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広告審査における『不適切コンテンツ』と対応策

1.不適切コンテンツは広告審査落ち

(1)「不適切コンテンツ」による弊害

不適切コンテンツを含むインターネット広告は、ユーザーのインターネット体験を損なって安全・安心な消費生活を妨げるうえ、広告掲載するウェブサイトを運営する会社の評価や信頼の低下を招き、インターネット広告全体の信頼や価値を損なうおそれすらあります。

 

(2)「不適切コンテンツ」に対する規制

そのため、他社の広告媒体にインターネット広告を掲載したい場合には、その会社の広告ポリシー等による規律に服する必要があります。

掲載予定の広告媒体の会社によって広告審査されて、広告ポリシーに反する不適切コンテンツが含まれていると判断された場合には、いわゆる広告審査落ちとなります。

その結果、インターネット広告が希望する媒体に掲載されなくなったり、場合によってはアカウントの制限・停止等のペナルティを受けることになってしまいます。

 

(3)対応策

したがって、他社の広告媒体に掲載するインターネット広告を作成するときの対応策といして、広告ポリシーをよく確認・遵守して、不適切コンテンツを含まないようにすることが重要です。

 

 

2.世界的プラットフォームによる広告審査

(1)プラットフォームとは

インターネットやWeb上においてユーザーと広告主企業などの仲介役を果たすサービスを、「オンラインプラットフォーム(プラットフォーム)」といいます。

プラットフォームに掲載できる広告がどのようなものであるかについて、各プラットフォームごとに「広告ポリシー」が定められています。

 

(2)広告ポリシーと広告審査

インターネット広告が掲載される前に、掲載予定のプラットフォームによって、広告ポリシーが遵守されているかの広告審査があります。

たとえば、検索エンジンのGoogleにおいてインターネット広告を配信するためには、Google社によるGoogle広告ポリシーに沿った広告であるかどうかの審査を通過しなければなりません。

もし、その広告に不適切コンテンツが含まれていて遵守すべきポリシーが守られていないと判断された場合には、広告審査落ちとなって、配信してもらえません。

更に、場合によっては、アカウントが制限・停止されることすらあります。

 

(3)対応策

したがって、プラットフォームへの掲載を希望するインターネット広告を作成するときの対応策としては、そのプラットフォームの最新の広告ポリシーをよく確認・遵守して、不適切コンテンツを含まないように十分注意することが重要です。

以下、世界的な各プラットフォームにおける広告ポリシーの概要を御紹介します。

 

(4)各プラットフォームの広告審査規定

(ア)Googleの広告審査規定

情報収集の際に世界各地で利用されている検索エンジンであるGoogleは、誠実さ、公正さ、多様性や他者の尊重を大切にしているプラットフォームです。

そのため、Google広告ポリシーは、例えば以下のようなコンテンツの広告掲載を許可しないと規定しています。

 

【Google広告ポリシーにおいて許可されない例】

①商品、サービス、ビジネスにおいて誤解を招く情報を表示している広告

②不適切なコンテンツを含む広告

・危険または中傷的なコンテンツ

・性的描写が露骨なコンテンツ

・児童への性的虐待の画像

・ファミリー コンテンツに含まれる成人向けのテーマ

・衝撃的なコンテンツ

・デリケートな事象

・動物への残虐行為

・不正入手された政治的資料

③著作権で保護されたコンテンツを不正に使用する広告

 

(イ)YouTubeの広告審査規定

世界最大の動画共有プラットホームであるYouTubeは、Google社が運営しているので、Google広告ポリシーの適用を受けます。

したがって、YouTubeの広告動画も、上記Google広告ポリシーを遵守する必要があります。

さらに、YouTube固有の広告ポリシーも遵守する必要があります。

たとえば、YouTubeサイトの一部を真似た広告は許されず、

・広告を YouTube のトップページに似せたり、似せようと試みること

・広告において、YouTube が配信元であるかのように見えるメッセージを配信したり、配信しているように見せかけたりすること

などが禁じられています。

 

 

(ウ)Facebook等の広告審査規定

インターネット上で社会的な繋がりを作っていく世界的なSNSであるFacebook、Instagram、Messengerなどは、Meta社が運営しています。

 

