特別清算手続、破産手続という方法のいずれかを採ることとなります。

 詳しくは、・破産・会社整理・特別清算をご確認下さい。

 

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森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

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