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薬機法(旧薬事法)について弁護士が解説

はじめに

 薬機法とは、正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下「薬機法」とする。)と言います。この薬機法は、薬事法という名称の法律が平成26年11月の改正で名称が変更され、施行された法律です。近年、薬機法の罰則規定が強化されたことから、医薬品や化粧品を販売する事業者は薬機法を気を付ける必要があります。

 そこで、本記事では、①薬機法上の医薬品等に該当する物、②広告規制の内容についてご紹介したいと思います。

 ※2021年8月に改正される薬機法については以下のバナーからご確認いただけます。

薬機法(旧薬事法)とは

(1)規制対象

 この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の製造販売業者に対する規制や、医薬品等の製造販売や表示等の取扱い等について規制しています

 その他にも、本記事の中心的な内容から逸れますが、実は危険ドラッグの所持や使用については薬機法が適用され、薬機法違反として取り締まりの対象となります。

(2)目的

 この法律の目的は、主に以下の3点です。

・保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止

・指定薬物の規制

・医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進

(3)「医薬品等」の定義

 薬機法の適用を受けるか否かは、基本的に対象の物が「医薬品等」に当たるか否かで判断されます。「医薬品等」の定義は、法第2条各項に規定されています。

<医薬品(第2条1項)>

①日本薬局方に収められている物

②人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)

③人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)

 

Q. 医薬品の該当性はどのように判断される?

 上記定義の①のとおり、日本薬局方に収められている物は医薬品にあたります。

 その他は「物の成分、形状、名称、その物に表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、その他際の演述・宣伝などを総合して、その物が通常人の理解において「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている」と認められる物をいい、これが客観的に薬理作用を有するものであるか否かを問わない」とされています。(最三小判昭57年9月28日判タ480号62頁)

 また、治療や予防が目的でなくても、身体等に影響を及ぼすことが目的とされている物も医薬品となります。

Q. 薬理作用が全くない物であっても医薬品に該当することはある?

 薬理作用が全くない物であっても、医薬品的な効能効果を標榜したものを医薬品に該当すると判断される可能性があります。

 たとえば、「つかれず」及び「つかれず粒」という製品は、たとえ主成分が食品として通用している酢と同一であっても、医薬品にあたるとした裁判例(最三小判昭和57年9月28日刑集36巻8号787頁)があります。これは、「つかれず」「つかれず粒」といった名称、白色粉末又は錠剤といった形状が一般の医薬品と類似していること、高血圧、糖尿病等に効く旨の広告宣伝をしていたことを主な理由としています。

Q. 用法用量はどのように考慮される?

 原則として、ある物の仕様方法として服用時期、服用間隔、服用量などの記載がある場合、医薬品的な用法用量とみなされます。

 ただし、過剰摂取や連用による健康被害が起きる危険性、その他合理的な理由があるものについては、用法用量当の目安を示す必要がある場合がありますので、このような場合には、例外的に医薬品的用法用量に該当しないケースがございます(「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日薬発476号厚生省薬務局長通知)別紙「医薬品の範囲に関する基準」参照)。

  1. Q. 医薬品に該当するとされた場合はどうなる?

 未承認医薬品の広告(薬機法68条)に該当し、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又はこれを併科されます(薬機法85条5号)。

 また、無許可販売(薬機法24条1項)にも該当し、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又は併科されます(薬機法84条9号)。なお、法人にも罰金刑が科されます(薬機法90条2号)。

<医薬部外品(第2条2項)>

次に掲げる物であって人体に対する作用が緩和なものをいう。

 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(これらの使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの

イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止

ロ あせも、ただれ等の防止

ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛

② 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの

③ 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(前二号に掲げる物を除く。)のうち、厚生労働大臣が指定するもの

 

<化粧品(第2条3項)>

 人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第1項第(2)号又は第(3)号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。

 

<医療機器(第2条4項)>

 人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。

(4)具体例

ア 医薬品

   医薬品は、病気の治療や予防に使用されることを目的としたものです。
   例えば、病院で医者から処方される処方箋や薬局で販売されている第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品な
   どです。

イ 医薬部外品

   通常予想される使用方法と誤った使用を行ったとしても人体に対する作用が緩和な物をいいます。
   例えば、口臭スプレーや殺虫剤、薬用化粧品などです。

ウ 化粧品

  ①人の身体を清潔にするもの
  (例)せっけん、歯磨き粉、シャンプーなど

  ②人の身体を美化し魅力を増し容貌を変えるもの
  (例)ファンデーション、香水、メーキャップ製品

  ③人の皮膚若しくは毛髪を健やかに保つもの  
  (例)化粧水、乳液、クリームなど

「医薬品等」のいずれの定義にも当たらない場合は、雑貨となるため薬機法の適用がありません。

広告規制

 ※景品表示法に関してはこちらをご参照ください。

 事業者が製造販売する商品等が上記1で説明した「医薬品」や「化粧品」に該当する場合、薬機法上、多くの規制があります。
 その一つとなるのが、「広告規制」です。
 この規制に違反した場合、多額の課徴金が課される可能性があるため、必ず注意しておく必要があります。

