クーポンを発行して販売促進をしようと考えておられる企業様も多いかと思います。景品表示法(以下「景表法」といいます。)では、クーポンについても、いくつかルールを定めています。
そもそも、クーポンにも様々な種類があり、事実上景品と呼べるものから割引などのサービスを付与するものもあります。
そこで、以下では、クーポンの一例を挙げて、その内容ごとに景表法の規制について解説していきたいと思います。
たとえば、街で買い物をしていると、「×円お買い上げごとに、次回の買い物で〇円の割引き」というキャンペーンをよく見かけます。このような割引券は、景表法上どのような規制を受けるのでしょうか。
景表法では、割引の対象が、自社の店舗のみなのか(自社割引券)、自社の店舗のみならず他社店舗でも割引を受けられるのか(自他共通割引券)、それとも他社店舗のみなのか(他社割引券)によって異なった取扱いをしていますので、それぞれの規制について見ていきたいと思います。
具体例:「×円お買い上げごとに、次回の買い物で〇円の割引券をプレゼント」
この場合、×円分の商品を購入した場合、次回来店の際に、一定金額の減額を受けられるというものになります。すなわち、「×円分の商品を購入」することを条件に「〇円の割引」、すなわち、同店において値引きが受けられることになります。
そもそも、景表法の規制を受ける場合、景表法上の「景品類」に該当することが前提となりますが、「景品類」に、「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」は含まないとされています(定義告示1項ただし書)。
自社店舗で使用できる割引券(自社割引券)は、「正常な商慣習に照らして割引と認められる経済上の利益」に該当するため、景表法の規制を受けません。
具体例:「×円お買い上げごとに、a店(自社)b店(他社)で使用できる〇円分の共通ギフト券をプレゼント」
この場合、キャンペーンを行うa店だけでなく、他社のb店でも使用できる割引券を交付する点にポイントがあります。この場合、a店については、自社割引券と同じように、値引きにあたりますが、他方で、b店の値引きはb店自身が行うものですので、b店の商品を安く購入できることは、a店においては値引きに当たりません。
このように、自社共通割引券は、値引きの側面とともに他社の割引という二つの側面を持つことになります。
では、自他共通割引券については、景表法上どのような規制を受けるのでしょうか。
景表法上は、自社と他社とで同額の割引をするのであれば、総付規制の適用を受けないとしています(総付告示運用基準4項(2)号)。
すなわち、自社と他社とで割引の金額が同じであれば、総付規制(原則として、取引金額の20%を割引額の上限とする)を回避することができることになります。
逆に、自社と他社とで割引金額を変えたり(例えばa店では200円引き、b店では100円引きとする場合)、割引率を同じにした場合(a店、b店ともに20%引きとする場合)には、上記運用基準の要件を満たさないため、総付け規制の適用を受けることになります。
具体例:「×円お買い上げいただいた方全員に、QUOカードをプレゼント」
たとえば、QUOカードを利用できない店舗が上記キャンペーンを行った場合、自社の店舗で使用できない以上、値引きには該当しません。すなわち、a店は、このキャンペーンでは、景品を交付したにすぎません。
したがって、この場合は、総付規制の適用を受けることになります。
具体例:「×円お買い上げの方に、次回来店時タオルをプレゼント」
1(2)で解説した自社割引券と同じ場面で、割引券ではなく、商品との引換券を交付した場合はどうでしょうか。
結論としては、総付規制(原則として、取引金額の20%を上限とする)を受けることになります。
両者の違いは、代金すべてに割引が適用されるのか、それとも特定の商品との引き換えにしか使用できないかによります。前者の場合は、値引きといえますが、後者の場合は、景品類の提供を行っているため、総付規制の適用を受けることになります。
以上では、クーポンの一例を紹介して、クーポンの景表法上の規制を解説しましたが、クーポンといっても内容は様々であり、その内容に応じて景表法上の規制は変わってくることに注意が必要です。
自社割引券(1(1)の場合)のように値引きとして取り扱われれば景表法上の規制は受けませんが、特定の商品との引換券(2の場合)では総付規制として取引金額の20%が景品金額の上限となり、クーポンの内容次第で規制の態様も大きく変わりますので、キャンペーンを行う際は、景表法上の枠組みをよく理解したうえで、設計をする必要があります。クーポンの規制に関して疑問や不安を抱えられている企業様、弁護士事務所の敷居が高いと感じておられる企業様、どうぞお気軽に弊所へお問い合わせください。
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