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景品類の認定と取引付随性

1.【取引付随性】

 取引付随性が認められるかどうかは、その取引や提供の形態など個別・具体的事情から判断されるものですが、基本的には、下記の①②の場合には、取引付随性が認められると考えられています(『景品類等の指定の告示の運用基準について』4参照)。

①取引を条件として他の経済上の利益を提供する場合

②取引を条件としない場合であっても、経済上の利益の提供が取引の相手方を主たる対象として行われる場合

 

①取引を条件として他の経済上の利益を提供する場合について

 たとえば、「醤油ボトル5本ご購入の方はお酢1本プレゼント」というキャンペーンは、醤油ボトル5本の購入という取引を条件として、お酢1本をプレゼントという他の経済上の利益を提供するため、①に当たります。

 ※「商品Aの購入者に懸賞により商品Bをプレゼント」は、取引対象商品と、提供する経済上の利益となる商品が異なるため、①に当たります。しかしながら、「コーヒー5回飲んだらコーヒー1杯無料券プレゼント」は、取引対象商品と、提供する経済上の利益となる商品が同じコーヒーであるため、①ではなく値引きに当たるため、景品規制の対象とはなりません。

 

②取引を条件としない場合であっても、経済上の利益の提供が取引の相手方を主たる対象として行われる場合について

下記ア~エの場合は、②に当たります(上記『運用基準』4参照)。

 

 ア.ペットボトルのラベルに「クイズ正解者の中から抽選で賞品をプレゼント」とキャンペーン内容が記載している場合など、商品の容器包装に経済上の利益を提供する企画の内容を告知している場合

 

 イ.ペットボトルのキャップに貼ってあるシールをめくるとヒントが書いてある場合など、商品または役務を購入することにより、経済上の利益の提供を受けることが可能または 容易になる場合

 

 ウ.来店してくれた顧客にプレゼントを提供する場合など、小売業者またはサービス業者が、自己の店舗や自己と協賛・後援等の協力関係にある店舗への入店者に対し経済上の利益を提供する場合

 

 エ.(自己が資本の半分以上を拠出している小売業者またはサービス業者の店舗への入店者に対し提供する場合、フランチャイザーがフランチャイジー店舗への入店者に対し提供する場合、その小売業者またはサービス業者の店舗への入店者の大部分が、自己の供給する商品やサービスの取引の相手方であると認められる場合など、)自己と特定の関連がある小売業者又はサービス業者の店舗への入店者に 対し提供する場合

 

 他方、取引付随性が認められない場合として、

正常な商慣習に照らして取引の本来の内容をなすと認められる経済上の利益を提供する場合

ある取引において二つ以上の商品又は役務が提供される場合であっても、次のアから ウまでのいずれかに該当するとき

ア.商品または役務を二つ以上組み合わせて販売していることが明らかな場合

イ.商品または役務を二つ以上組み合わせて販売することが商慣習となっている場合

ウ.商品または役務が二つ以上組み合わされたことにより独自の機能、効用を持つ一つの商品または役務になっている場合

③その他の場合

などが挙げられます(上記『運用基準』4参照)。

①正常な商慣習に照らして取引の本来の内容をなすと認められる経済上の利益を提供する場合について

 宝くじの当選金やパチンコの景品が例として挙げられます。

 宝くじの当選金は、本来的に、宝くじを購入して当選した場合にもらえるものであり、人々はこの当選金目当てに宝くじを購入します。当選金をもらえなければ、宝くじそのものを購入する意味はありません。そのため、宝くじの当選金は、「取引の本来の内容をなす」といえます。

 パチンコの景品も同様に、本来的に、パチンコで当たりが出たらもらえるものであり、景品をもらえなければパチンコそのものを行う意味はないと言っても過言ではありません。そのため、パチンコの景品は「取引の本来の内容をなす」といえます。

 また、喫茶店のコーヒーに添えられる砂糖やクリームも、一般的には、コーヒーの提供に当然に伴うものですから、「取引の本来の内容をなす」ものといえ、取引付随性は認められません。

②ある取引において二つ以上の商品又は役務が提供される場合であっても、次のアから ウまでのいずれかに該当するときについて

 アは、「背広と靴下をセットで8万5000円」「ゴルフバッグとクラブ一式のセットで10万円」「醤油とお酢の詰め合わせ」というように、単体で販売している2つ以上の商品を組み合わせたものが一体として取引の内容となっている場合をいいます。

