二重価格表示について

二重価格表示について

(1)二重価格表示とは、事業者が自己の販売価格に当該販売価格よりも高い他の価格(比較対照価格)を併記して表示するものいいます(価格表示ガイドライン)。

 この二重価格表示は、価格の安さを強調するために最も多用されていると思われる手法であると言われおり、この二重価格表示の「内容が適正」といえるためには、販売される商品と同一の商品の価格が比較対照価格に用いられること、比較対象価格について実際と異なる表示やあいまいな表示が行われないことなどが重要です(大元慎二「景品表示法」94頁)。

 (2)二重価格表示をする際、比較対照価格については、当然事実に基づいて表示する必要があります。架空の市価や根拠の希望小売価格等を比較対照価格に用いる場合には、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがあるので注意が必要です。

 また、過去の販売価格や競争事業者の販売価格等でそれ自体は根拠のある価格を比較対照価格に用いる場合でも、当該価格がどのような内容の価格であるかを正確に表示する必要があり、比較対照価格に用いる価格について曖昧な表示を行う場合には、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがあります。

 比較対照価格には、①過去の販売価格、②将来の販売価格、③希望小売価格、④競争事業者の販売価格等多様なものが用いられています(丸橋透・松嶋隆弘編著「景品・表示の法実務」100頁)。

過去の販売価格を比較対象価格とするケース
①事例

 X社は、某海外ブランドのスニーカー(A商品)をネット販売している会社である。X社は、A商品を1年以上前から取り扱う様になったが発売当初は1万円で販売していた。しかし、販売開始から1年後には値下げして8000円で販売開始していた。それから4カ月後にA商品を1カ月の期間限定で6000円で販売するセールを行うこととした。「期間限定 販売価格1万円のA商品が6000円」という広告を作成した。景品表示法上問題ないか。

②考え方の基準(価格表示ガイドラインの基準)

 a比較対象価格での販売期間が通算2週間以上、かつ

 bセールの各時点において、当該各時点からさかのぼる8週間(販売期間が8週間未満の場合は全販売期間)において、比較対照価格で販売されていた期間が当該商品の販売期間の過半数を占めており(以下では「8週間ルール」と便宜上呼びます。)、かつ、

 ※この要件については、一見すると、開始時点において『さかのぼる8週間の過半』をみたせばよいかのようにみえますが、実はセール終了時点までの各時点で8週間の要件を満たす必要があります。そのため、「必然的に、セールは最長4週間でなければならないことになる。5週目からは、その時点で8週間からさかのぼると必然的にセール開始後の期間が4週間を超えてしまい、セール開始前の価格での販売が8週間の半分を超えることがなくなってしまうからである。」(植村幸也「景品表示法対応ガイドブック」62頁、大元慎二「景品表示法」104頁参照)とされています。

 c比較対照価格で販売された日からセール開始までに2週間経過していないこと

 ※この要件はセール開始時でみたしていればよいと考えられています。そのため、「たとえばセール開始時点ですでに13日経過しているからといってセール開始後1日でセールをやめなければならなくなるわけではない。(もしセールの各時点で2週間経過していないことを要するとすると、セールは最長2週間しかおこなえなくなってしまう。)」(植村幸也「景品表示法対応ガイドブック」63頁)とされています。

③事例の検討

 まず、「a」の比較対象価格での販売期間が通算2週間以上という要件は問題なく満たすこととなります。

 次に、「b」の要件の8週間ルールについては、セール開始時が販売開始から1年4か月後ということになりますので、まずはそこから遡って8週間にわたって1万円での販売期間があるかどうかが問題となります。本件では、この時点から遡ること4カ月は8000円で販売していたので、この要件を満たしません。

 また「c」については、セール開始までの2週間について1万円で販売した実績は殆どありませんので、この要件も満たしません。

 以上から、本事例では、1万円を比較対照価格とすることはできません。

将来の販売価格を比較対照価格とするケース

 セール期間後に販売価格を引き上げる予定がないにもかかわらず、将来の販売価格を比較対照価格とすることは景品表示法上の問題となる。

(事案)