虚偽・誇大広告等の禁止

ア 条文(薬機法66条1項)

何人も(※1)
  ②医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の
  ③名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、
  ④明示的であると暗示的であるとを問わず、
  ⑤虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布(※2)してはならない。

  (※1)「何人も」とあるように製造業者や販売業者に限らず、個人の方も対象に含まれますのでご注意ください。
  (※2)これらすべて広義の「広告」の態様を示しています(東京地判平成29年3月16日裁判所ウェブサイト)。

   広義の「広告」にあたらない場合は、広告規制の対象外となります。

  Cf.広義の「広告」とは

  ①顧客を誘引する意図が明確であること(誘引性)
  ②特定の商品名が明らかであること(特定性)
  ③一般人が認知できる状態であること(認知可能性)

  →以上の3つを満たす場合、広義の「広告」に該当します。

 たとえば、①患者から個別に特定の医薬品等に関する情報について質問を受けて回答する場合、企業側から購入意欲を喚起させる手段として行われる情報提供ではないため、「誘因性」が認められません。

 また、②疾病啓発についても、特定の医薬品等を明示又は暗示することなく、当該疾病の症状、メカニズム、診断方法等を提供するため、情報が限定的となり、「特定性」を満たしません。

したがって、これらは、上記「広告」に含まれないため、適法に情報提供できることになります。

イ 判断枠組み

 虚偽・誇大広告等に該当するか否かは、
 「厚生労働省の医薬品等適正広告基準」「化粧品等の適正広告ガイドライン」にしたがって判断されます。
 以下、上記基準やガイドラインの内容について紹介します。

  <効果効能の表現について>

  ①「医薬品等」に共通する事項

  ・承認等をうけた効能効果等の範囲

   明示的又は暗示的であるか否かにかかわらず、承認等を受けた効能効果等の範囲を超えてはいけません。

  ・副次的効果の表現の禁止

   効果効能などの二次的、三次的効果等の表現をすることができません。
   例えば「肌が潤うからターンオーバーも正常化」といった表現はNGです。

  ・しばり表現の省略の禁止

   承認された効能効果等に一定の条件(しばりの表現という)が付されている医薬品等の広告を行う場合、そのしば
   りの表現を明確に記載しておかなければなりません。

   例えば「日焼けによるしみ・そばかすを防ぐ」といった効果効能等が承認された場合、「しみ・そばかすを防ぐ」
   として「日焼けによる」というしばりを省略することはできません。
   (その他の原因によるしみ・そばかすを防ぐと誤解されてしまうからです。)

  ・保証する表現の禁止

   効能効果等又は安全性の保証表現は禁止されています。
   例えば「全快する」「安全性は確認済み」など

  ②医薬部外品の効果効能の表現について

  ・効果効能の範囲

  •     医薬部外品を広告宣伝する場合、以下の「医薬部外品の効能・効果の範囲」記載の効果効能の範囲を逸脱しないよ
        うご注意ください。

  「医薬部外品の効能・効果の範囲」(一部)

医薬部外品の種類 使用目的の範囲と原則的な剤型 効能又は効果の範囲
使用目的 主な剤型 効能又は効果
1.口中清涼剤 吐き気その他の不快感の防止を目的とする内用剤である 丸剤、板状の剤型、トロ―チ剤、液剤 口臭、気分不快
2.腋臭防止剤 体臭の防止を目的とする外用剤である 液剤、軟膏剤、エアゾール剤、散剤、チック様のもの わきが(腋臭)、皮膚汗臭、制汗
3.てんか粉類 あせも、ただれ等の防止を目的とする外用剤である 外用散布剤 あせも、おしめ(おむつかぶれ)、ただれ、股ずれ、かみそりまけ

4.育毛剤
 (養毛剤)

脱毛の防止及び育毛を目的とする外用剤である 液剤、エアゾール剤 育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛
5.除毛剤 除毛を目的とする外用剤である 軟膏剤、エアゾール剤 除毛
・・・ ・・・ ・・・ ・・・

     薬用化粧品を広告宣伝する場合、以下の「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」別掲「薬用
    化粧品の効能・効果の範囲」
記載の効果効能の範囲を逸脱しないようご注意ください。

「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」
別掲「薬用化粧品の効能・効果の範囲」
平成29年9月29日薬生監麻発0929第5号厚生労働省医薬
・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知