 ただし、「背広を買えば靴下をプレゼント」や「背広を買えば靴下が無料で付いてくる」という表現を用いて、取引の相手方に「景品類」であると認識されるような方法で告知した場合、この靴下の提供は、背広の購入という取引に付随する提供に当たるため、景品規制の対象となり得ます

 また、背広の購入者にくじ引きで靴下を提供するように、懸賞を用いて提供する場合にも、この靴下の提供は景品規制の対象となり得ますので注意が必要です

 イについては、乗用車販売の際にスペアタイヤを併せて販売することが例として挙げられます。

 ウについては、メイク落とし・化粧水・乳液が組み合わさった旅行用の基礎化粧品セットや、旅行業者があらかじめコースを設定するパッケージツアーが例として挙げられます。

③その他の場合について

 英会話教室やヨガ教室などで「新入生の紹介者に謝礼をプレゼント!」といった紹介者キャンペーンをよく見かけますが、自己の供給する商品または役務の購入者を紹介してくれた人に対する謝礼は、「取引に付随」する提供に当たらず、景品類には該当しないと解されています(上記『運用基準』4参照)。

 ただし、謝礼を受け取る紹介者を、現に英会話教室やヨガ教室に通っている者に限定する場合、この謝礼の提供は、「取引に付随」する提供に当たるため、景品規制の対象となります

 

2.オープン懸賞

 取引付随性のない懸賞は、「オープン懸賞」と呼ばれています。

 かつて、オープン懸賞についても、独占禁止法に基づく公正取引委員会の指定による規制が及んでいましたが、平成18年に規制が撤廃されました。そのため、オープン懸賞における景品の価額は、景品表示法上の規制の対象とはなりません。

 オープン懸賞の例としては、街中の広告において告知されている懸賞や、ウェブサイト上から無料登録で応募できる懸賞などが挙げられます。

 

3.インターネット上で行われる懸賞企画

 ウェブサイト上から無料登録で応募できる懸賞の場合、そのウェブサイトは小売業者の店舗のような役割を果たすので、上記の【取引付随性が認められる場合】の②ウに記載した「…自己の店舗…への入店者に対し経済上の利益を提供する場合」に当たり、取引付随性が認められるようにも思えます。

 しかしながら、ウェブサイトの閲覧者である一般消費者は、ウェブサイト間を自由に移動することできるため、ウェブサイトの閲覧は、実際の店舗への入店と同一視されないものと解されています(『インターネット上で行われる懸賞企画の取扱いについて』参照)。

 そのため、ウェブサイト上から無料登録で応募できる懸賞は、「…自己の店舗…への入店者に対し経済上の利益を提供する場合」に当たらず、取引付随性が認められないため、オープン懸賞として取り扱われることになります。

 

 ※ウェブサイト上で、商品の購入を条件に懸賞に応募できる場合は、取引付随性のある懸賞に当たり、景品規制が及びます。

 ※また、ウェブサイト上で、商品の購入によって懸賞の応募ページに進むことが可能になる場合や、商品の購入によってクイズの正解やヒントが分かり懸賞の応募が容易・可能になる場合は、取引付随性のある懸賞に当たり、景品規制が及びます。

 キャンペーンが景品表示法上の景品規制が及ぶのか、及ばせないためにどのような工夫ができるのか等について、企画段階からキャンペーン実施まで、弁護士により助言・監督いたしますので、是非、お問い合わせください。

 

4.値引きついて

 正常な商慣習に照らして値引きアフターサービス附属物・附属サービスは、その性質上、取引の本来の内容をなすべきものであるから、「景品類」に当たらないとされています(同項ただし書き参照)。

 そして、値引きに当たるかどうかは、取引の内容、その経済上の利益の内容や提供の方法などを勘案し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害していないか、事業者間の公正な競争を確保できているかという観点から判断されます。

 これを前提に、下記①~③のような行為は、取引通念上妥当と認められる基準に従って行われるものであれば「値引き」に該当し、その結果、「景品類」には当たらないと解されています。

 

①取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額すること(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む)