ⅰ.Metaコミュニティ規定

顧客がFacebookフィードをチェックしたり、Instagramリールを見たり、Messengerの受信トレイを確認したりするときに表示されるMeta広告は、Metaの各種テクノロジーでの禁止事項を示すコミュニティ規定に違反してはならないと規定されています。

 

【Metaコミュニティ規定において認められないコンテンツの例】

①児童に対する性的搾取、虐待、児童のヌードなど子どもを危険にさらすコンテンツ

②危害を加えるための計画および犯罪を助長するコンテンツ

③危険な団体及び人物を称賛・支援するコンテンツ

④人種、民族、肌の色、国籍、宗教、性別、性的指向、性同一性、家族構成、障害、医学的状態、遺伝子状態などに基づく差別をしたり、そのような差別を助長するコンテンツ

⑤人種、民族、国籍、障がい、宗教、社会階級、性的指向、性別、ジェンダーアイデンティティ、重度の病気など、保護特性と呼ばれるものを理由に人々を攻撃するコンテンツ

⑥人的搾取(人身売買を含む)を行う、または助長するコンテンツ

⑦現地の法律に違反するコンテンツ、商品またはサービス

⑧サードパーティファクトチェッカーによって虚偽であると証明されたコンテンツ

⑨ワクチン接種を思いとどませたり、ワクチンに対する異論を擁護するコンテンツ

⑩人をだましたり、誤解させたりする可能性のあるコンテンツ

⑪特定済みの虚偽または誤解を招く手法で、金銭や個人情報をだまし取ろうとする意図を含んだ、製品、サービス、スキーム、クーポンの宣伝

⑫商業目的で災害に関するコンテンツ、または賛否の分かれるイベントを含めるコンテンツ

 

【Metaコミュニティ規定における不適切なコンテンツ(ネガティブな体験につながる可能性のあるコンテンツ)の例】

①成人のヌードと性的行為、成人の性的搾取、成人の性的行為の勧誘および性的に露骨な言葉

②公人および一般個人を標的にして屈辱を与えたり評判を傷つけたりすることを意図した言葉

③不適切な言葉

④プライバシーの侵害および個人的特性を断定又は暗示するコンテンツ

⑤衝撃的、扇情的、または過度に暴力的なコンテンツ

⑥自殺、自傷行為、または摂食障害を助長するコンテンツ

⑦第三者またはMetaの知的財産権を侵害するか、それを妨害するコンテンツ

⑧社会問題、選挙または政治に関する見解を宣伝するコンテンツ

 

ⅱ.Meta広告ポリシー

加えて、Meta広告ポリシーの規制を受けます。

不適切な表現に関するMeta広告ポリシーにおいて、以下のような不適切な表現を含む広告は掲載できないと規定されています。

 

【Meta広告ポリシーにおける不適切な表現の例】

①不適切な言い回しや卑猥な言葉

記号や絵文字を使用することによって、不明瞭または曖昧になっている、もしくはスペルが間違っている場合も含みます。

②不適切なジェスチャー

写真編集や加工によって不適切な表現を伝えるものを含みます。

 

(エ)Xの広告審査規定

情報を短時間で拡散できる世界的な短文SNSであるX(旧Twitter)でも、不適切なコンテンツを含む広告を全世界で禁止しています。

X上でのすべてのコンテンツはXルールを遵守する必要があり、さらに広告コンテンツには別途制限があります。

以下のような広告は、広告として不適切とみなされるカテゴリーのコンテンツとされています。

 

【Xでの広告における不適切なコンテンツの例】

①攻撃的なコンテンツ

個人または集団を侮辱または攻撃するコンテンツ

例:

・刺激的または挑発的なコンテンツや、怒りまたは暴力を煽動するコンテンツ

・不当な利益を得ることを目的としたコンテンツ

・個人または集団を攻撃、罵倒、侮辱、脅迫、または恫喝するコンテンツ

②不適切なコンテンツ

一般のオーディエンスにとって不適切なコンテンツ

例:

・暴力を助長するコンテンツ

・低俗なコンテンツや冒涜的なコンテンツ

・不快なコンテンツ

・危険なコンテンツや、負傷または危害を引き起こしかねないコンテンツ

③ダイエットに関する有害なコンテンツ

心身の健康やボディイメージに対して影響を及ぼすダイエット関連コンテンツ

例:

