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生成AIで作成されたコンテンツに関する法的問題について弁護士が解説

《「生成AI」とは》

「生成AI」とは、利用者からの言語や画像などによる指示に基づいて、膨大なデータから自ら学習するディープラーニングによって、様々な形態のオリジナル・コンテンツを創作することができる人工知能技術です。

 

例えば、テキスト(プロンプト)を生成するタイプのものとしてChatGPTやBard、画像を生成するタイプのものとしてStable DiffusionやMidjourney、動画を生成するタイプのものとしてGen-2、音楽を生成するタイプのものとしてSuno AIがあります。

 

生成AIの応用例としては、カスタマーサポート(コールセンター)の自動応答、クリエイターによる創造的なコンテンツ制作、マーケティングのデータ自動分析などがあります。

 

このような生成AIが無償または安価に提供され始めたおかげで、世界中でテキスト、画像、音楽など様々なオリジナル・コンテンツが手軽に生成できるようになり、

①作業効率・生産性が向上する

②人件費が削減できる

③既存の知識・経験の枠を超えた新たなアイデアを創り出せる

④技術を持たない人でも市場に参入できる

等の社会改善が実現しました。

 

《「生成AI」に関する法的問題》

しかし、生成AIが今までにない革新的な技術であるため、生成AIに関して法的な問題が生じております。

1.不正競争防止法に関する法的問題

不正競争防止法は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争を防止および不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とした法律で、「不正競争」に当たる行為をした場合には、民事上の差止め・損害賠償請求や刑事罰の対象となります。

「不正競争」の一つに「営業秘密」の侵害があります。例えば、窃盗、詐欺、強迫など不正の手段により「営業秘密」を取得して使用・開示する行為です。

「営業秘密」として保護されるには、

①秘密として管理され(秘密管理性の要件)

②事業活動に有用な技術上または営業上の情報であって(有用性の要件)

③公然と知られていないもの(非公知性の要件)

という3要件を満たすことが必要です。

 

しかし、例えば従業員が生成AIを使用して議事録を作成する目的で議題に挙がった会社の機密情報をプロンプトに入力しそれがAIシステムにの学習データとして保存・使用されると、①秘密管理性の要件を欠くと判断される可能性があります。

その結果、その会社の機密情報が不正な手段によりライバル会社に取得されても、不正競争防止法の保護を受けられないおそれが生じます。

この問題に対処するためには、生成AIの学習データに自社の「営業秘密」を含めないことが重要です。

 

2.個人情報保護法に関する法的問題

個人情報保護法とは、個人情報を取り扱う事業者(個人情報取扱事業者)が遵守すべき義務等を定める法律です。

個人情報取扱事業者が個人情報を適切に管理・利用することが求められており、生成AIを利用する場合にもこれを遵守する必要があります。

したがって、個人情報取扱事業者が生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合、特定された個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認することが必要です。

もし、個人情報取扱事業者が、あらかじめ本人の同意を得ることなく生成AIサービスに個人データを含むプロンプトを入力し、当該個人データが当該プロンプトに対する応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合、当該個人情報取扱い情報は個人情報保護法の規定に違反する可能性があります。

そのため、このようなプロンプトの入力を行う場合には、利用規約等で、当該生成AIサービスを提供する事業者が、当該個人データを機械学習に利用しないことを十分に確認することが重要です。

なお、この問題に関しては、個人情報保護委員会が、令和5年6月2日、「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」「OpenAIに対する注意喚起の概要」を公表しています。

 

3.著作権に関する法的問題

著作権法は、著作物すなわち思想又は感情を創造的に表現した者であって文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものを保護し文化の発展に寄与することを目的とした法律で、著作権者は、権利を有する著作物を無断使用されない権利(著作権)を有しています。

(1)生成AIが依存する学習データに既存の著作権が含まれている可能性

生成AIは、膨大なデータをもとに学習するディープラーニングによってコンテンツを生成しますが、学習データの中には既存の著作権を持つものが含まれている可能性があります。