種類 効能・効果
1.シャンプー ふけ、かゆみを防ぐ。
毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ。
毛髪・頭皮を清浄にする。
毛髪・頭皮をすこやかに保つ。
or
毛髪をしなやかにする
2.リンス ふけ、かゆみを防ぐ。
毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ。
毛髪の水分・脂肪を補い保つ。
裂毛・切毛・枝毛を防ぐ。
毛髪・頭皮をすこやかに保つ。
or
毛髪をしなやかにする。
3.化粧水 肌あれ。あれ性。
あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防ぐ。
油性肌。
かみそりまけを防ぐ。
日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。
日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。
肌をひきしめる。肌を清浄にする。肌を整える。
皮膚をすこやかに保つ。皮膚にうるおいを与える。
4.クリーム、乳液、ハンドクリーム。
  化粧用油
肌荒れ。あれ性。
あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防ぐ。
油性肌。
かみそりまけを防ぐ。
日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。
日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。
肌をひきしめる。肌を清浄にする。肌を整える。
皮膚をすこやかに保つ。皮膚にうるおいを与える。
皮膚を保護する。皮膚の乾燥を防ぐ
5.ひげそり用剤 かみそりまけを防ぐ。
皮膚を保護し、ひげをそりやすくする。
6.日やけ止め剤 日やけ・雪やけによる肌あれを防ぐ。
日やけ・雪やけを防ぐ。
日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。
皮膚を保護する。
7.パック 肌あれ。あれ性。
にきびを防ぐ。
油性肌。
日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。
日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。
肌なめらかにする。
皮膚を清浄にする。
8.薬用石けん(洗顔料を含む) 〈殺菌剤主剤〉(消炎剤主剤をあわせて配合するものを含む)
皮膚の清浄・殺菌・消毒。
体臭・汗臭及びにきびを防ぐ。
〈消炎剤主剤のもの〉
皮膚の清浄、にきび・かみそりまけ及び肌荒れを防ぐ。

  ③化粧品の効果効能の表現について

  ・効果効能の範囲

   化粧品を広告宣伝する場合、以下の「化粧品の効能の範囲の改正について」記載の効果効能の範囲を逸脱しないよ
   うにご注意ください。

「化粧品の効能の範囲の改正について」
(平成23年7月21日薬食発0721第1号厚生労働省医薬食品局通知) 

(1)頭皮、毛髪を清浄にする。 (20)肌のキメを整える。 (39)爪を保護する。
(2)香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。 (21)皮膚をすこやかに保つ。 (40)爪をすこやかに保つ。
(3)頭皮、毛髪をすこやかに保つ。 (22)肌荒れを防ぐ。 (41)爪にうるおいを与える。
(4)毛髪にはり、こしを与える。 (23)肌をひきしめる。 (42)口唇の荒れを防ぐ。
(5)頭皮、毛髪にうるおいを与える。 (24)皮膚にうるおいを与える。 (43)口唇のキメを整える。
(6)頭皮、毛髪のうるおいを保つ。 (25)皮膚の水分、油分を補い保つ。 (44)口唇にうるおいを与える。
(7)毛髪をしなやかにする。 (26)皮膚の柔軟性を保つ。 (45)口唇をすこやかにする。
(8)クシどおりをよくする。 (27)皮膚を保護する。 (46)口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ。
(9)毛髪のつやを保つ (28)皮膚の乾燥を防ぐ。 (47)口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。
(10)毛髪につやを与える。 (29)肌を柔らげる。 (48)口唇を滑らかにする。
(11)フケ、カユミがとれる。 (30)肌にはりを与える。 (49)ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(12)フケ、カユミを抑える。 (31)肌にツヤを与える。 (50)歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(13)毛髪の水分、油分を補い保つ。 (32)肌を滑らかにする。 (51)歯垢を除去する(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(14)裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。 (33)ひげを剃りやすくする。 (52)口中を浄化する(歯みがき類)。
(15)髪型を整え、保持する。 (34)ひげそり後の肌を整える。 (53)口臭を防ぐ(歯みがき類)。
(16)毛髪の帯電を防止する。 (35)あせもを防ぐ(打粉)。 (54)歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(17)(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。 (36)日やけを防ぐ。 (55)歯石の沈着を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(18)(清浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。 (37)日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。 (56)乾燥による小ジワを目立たなくする。
(19)肌を整える。 (38)芳香を与える。  