・ボディシェイミング(人の見た目を馬鹿にしたり批判したり意見を言ったりして相手を傷つける行為)と合理的に考えられるコンテンツ

・不健康または安全でない摂食行動や摂食障害を奨励、美化または助長するコンテンツ

④センシティブな出来事

センシティブな出来事やトピック(重大な社会的または政治的影響を及ぼす自然/産業災害や暴力的な攻撃など)を収益化したり悪用する広告

例:

・センシティブな出来事について触れながら、ハッシュタグの盗用、フォロワーに対する勧誘、商品やサービスの販売、その他不適切なコンテンツをプロモーションするコンテンツ。

 

 

3.日本企業における広告審査

(1)JIAA

インターネット広告ビジネス活動の環境整備、改善、向上をもって、広告主と消費者からの社会的信頼を得て健全に発展し、その市場を拡大していくことを目的として、2010年、一般社団法人日本インタラクティブ広告協会JIAA(Japan Interactive Advertising Association)がつくられました。

2025年1月時点で、広告会社、DSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)事業者、SSP(サプライ・サイド・プラットフォーム)事業者、アドネットワーク事業者、媒体事業者などインターネット広告の販売に関わる300社以上がJIAA会員なので、日本国内において社会的影響力のある団体となっております。

 

(2)インターネット広告掲載基準ガイドライン

JIAAは「インターネット広告掲載基準ガイドライン」を定めています(2000年制定・2015年改定)。

 このガイドラインは、媒体社が運営するウェブサイト、アプリケーション等に掲載されるバナー広告をはじめ、テキスト広告、動画広告、媒体社が発行する電子メールに挿入されるメール広告など、インターネットを通じて広告主から消費者等に向けて発信される多種多様な形態のインターネット広告において不適切コンテンツを排除する旨が規定されています。

ガイドラインは、JIAA会員各社がインターネット広告を広告媒体に掲載するか否かの審査基準を策定する際に参考にする業界標準指針となっています。

したがって、日本企業における広告掲載基準は、このガイドラインに沿ったものが多いです。

もっとも、各社が独自に定める広告掲載基準が優先されるので、掲載を希望する媒体社等の最新の広告掲載基準を確認することが必要です。

 

(3)具体例

ガイドラインは、掲載すべきではないとする不適切コンテンツを含む広告して、以下のようなものを規定しています。

①違法な表示を用いた広告、違法な手段による広告、違法な商品・サービスの広告

②反社会的な広告

・反社会的勢力によるもの

・犯罪を肯定したり、美化したりするもの

・性に関する表現が露骨なもの

・醜悪、残虐な表現で不快感を与えるもの

・消費者等を騙したり、脅したり、欺もうしたり、惑わせたり、不安にさせたりするもの

・他者を一方的に攻撃したり、差別したり、嘲笑するようなもの

③第三者の権利(名誉権、プライバシー権、著作権、商標権、著作権など)を侵害する広告

 

 

4.「違法な表示」を用いた広告とは

上記①違法な表示を用いた広告の「違法な表示」とは、景品表示法で禁止されている優良誤認、有利誤認などのことです。

優良誤認や有利誤認など不当な表示に対する規制の詳細は、HPの別記事

でわかりやすく解説しておりますので、そちらをご覧ください。

 

5.広告審査を通過するための対応策

(1)広告ポリシーへの対応

以上述べてきたように、他社の広告媒体にインターネット広告の掲載するためには、その会社が定める最新の広告ポリシーなど守るべき規律を調査・確認し、不適切コンテンツを含まない広告に仕上げる対応策によって、広告審査を通過する必要があります。

 

(2)商品・サービスごとの規律への対応

また、医療・美容・健康食品など、商品・サービスの具体的内容によっては、業界のガイドラインや薬機法などの法律によって個別に広告表現の規律が設けられているものもあります。

その場合、これらの規律にも適切に対応する必要があります。

 

(3)弁護士に御相談ください

森大輔法律事務所の弁護士は、景品表示法、薬機法などの法規範に精通し、企業法務に関わる法規範の調査・確認を日常業務としております。

 

・インターネット広告を作成する時に守るべき規律が何か知りたい方

・作成した広告が不適切コンテンツを含んでいないか確認してほしい方

・広告審査落ちした原因(ポリシー違反箇所)を特定して的確に修正したい方

上記に当てはまる方は、森大輔法律事務所へお気軽にご相談ください。

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森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

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