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広告審査の失敗事例から学ぶ!よくあるNG表現とその回避策を弁護士が解説

1 広告づくりと広告審査はセットで重要!

(1)どんな広告をつくるかは重要

一般消費者の興味を惹き起こし購買意欲をかき立て、自社商品の売り上げUPに繋げるために、広告は、企業活動において重要な役割を果たしています。

そのため、新聞や雑誌に掲載される広告、テレビCM、駅ポスターはじめ、インターネット等を利用した広告も活発に行われています。

 

(2)法律違反の広告による大ダメージ

(ア)具体例

しかし、広告の中には、例えば、健康の保持増進の効果が必ずしも実証されていないにもかかわらず、当該効果を期待させてしまう危うい内容のものも見受けられます。

広告表示は「健康増進法」や「景品表示法」等の法律・業界ルールによって、規制されています。

表示全体をみたとき一般消費者の誤解を招いてしまうような虚偽誇大表示は、優良誤認表示のある広告は景品表示法や薬機法(正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。)に抵触するためNGです。

 

(イ)違反行為に対するペナルティ

「景品表示法」に違反する広告を世の中に出してしまった場合、消費者庁による調査がなされ、違反行為が認められたときには措置命令が出されます。

措置命令は公表されるので、その不名誉な事実が広く世間に知られて企業イメージが下がります。

また、課徴金納付命令が出されると、経済的にもダメージも受けます。

つまり、法律違反の広告を世の中に出したことによって、会社は大変な事態に陥ってしまいます。

 

(3)広告出稿前にしっかり審査し是正する

そのため、広告は出稿前に、法律や業界ルールに違反していないか等を慎重にしっかり審査して是正することが大変重要となります。

つまり、広告づくりと共に、出稿前の広告審査もセットで重要といえます。

 

 

2 よくあるNG表現

では、出稿前の広告審査の段階で、どのような広告表現や広告表示がNGとして指摘されるのでしょうか。

よくあるNG表現を御紹介いたします。

 

(1)医師の診断、治療等によることなく疾病を治癒できるかのような表示

①具体例

・「この商品を飲めば、医者に行かずともガンが治る!」

・「薬に頼らずに、糖尿病や高血圧を改善したい方にオススメです」

 

②解説

ガン、糖尿病、高血圧など、通常、医師の診断、治療等を受けなければ保健衛生上重大な結果を招く恐れのある疾病について、医師の診断、治療等によることなく疾病を治癒できるかのような表示は、虚偽誇大表示等として薬機法に抵触するおそれがあります。

なお、このような表示によって、診療を要する疾病を抱える者が適切な診療機会を逸してしまうおそれがあるので、消費者庁は、原則として「勧告」対象としています。

 

 

(2)健康食品を摂取するだけで短期間で容易に著しい痩身効果が得られるかのような表示

①具体例

・「食べたカロリーをなかったことに」

・「普段の食事を変えなくても、1か月で10Kg減りました」

 

②解説

適切な運動や食事制限をしながら人が痩せることができるのは、6カ月間で4kgから5kg程度までとされているので、健康食品を摂取するだけで、特段の運動や食事制限をすることなく、短時間で容易に痩身効果を得られるような表示は、景品表示法上の優良誤認に該当するおそれがあります。

 

 

(3)最上級又はこれに類する表現

①具体例

・「最高級ミネラル成分配合」

・「血圧に作用するサプリメントの中で日本一の品質です」

 

②解説

健康の保持増進の効果は、個人の健康状態や生活習慣等の多くの要因により異なっており、現存する製品など一定の範囲の中で最高の効果を発揮することは立証できないので、「最高級」「最高レベル」「日本一」「ベスト」といった最上級の表現を用いる広告等はに該当するおそれがあります。

また、「誰でも簡単に」「絶対」等の表現を用いて、どのような場合でも必ず効果があると一般消費者に認識される表示についても、客観的に立証することが困難なので、優良誤認に該当するおそれがあります。

なお、「顧客満足度ランキング第1位」「ダイエット部門売り上げNO.1」などと強調する表示が行われることがありますが、これらのNO.1表示の根拠となる具体的な調査条件や出典等が明瞭に記載されておらず、一般消費者に実際のものよりも著しく優良なものと誤認させる表示をする場合には、優良誤認に該当するおそれがあります。

 

 

(4)試験結果やグラフの使用方法が不適切

①具体例

・試験結果を示すグラフを極端にトリミング(スケール調整)することにより、実際の試験結果よりも過大な効果があるかのように表示

・実際には、複数の試験結果があるにもかかわらず、有意差の大きい試験結果のみを広告において使用することにより、全ての試験結果において有意差のある結果が得られたかのように表示

 

②解説

広告に試験結果やグラフを使用することが、直ちに虚偽誇大表示等に当たるものではありませんが、不適切な使用によって一般消費者に誤認される表示をする場合には、景品表示法上の不実証広告等に該当するおそれがあります。

 

 

(5)価格等の取引条件について誤認させる表示

①具体例

・「今月末までの限定キャンペーン!!定期購入の初回分を無料で提供します!」

と表示しているにもかかわらず、当該月末経過後においても、同様のキャンペーンを継続している場合

・「通常3,000円で販売している商品ですが、初めてお申し込みをしていただいた方には、特別に980円で御提供します」

と表示しているにもかかわらず、実際には当該商品を最近相当期間にわたって3000円で販売したことがない場合

 

