打消し表示について

1 総論

打消し表示については、表示方法(文字の大きさや表示時間等)が中心として議論されることが多いですが、打消し表示の内容が正しく理解できているかどうかという点の表示の内容についても打消し表示は問題となります。この点、打消し表示の内容について、「表示方法の調査で打消し表示を見落とした割合ほどではなかったが、打消し表示の内容自体が正しく消費者に理解されない場合があることが判明した。」(大元慎二編著の「打消し表示の実態と景品表示法の考え方」5頁)との報告もあり注意が必要です。

2 打消し表示の表示方法

  ア すべての媒体に共通して問題となる表示方法
  • 打消しの文字の大きさ

・大元慎二編著の「打消し表示の実態と景品表示法の考え方」では「打消し表示は、強調表示といわば「対」の関係にあることから、強調表示と打消し表示の両方を適切に認識できるように文字の大きさのバランスに配慮する必要があり、打消し表示の文字大きさが強調表示の文字の大きさに比べて著しく小さい場合、一般消費者は、印象の強い強調表示に注意が向き、打消し表示に気付くことができないときがあると考えられる。」(同書82頁)と指摘されています。

 多くの広告では、強調表示の文字のポイントが大きく、打消し表示の文字のポイントが小さく表示されています。大元慎二編著の「打消し表示の実態と景品表示法の考え方」の61頁では、「多数の者が打消し表示を見落とした主な要因として、最大48ポイントで表示された強調表示に対して、いずれの打消し表示も10ポイント程度の小さな文字で表示されており、強調表示の文字と打消し表示の文字の大きさのバランスが悪いことが考えられる」という指摘がされており、あまりにもバランスが悪い場合は不当表示になるケースもあるとの注意が必要です。

・なお、「見にくい表示に関する実態調査報告書―打消し表示の在り方を中心に―」の中では、「一般消費者が手に取って見るような表示物の場合には、その表示スペースが小さい場合であっても、最低でも8ポイント以上の大きさで表示することが必要である」という点が引用されております。

  • 打消し表示の配置箇所
  • 強調表示と打消し表示がどの程度離れているのか等や、打消し表示と背景の区別(例えば、明るい水色、オレンジ色、黄色の背景に、白の文字で打消し表示を行った場合:大元慎二編著の「打消し表示の実態と景品表示法の考え方」83頁)などにも注意しないと景品表示法上の問題を生じうるので注意が必要です。
イ 動画広告において問題となる表示方法
  • 動画広告の特徴

動画広告は、①表示されている時間が限られる、②文字以外の音声等の要素にも視聴者の注意が向けられる、③画面が切り替わるたびに新しい情報が提示される、④映像と音声の組み合わせにより、視聴者に強い印象を残す、⑤情報が次々と映し出されては消え、手元に表示が残らない等の特徴があります(大元慎二編著の「打消し表示の実態と景品表示法の考え方」84頁)。

  • 打消し表示が含まれる画面の表示時間

打消し表示を読む時間が全くない場合や、打消し表示の表示されている時間内に打消し表示を読み終えることができない場合は、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えら、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがあるので注意が必要です(大元慎二編著の「打消し表示の実態と景品表示法の考え方」85頁)。

  • 音声等による表示の方法

動画の場合は視聴者が受動的に情報を受け取るという特徴もあるため、音声による強調表示がなされた場合は、そちらだけに注意がいき、その後に画面で打消し表示がテロップ等で流されても気が付かないケースも十分に予想されるの注意が必要です。

その他にも、動画広告では、画面に現れた人物等が「こちらをご覧ください。」などと言い指示した方に一般消費者の注意が向けられることがあります。そのため、同一画面内に表示された打消し表示に一般消費者の注意が向かない場合があります。こうした表示方法により、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるので注意が必要です(大元慎二編著の「打消し表示の実態と景品表示法の考え方」86頁)。

 

3 打消し表示の表示内容

     表示の内容について正しく理解ができないようなものであれば、そ れによって一般消費者が実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると誤認してしまった場合は不当表示となるので注意が必要です。

     例えば、Wi-Fiルーターを購入する際に、いつでもどこでもインターネットができるという強調表示がされている一方で、「※エリアによってはご利用いただけない場合や速度が遅くなる場合があります」という打消し表示だと、その打消し表示の内容について正しく理解ができないことが予想されます。具体的には、上記打消し表示は供給区域

