最近、写真や絵画、さらに「eスポーツ」といわれるゲームの技能を競うコンテストを開催するにあたって、より多くの参加者を募るために賞金を授与したいという相談があります。
また、子供たちの才能を開花させるために入賞した場合に、より技能を磨けるチャンスが与えるために金銭的な援助を一部できるようなことをしたいという相談も増えてきているように思います。例えば、少年サッカー大会で優勝したチームにヨーロッパのプロサッカーの試合に招待するための旅費等を賞金という形で渡すような場合です。
しかしながら、上記の賞金が景品表示法2条3項の「景品類」に該当してしまうと、以下のような規制がかかってしまいます。
懸賞による取引価額 |
景品類限度額 |
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最高額 |
総額 |
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5,000円未満 |
取引価額の20倍 |
懸賞に係る売上予定総額の2% |
5,000円以上 |
10万円 |
そのため、賞金が「景品類」に該当してしまうと、入賞者などの成績優秀者に与えられる賞金の上限が10万円に制限されることになります。これでは、コンテストの盛り上がりや、後進を育てるための大会としては少し物足りない感じがします。
では、技能を競うようなコンテスト(大会)で入賞者に提供する賞金は「景品」に該当するのでしょうか。この点について以下検討してみたいと思います。
一般に、景品とは、粗品、おまけ、賞品等を指すと考えられておりますが、景品表示法の「景品類」とは、
⑴顧客を誘引するための手段として、 ⑵事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に附随して提供する ⑶物品、金銭その他の経済上の利益 であって、内閣総理大臣が指定するもの |
をいうと規定されています。
この⑶の金銭には賞金も含まれます。そのため、イベント(大会)の成績優秀者への賞金が、⑴と⑵を満たすと、「景品類」にあたり、賞金の上限が10万円に制限されてしまいます。では⑴や⑵を満たすでしょうか。
この点、主催者が賞金を成績優秀者に与えることになっていたとしても、参加者が主催者の販売する商品を購入しなくても参加できる大会であれば、⑴や⑵の要件は満たされません。その結果、賞金は「景品類」に該当しませんから、主催者は、上限や総額などの規制を気にせずに、賞金を提供することが可能になります。
また、本件大会の参加料を徴収する場合、参加料の拠出を大会参加の条件として豪華賞品を提供することになるため、「取引を条件として他の経済上の利益を提供する場合」に当たり、取引付随性が認められてしまいます。そのため、参加料を徴収しない方式にすれば、規制の対象にならずにすむケースもあります。
このように、大会の開催方法次第では、成績優秀者への賞金は「景品類」に該当しない場合もありますのでご注意ください。
なお、eスポーツなどにおいて、大会の主催者と、一般消費者に向けてゲームを有料にて供給している事業者が同一の場合は、さらに注意が必要です。この場合は、参加者がゲームの技能を向上させるために当該主催者(事業者)の供給するゲームを有料にて繰り返し利用することになります。その結果、有料ユーザーが賞金という経済上の利益を容易に取得しやすくなるため、この成績優秀者に提供される賞金は「取引に付随」する提供に当たるものとなってしまいます。
このように、コンテスト(大会)で賞金を授与する場合には、景品表示上の様々な問題がありますので、ぜひ、弊所にご相談ください。
参加者から参加料を集め、その参加料から賞金が支払われる場合には、参加者が技能や成績の優劣を競って財物や財産上の利益の得喪を争うことになるので、刑法185条の「賭博」行為にあたる可能性があります。なお、賭博罪の刑罰は、50万円以下の罰金または科料です。
そのため、イベント(大会)を開催する場合には、会場使用料に充てるのみにするなど、参加料を賞金の原資には充てないという方法をとることが必要です。
森大輔法律事務所は景表法のみならず薬機法等の表示に関する法的問題のサポートに力を入れております。まずは、お電話からの面談の予約、または森大輔法律事務所のお問い合わせフォーム(https://moridaisukelawoffices.com/contact)よりご相談をご予約ください。ご相談の日程を調整させて頂き、面談を実施させて頂いております。
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