景品表示法に違反する表示や、過大な景品類の提供が行われている疑いがある場合、消費者庁は、関連資料の収集、事業者への事情聴取などの調査を実施します。
調査の結果、消費者庁は、景品表示法第4条の規定による制限もしくは禁止に違反する行為、第5条に違反する行為が認められるときは、その行為を行っている事業者に対し、弁明の機会を付与したうえで(行政手続法13条1項2号)、
◆行為の差し止め
◆違法行為が再び行われることを防止するために必要な事項
◆これらの実施に関連する公示
◆その他必要な事項
を命ずることができます。
これを、措置命令といいます。(景品表示法第7条第1項柱書前段)
具体的な命令の内容としては、当該行為を行っている事業者に対する、違反行為の差止め、今後同様の違反行為を行わないこと、一般消費者に与えた誤認の排除、誤認排除のための新聞広告等による公示、再発防止策の策定・実施、今後の広告の提出等があります。そして、事業者は、消費者庁に対し、措置命令に従って採った措置の内容を記載した措置完了報告書を提出し、事後報告を行う必要があります。なお、かかる措置完了報告書では、具体的な対応を講じたことを示す必要がありますので、消費者庁から具体的な対応を講じたことを示す資料の提出が求められます。しっかりと措置命令の対応を行ったと言えなければ、措置完了報告書の提出が完了したことにならないため、注意が必要です。どのような資料を提出するかといった点は、弁護士に相談しながら作成する方がスムーズに対応が可能かと思います。また、措置命令が出されたときは、その内容が公表されます。
そのため、課徴金の納付を命ずることが出来ないケースであったとしても(算定した課徴金額が150万円未満の場合)、事業者には著しい損害が発生してしまう可能性もあります。景表法違反をした事実が明らかになることで、事業者の信用が低下し企業価値も損なわれます。また、一般消費者から返金対応を求められる等の対応を余儀なくされるケースも多いです。
さらに、誤認排除のための公示は、インターネットで公示をすれば足りるのではなく、基本的に新聞広告(全国紙2社)による公示が求められます。そのため、事業者は、新聞広告による公示により高額な費用を負担することになります。このように、措置命令といっても事業者に対する影響は大きなものといえるため、軽視することは決してできないと思われます。
また、この命令は、違反行為がすでになくなっている場合であっても行うことができます。
(景表第7条第1項柱書後段)。
たとえば、既に取りやめられた違反行為によって生じた消費者の誤認の排除や、再発防止措置、不作為命令などがなされる可能性があります。
また、除斥期間の規定もありません。そのため、時期に関係なく命令がなされます。
規制の主体は内閣総理大臣です。しかし、措置命令を行う権限は、内閣総理大臣から消費者庁長官に委任されております(景表第33条第1項、景表施行令第14条)。そのため、実際は消費者庁が行い、措置命令は、消費者庁長官の名で行われます。
措置命令は行政処分です。そのため、措置命令を受けた事業者には、実行の義務があります。
措置命令に従わない場合は、以下のような罰則があります。
◆措置命令に従わない者→2年以下の懲役または300万円以下の罰金。情状により、懲役と罰金の併科(景表法第36条)
◆措置命令に従わない事業者→3億円以下の罰金。(景表法第38条1項)
◆措置命令違反の計画を知り、その防止に必要な措置を講じなかった法人代表者→300万円以下の罰金。(景表法第39条)
措置命令に対しては、不服申し立てを行うことができます。具体的には、行政不服審査法にもとづく消費者庁長官への審査請求または行政事件訴訟法第3条第2項に基づく処分取消訴訟を行うことが可能です。
審査請求は、措置命令があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に消費者庁長官に対して行います。
取消訴訟は、措置命令があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内に、国に対して、処分の取消の訴えを提起します。
但し、措置命令を受けた後に行政処分の適法性を争うことは相当にハードルが高いです。まずは、措置命令を受ける前にぜひご相談いただきたいと思います。。