②解説

価格などの取引条件について、実際のものや競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示は、景品表示法上の有利誤認表示として禁止されておりNGです。

 

 

 

(6)体験談の使用方法が不適切な表示

①具体例

・実際には、体験者が存在しないにもかかわらず、体験者の存在を捏造したり、体験者のコメントを捏造する場合

・有償、無償を問わず、肯定するよう特に依頼した体験談であるにもかかわらず、一般の利用者の体験談であるかのように表示する場合

・一部の都合の良い体験談のみ引用して、誰でも容易に同様の効果が期待できるかのような表示がされている場合

 

②解説

実際に商品を摂取した者の体験談を広告に使用することが、直ちに虚偽誇大表示等に当たるものではありませんが、体験談を不適切に使用することにより、一般消費者に誤認される表示をする場合には、景品表示法上の有利誤認に該当するおそれがあります。

 

★体験談において一般消費者の誤認を招かないようにするためには、

当該体験談を表示するに当たり事業者が行った調査における

 ⅰ体験者の数およびその属性

 ⅱそのうち体験談と同じような効果が得られたものが占める割合

 ⅲ体験者と同じような効果が得られなかったものが占める割合

等を明確に表示するとよいでしょう。

 

また、「個人の感想です」「効果を保証するものではありません」「軽い運動を併用した結果です」等と表示したとしても、虚偽誇大広告等に当たるか否かの判断に影響を与えるものではありません。

商品に含まれる成分の効果を強調する表示や、体験談等を含む表示内容全体から、当該商品に健康保持増進効果があるものと一般消費者に認識されるにもかかわらず、実際にはそのような効果がない場合、その表示は虚偽誇大表示等に該当します。

 

なお、令和5年10月からステルスマーケティング(ステマ)も規制されておりますので、注意が必要です。

ステマについては、別記事「『PR』表記は必要?ステマにならない広告の出し方を弁護士が解説」でわかりやすく説明しておりますので、どうぞご覧ください。

 

3 NG表現を回避するには

(1)表示全体から表示ごとに個別具体的判断

ここまで出稿前の広告審査の段階で、どのような広告表現や広告表示がNGとして指摘されているかを御紹介してまいりました。

しかし、NG表現は、これだけにとどまりません。御紹介したNG表現は、ほんの一部です。

その反面で、景品表示法の規定は、特定の用語、文言等の使用を一律に禁止するものではないため、実際に、虚偽誇大表示等に該当し法律に違反するか否かは、表示全体から、表示ごとに個別具体的に判断することが必要になります。

 

(2)広告規制に関する法律・業界ルールを学ぶ

そのうえ、広告の対象となる商品がどのようなものかによって、規制する法律や業界ルールが変わります。

したがって、広告の対象となる商品に合わせて、規制する法律や業界ルールがどういうものであるかを調べて学び、注意深く対応することが必要になります。

 

(3)幅広い法的対応力

たとえ、これら広告を規制する法律や業界ルールに違反していなくても、広告表現が、他者の肖像権、著作権、商標権などの権利を侵害している場合は、損害賠償請求等をされるリスクがあります。

また、例えば、人種差別的な表現や非人道的な表現であると受け取られてしまう場合は、国際的に非難を浴びて炎上するリスクがあります。

したがって、広告審査をするにあたっては、幅広く、著作権法、商標法、憲法、国際条約等にも目配りして対応できると安心でしょう。

 

(4)広告クリエイターと別の人が広告審査する

ただ、広告づくりのクリエイティブな段階で、その表現内容・表現方法などが、法律や業界ルールに違反していないか、炎上リスクはないか等に気を配りながら、NG表現を完全に回避することは至難の業です。

広告づくりのクリエイティブな担当者とは異なる法的素養のある者が、出稿前の広告審査を担当し是正の提案をした方が効率的です。

自社の法務部内などで、広告審査を専門に担当する部署をつくることができれば安心でしょう。

 

(5)弁護士に相談する

しかし、そのような部署の立ち上げコスト、法律・ルールを調べて適合性を判断する時間的・労力的負担を考えると、むしろ広告審査を得意とする弁護士などに外注する方が、費用対効果のよい場合もあります。

広告審査を専門とする弁護士は、法律の専門家として幅広い法的対応力があるので、法律・ルール違反や炎上リスクのない広告出稿を、しっかりサポートすることができます。

 

森大輔法律事務所は、平成27年の開業以来、「ステマ(ステルスマーケティング)規制」で注目される景品表示法や、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」に関する分野について、多様な広告審査の御相談をお受けしてまいりました。お客様からは、「広告表現の細かいニュアンスの部分は、素人ではわからないところがあるので、まずは一旦弁護士に聞けるのはありがたい」「代替表現まで提案してくれるので助かる」などのお声をいただいております。

 

・自社の広告が法的に問題がないか、炎上リスクがないか、不安な方

・消費者から景品表示法違反を指摘され、どのように対処したらよいか、お困りの方

・法律・ルールの調査や適合性の判断にかかる時間的・労力的負担を軽減したい方

お気軽に森大輔法律事務所へ御相談ください。

 

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森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

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