  ・薬理作用に基づく効能効果の表現の禁止

   Ex.●●(病気等)が改善するといった薬理効果が期待できるような表現は禁止されています。

  ・最大級表現の禁止

   効能効果に関して、最大級の表現をすることが禁止されています。
   Ex.「最高」「最大」「日本一」「強力」など

   ただし、消費者に誤解を与えないように客観的な表現は認められています。
   Ex.「売上げNo.1」など

  ・速効性の表現の禁止

   Ex.「速攻効く」など

 <成分の表現について>

  ①「医薬品等」に共通する事項

  ・配合成分の表現

   「各種・・・」や「数種・・・」等の不正確でかつ誤認させ易い表現は禁止されています。

   また、特定成分を取り出して表現する場合は、それが有効成分であり、承認された効能効果等と関連がある場合に
   限り認められています。

  ・安全性の表現の禁止

   安全性に関して、問題ないとする表現は禁止されています。

   Ex.「天然成分のため副作用がない」など

  ②「医薬品」の成分表現について

  ・一般用医薬品における生薬配合、生薬製剤の表現

   生薬配合:有効成分の一部に生薬が配合されており、しかも承認された効能効果等と関連がある場合に限り、表現
   することが認められています。

   生薬製剤:有効成分のすべてが生薬のみから構成されている場合に限り、表現することが認められています。

  ③「医薬部外品」の成分表現について

  ・浴用剤における生薬配合、生薬製剤の表現

   生薬配合:浴用剤の有効成分の一部に生薬が配合されており、しかも承認された効能効果等と関連がある場合であ
   って、かつ、「医薬部外品」の文字が付記されていれば、表現することが認められています。

   生薬製剤:浴用剤の有効成分のすべてが生薬のみから構成されている場合であって、かつ、「医薬部外品」の文字
   が付記されていれば、表現することが認められています。

  ④「化粧品」の成分表現について

  ・特定成分の表示の禁止

   承認を要しない化粧品において、特定成分を表示することは、原則認められていません。これは、あたかも有効成
   分が含有していると誤解を与える恐れがあるからです。

   ただし、配合目的を併記するなどして誤解しないような表示であれば問題ありません。
   Ex.アルコール配合(清涼剤・溶剤として)など

(2)特殊疾病用の医薬品等の一般向けの広告の制限

ア 条文(薬機法67条)

1 政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品又は再生医療等製品を指定し、その医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品又は再生医療等製品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。

2 厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事・食品衛生審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。

  イ 内容

 がん、肉腫及び白血病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品であり、薬機法施行規則別表第5において指定されたもの(規則228条の10第1項)については、医師等の指導の下に適性に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいことから、医薬関係者以外の一般人を対象として広告することを禁じています。

 

(3)未承認医薬品等の広告の禁止

  ア 条文(薬機法68条)

 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。

  イ 内容

 承認又は認証を受けていない医薬品、医療機器等又は再生医療等製品について、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告を行うことを禁じています。

 

罰則

  ア 虚偽広告や誇大広告等(薬機法66条1項)を行った場合又は未承認医薬品等の広告の禁止(薬機法68条)に違反した場合
→2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されてしまいます(薬機法85条4号又は5号)。

  イ 特殊疾病用の医薬品等の一般向けの広告の制限(薬機法67条)に違反した場合
→1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されてしまいます(薬機法86条17号)。

 

課徴金制度

ア 課徴金額(算定方法、課徴金の減額等)

  課徴金額=違反を行っていた期間中における対象商品の売上額×4.5%
  景表法違反の課徴金は売上額の3%ですが、上記のとおり薬機法違反の場合、売上額の4.5%の課徴金が課されて
  しまいます。

イ 課徴金額の減額

  同一事案に対して景表法の課徴金納付命令が課された場合は、
  売上額の3%(景表法の課徴金算定率)を控除して減額されることになります。

ウ 課徴対象期間

  課徴金対象期間=①+②(法第75条の5の2第2項)

  ①課徴金対象行為(虚偽・誇大広告等)をした期間
  ②「課徴金対象行為をやめた日(※)」から

  (a)6か月を経過する日、又は、(b)「当該医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して誤解を
   生ずるおそれを解消するための措置」をとった日のいずれか早い日まで

  ①②の間に、当該「課徴金対象行為に係る医薬品等の取引をした」場合
  → ①の期間(課徴金対象行為をした期間)に、当該「課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期
   間」を加えた期間(最長3年間)となります。

措置命令

措置命令の内容は、以下のとおりです。

・違反広告の中止
・その違法行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示
・その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置

Ex. ①違反したことを医薬関係者及び消費者に周知徹底すること
  ②再発防止策を講ずること
  ③その違反行為を将来繰り返さないこと等

まとめ

 薬機法上の医薬品等を製造販売し広告をする場合、その表現の内容には細かい規制が多くあります。規制に違反した場合、上記でご紹介したとおり、罰則や課徴金といった重たい責任が発生するため、事業者に限らず個人の方も十分気を付ける必要があるといえます。

 

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森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

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