 X社は、新A商品を5000円で販売することとしていたが、新商品キャンペーンとして「今月限り5000円のところを4000円!」として売り出していた。X社は、このキャンペーンが予想よりも好評であったため、この4000円での販売のキャンペーンを1か月延長することとした。このキャンペーンの延長は景表法上問題があるか。

 本件では、消費者がこのキャンペーンを見た時にどう思うかが重要となります。一般消費者がこのようなキャンペーンを目にした際、「今買えばお得だから買っておこう。」と思うのが通常だろうと思います。このキャンペーンが継続して1か月を超えて実施されるのであれば買わなかったと考えることは容易に想像できます。そうだとすれば、一般消費者を誤認させる表示として不当表示(有利誤認)にあたるものと言わざるを得ません。

 この場合は、キャンペーンを一旦終了させ予定とおりの価格で販売する必要があります。キャンペーンが好調であれば、また再度、キャンペーンを実施すればよいのです。但し、再度のキャンペーンを実施する際は、「過去の販売価格を比較対象価格とするケース」の要件に抵触しないように注意が必要です。

 

希望小売価格を比較対照価格とするケース

 価格表示ガイドラン第4・3(1)によれば、希望小売価格を比較対照価格とする場合に、製造業者等により設定され、あらかじめ公表されているとはいえない価格を、希望小売価格と称して比較対照価格に用いるときには、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがあるとされています。

(事案)

 X社は、A商品を販売するにあたり、メーカーとの商談の際にメーカーから提示された金額を希望小売価格として比較対照価格とすることができるか。

 価格表示ガイドライン第4、3(1)アでは、以下の要件を満たすことが必要だとされています。

 ①製造業者、卸売業者、輸入総代理店等、小売業者以外の者により、小売業者の価格設定の参考となるものとして設定されている。

 ②あらかじめ、新聞広告、カタログ、商品本体への印字等により公表されている。

 →「広く一般消費者に示されていることが必要であって、たまたま一部の消費者の目に触れることがあるだけでは不十分」(大元慎二「景品表示法」108頁)。

 以上からすれば、事案のように、単にメーカーとの商談の際に提示されただけの金額は、「公表」されたものではないことが明らかですから、これを比較対照価格とすることはできません。

競争事業者の販売価格を比較対照価格とするケース

 ・「このような二重価格表示をみた一般消費者は、通常、同一商品について代替的に購入し得る事業者の最近時の販売価格との比較が行われていると認識するものと考えられるため、そのようにはいえない価格を比較対照価格に用いると、不当表示に該当するおそれがあります(価格表示ガイドライン第4、4(1))。

 ここで、『同一の商品について代替的に購入し得る事業者』とは、どのような事業者を指すでしょうか。

この点については以下のように説明されております。

「自己の顧客である一般消費者が日常的に行う消費活動の範囲内に所在する事業者のことをいう。別の言い方をすれば、自己が販売している地域内において競争関係にある事業者のことであり、その範囲の広狭は、事業者の規模・事業形態(例えば、インターネットの通販販売であれば、競争関係にある事業者は全国に広がり得る。)、対象となる商品の種類、当該地域の交通事情等により差があり、一律の基準を確定することは困難であるが、少なくとも自己が通常競争関係にあると認識している事業者は含まれることになろう。」(大元慎二「景品表示法」114頁)。

 ・さらに、「市価」については以下のように注意が必要だとされています。

「市価は、希望小売価格や事業者の過去の販売価格と比較して客観性が損なわれやすく、これを比較対照価格とした表示は、不当表示となるリスクが高いため、正確な調査を行い客観性が担保されるよう、十分な配慮が必要である。」(大元慎二「景品表示法」114頁)。

他の顧客向けの販売価格を比較対照価格とするケース

 例えば、非会員価格を1万円、会員価格は8000円などと表示する場合であす。このような場合、非会員価格で販売されることはほとんどないというケースにおいては、不当表示となるおそれがあるので注意が必要です。

同一ではない商品の価格を比較対照価格に用いるケース

 例えば、新品の場合通常価格は10万円であるが、中古の物については5万円ということがあります。このような場合に、「通常価格10万円のところを5万円」と表示することは不当表示に該当するおそれがありますので注意が必要です。


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