(一部区域ではサービスの提供がない)の問題など認識する人もいれば、地下やトンネルでは利用ができない場合があると理解する人もいます。実際は供給区域に制限があるにも関わらず、地下やトンネルの場合にだけサービスが制限されるというものであれば、それは有利誤認にあるとものと考えれるので注意が必要となります(大元慎二編著の「打消し表示の実態と景品表示法の考え方」91頁以下参照)。

 

4 体験談の表示

  ア 体験談を入れることの効果

     例えば、「たったこれを飲むだけで、お腹まわりがスッキリ。満足で す。」などという体験談を広告に入れることで、消費者にどのような影響を与えるのかという点について、大元慎二編著の「打消し表示の実態と景品表示法の考え方」では意識調査を行った結果を掲載しています。

     同書によれば、体験談に気付いた回答者(443人)のうち、「自分に効果がある」と思うと回答した者の割合は39.3%であり、他方で体験談に気付かなかった回答者(557人)のうち、「自分に効果がある」と思うと回答した者の割合は13.8%であるとの結果を受けて、「広告を構成する表示のうち体験談が、回答者の効果に関する認識に影響していると考えられる。」と指摘しております(同書127頁)。

     つまり、これらを見ると、体験談を入れることで「効果がある」と一般消費者に認識させる効果があるということが実証されております。

   イ 打消し表示の効果

 広告では、体験談を載せる一方で「個人の感想です」や「効果は個人差があります」などという打消し表示を入れることが非常に多いです。果たしてこのような記載にはどのような意味があるのでしょうか。

 この点について、大元慎二編著の「打消し表示の実態と景品表示法の考え方」では、以下のような意識調査の結果があがっております。すなわち、「1回目に体験談に気付いたが、打消し表示に気付かなかった回答者(369人)は、1回目に55.0%が「『体験談と同じような効果』が得られる人がいる」と思うと回答していたところ、2回目に打消し表示を見た上でも48.8%が「『体験談と同じような効果』が得られる人がいる」と思うと回答しており、打消し表示に気付いたことによっても効果に関する認識に大きな変化はなかった。」とのことです(同書131頁以下)。

 つまり、このような打消し表示を入れたとしても、商品の効果や効能に対する意識は特に変わらないということが実証済みとなっております。

   ウ 景品表示法上の考え方

     上記の意識調査の結果等を踏まえ、大元慎二編著の「打消し表示の実態と景品表示法の考え方」では、以下のように結論づけております。

つまり、「『個人の感想です。効果を保証するものではありません。』といった打消し表示に気付いたとしても、体験談から受ける「『大体の人』が効果、性能を得られる」という認識が変容することはほとんどないと考えられる。また、広告物は一般的に商品の効果、性能等を訴求することを目的として用いられており、広告物で商品の効果、性能等を標ぼうしているにもかかわらず、「効果、効能を表すものではありません」等と、あたかも体験談が効果、性能等を示すものではないかのように記載する表示は、商品の効果、性能等を標ぼうしているいことと矛盾しており、意味をなしていないと考えられる。」(同書137頁)。

     「このため、例えば、実際には、商品を使用しても効果、性能等を全く得られない者が相当数存在するにもかかわらず、商品の効果、性能等があったという体験談を表示した場合、打消し表示が明瞭に記載されていたとしても、一般消費者は大体の人が何らかの効果、性能等を得られるという認識を抱くと考えられるので、商品・サービスの内容について実際のもの等よりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。」(同書138頁)、との報告がなされております。

   エ 体験談を用いる場合の留意点

     同書では、上記のような景品表示法上の問題を指摘した上で、体験談を用いる場合の留意点について、以下のようにまとめています。

「当該商品・サービスの効果、性能等に適切に対応したものを用いることが必要であり、商品の効果、性能等に関して事業者が行った調査における(ⅰ)被験者の数及びその属性、(ⅱ)そのうち体験談と同じような効果、性能等が得られた者が占める割合、(ⅲ)体験談と同じような効果、性能等が得られなかった者が占める割合等を明瞭に表示すべきである。」(同書139頁)。


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