 たとえば、

・醤油ボトル5本以上お買い上げの場合は500円引き

・5000円以上お買い上げで次回1000円引き

・ジャケット購入者は革靴20%引き

・10回来店して購入してくれた方は11回目来店の際1000円割引

などは、これに当たります。

 

②取引の相手方に対し、支払った代金について割戻し(キャッシュバック)をすること(複数回の取引を条件として割り戻す場合を含む)

 たとえば、

・レシート合計金額の5%キャッシュバック

・商品シール10枚ためて送付した方は1000円キャッシュバック

などは、これに当たります。

 

③ある商品または役務の購入者に対し、同じ対価で、それと同一の商品または役務を付加して提供すること(実質的に同一の商品または役務を付加して提供する場合および複数回の取引を条件として付加して提供する場合を含む)

 たとえば、

コーヒー5回飲んだらコーヒー無料券を1枚サービス

クリーニングスタンプ10個集めた人にワイシャツ1枚分クリーニングサービス

醤油ボトル5本買ったら醤油ボトルもう1本プレゼント

などは、これに当たります。

 ただし、

コーヒー5回飲んだらケーキ1個サービス

醤油ボトル5本買ったらお砂糖1袋プレゼント

などは、実質的に同一の商品の付加ではないので、③に当たりません。

 

5.アフターサービス

 アフターサービスに当たるかどうかは、商品また役務の特徴、アフターサービスの内容、必要性、取引の約定の内容などを勘案し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害していないかという観点から判断されます。

 アフターサービスには多様なものがありますが、消費者が期待する「取引の本来の内容」であれば、「景品類」に当たらないと考えて良いでしょう。たとえば、

 ・洗濯機などの家電を買った後の無料修理サービス

 ・クーラーを買った後の定期点検サービス

などは、消費者が期待する取引の本内の内容といえるため、アフターサービスに当たります。

 

6.附属物・附属サービス

 附属物・附属サービスに当たるかどうかは、その商品または役務の特徴、その付属物・附属サービスの内容、必要性、取引の約定の内容などを勘案し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害していないかという観点から判断されます。

 附属物・附属サービスの例としては、

・お弁当に付いてくる割り箸

・カップアイスに付いてくるスプーン

・お皿を買ったときにお皿が割れないように保護する緩衝材

などがあります。

 景品表示法の制限を受ける「景品類」なのか、制限を受けない「値引き」「アフターサービス」「附属物・附属サービス」なのかの判断にお困りの方は、是非、お問い合わせください。

 

 

景表法の相談方法について

 森大輔法律事務所は景表法のみならず薬機法等の表示に関する法的問題のサポートに力を入れております。まずは、お電話からの面談の予約、または森大輔法律事務所のお問い合わせフォームhttps://moridaisukelawoffices.com/contact)よりご相談をご予約ください。ご相談の日程を調整させて頂き、面談を実施させて頂いております。

景表法の相談に関する費用

 初回法律相談に限って1時間2.2万円(税込)の費用で対応させて頂きます。

 2回目以降の法律相談を継続して希望される場合は、原則として法律問題サポート契約(顧問契約)をお勧めさせて頂いておりますが、相談だけの場合は1時間あたり3.3万円(税込)の費用がかかります。

法律問題サポート契約(顧問契約)

・原則として月額6.6万円(税込)

 ①既に顧問弁護士はいるが、景表法及びその関連法律によって規制されている表示の法律相談だけを依頼したい場合の金額となります。

 ②一月あたり3項目に関する相談まで対応が可能です。5項目を超える場合でも、翌月分や前月の残りの相談数を充当することが可能です。

 ③回答はメールやチャットでの回答となります。意見書が必要な場合は別途費用がかかるケースがあります。その場合は事前にお見積りをお出しします。

 ④景表法以外の法律相談も併せて希望される場合は、別途お見積りをださせて頂きます。

スポット契約について

・チェック1項目あたり 11万円(税込)

 ①景表法違反の可能性に関する意見及びその根拠、修正表示案の提案をレポート形式で報告させて頂きます。

 ②チェック項目が何項目にわたるかについては、事前に対象広告をチェックさせて頂きお見積りを出させて頂きます。

 ③ご依頼頂いた広告に関する質問や、修正案のチェックなども上記金額に含まれます。

 

景表法についてお悩みの方は、是非お気軽にお問合せ下さい。

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森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

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