生成AIが既存の著作物を学習データとして使用する場合、その著作権を侵害する可能性があります。

(2)生成AIによるオリジナル・コンテンツが誰に帰属するのか不明確

生成AIがコンテンツを生成した場合、その著作権が誰に帰属するのかが不明確です。

現行の著作権法では、著作物には人間の創造性が必要とされていますが、生成AIが独立して生成したオリジナル・コンテンツはこの枠組みに当てはまらないため、誰にその著作権が帰属するのかをめぐりトラブルになる可能性があります。

《著作権に関する問題への対処法~自分の作品に類似したAI生成物への対応》

           ※文化庁著作権課「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」参照

自分がすでに発表した作品(既存の著作物)と類似したAI生成物を発見した場合、権利者はどう対応したら良いでしょうか。

権利者が自らの著作権等の権利を行使するためには、AI生成物が自分の作品(既存の著作物)に対する著作権侵害となるための著作権法上の要件をみたす必要があります。

1.著作権侵害の要件

 あるコンテンツの作成やその利用(インターネットを介した送信等)が既存の著作物の著作権侵害となるか否かは、そのコンテンツを人が作成したかAIにより生成されたかにかかわらず、そのコンテンツに既存の著作物との「類似性」および「依拠性」があるかどうかよって判断されます。

 ・類似性・・・既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができること

 ・依拠性・・・既存の著作物に接して、これを自らの作品の中に用いること

 

2.「類似性」を確認する

 そこで既存の著作物と似たAI生成物を発見した場合、まず、両者を比較・対照して、著作権法上の「類似性」があるといえるか、すなわち既存の著作物と創作的表現が共通しているかを確認します。作風等のアイデアが共通しているにとどまる程度では、「類似性」は認められませんが、コンテンツが既存の著作物と完全一致するデットコピーでなくても、既存の著作物とAI生成物とで創作的表現が一部でも共通していれば「類似性」は認められます。

 

3.「依拠性」を確認する

 次に、AI利用者が権利者の作品(既存の著作物)を認識していたかどうかを検討します。 

 例えば、以下のような場合には「依拠性」の存在が認められると考えられます。

 ・Image to Imageのように、AI利用者が既存の著作物そのものを生成AIに入力していた

 ・AI利用者が既存の著作物のタイトルなど特定の固有名詞を入力していた

 ・AI利用者に既存の著作物へのアクセス可能性(接する機会)があった

 ・AI生成物が既存の著作物と高度に類似している

 

なお、AIの学習データの内訳等については、AI開発者の開示情報から確認できる場合や、訴訟上の手続等によって開示を求めることができる場合がありますので、弊所弁護士にお気軽にご相談ください。

 

4.差止請求・損害賠償請求等

著作権侵害があると認められる場合、権利者としては、侵害行為の差止請求や損害賠償請求等の措置を取ることが考えられます。 

また、著作権侵害に対しては、刑事罰が定められていることから、捜査機関に対して告訴等により侵害者の処罰を求めることも考えられます。

 

著作権侵害に対する権利行使にあたって、権利制限規定が適用されないかの確認、具体的にどのような範囲で措置を求めるかの判断、裁判の前に裁判外での権利行使(「著作権侵害に対する警告文」の送付)をするかの判断等、各事案ごとに実際に行うべき対応が異なりますので、弊所弁護士にお気軽にご相談ください。

 

《監督省庁からの情報》

令和6年10月現在、日本では法規制がまだ追い付いていない状態ですが、令和6年7月31日、文化庁著作権課が「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス 」を公表し、リスク低減方策を明らかにしております。

また、生成AIを使って作成したコンテンツの著作権に関する問題については、令和6年3月15日に文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会が公表した「AIと著作権に対する考え方について」においても検討されています。

なお、生成AIと著作権以外の法的問題については、令和6年4月19日、総務省と経済産業省が共同して公表した「AI事業者ガイドライン(第1.0版) 」、令和6年5月、内閣府・知的財産戦略推進事務局が公表した「AI時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ」において検討がなされています。

 

生成AIで作成されたコンテンツに関する法的問題についての議論や法整備はまだまだ流動的ですが、森大輔法律事務所では、今後もこの問題を引き続き注視・研究を重ねて御依頼に対応して参りますので、お気軽にご相談ください。

 

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森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

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