ジャパネットたかたが、昨年に実際より安く買えると誤認させる不当な表示でおせち料理を販売していたとして、9月12日に消費者庁から措置命令を受けました。
報道によりますと、おせち料理「【2025】特大和洋おせち2段重」について、「早期予約キャンペーン」と銘打って「通常価格」2万9980円から1万円値引きした1万9980円で販売すると自社サイトで宣伝していたというものでした。
これは販売価格について消費者に誤認を与えたというものですので、いわゆる有利誤認に該当する事案ということとなります。そして、実際に販売した価格と比較する通常価格がある場合に、それを比較してお得感を出す販売の仕方は二重価格表示とされ、消費者を誤認させないように様々な規制が行われております。
例えば、実際に販売した実績がない価格を比較対象価格として、それよりも安い金額を販売価格に設定してキャンペーンを実施した場合、消費者は今ならこの値段でお得だからキャンペーン中に買っておこうという心理が働きます。しかしながら、実際には比較対象価格として表示された金額での販売実績がなければ、実際には何もお得感はない訳ですから、消費者はそれを知っていたら買わなかっただろうということとなります。
今回のケースは、おせち料理ということで常に販売している商品ではなく、そもそも期間限定の販売という性質があります。そして、ジャパネットたかたの件は、販売前の早期予約であれば1万円引きという販売の仕方をしているので、消費者からすればこのキャンペーン期間が終了したら通常価格の2万9980円で購入しなければならないので、今のうちに購入しておこうという心理が働きます。つまり、消費者からすれば、早期予約キャンペーンが終了した後は通常価格での販売になり、今予約した自分はお得なのだと思う訳です。ここに購入心理が働くこととなるのです。
では、早期予約キャンペーンが終了したあとに実際に通常価格での販売がなかった場合はどうなるでしょうか?消費者庁はこの点をとらえて消費者を誤認させたものと認定して措置命令を行ったものと思われます。
しかしながら、今回のケースで、消費者に誤認を与えたということはできるのでしょうか?ジャパネットたかたの反論をみると、早期予約キャンペーンで全て販売しきったことを強調しております。仮にジャパネットたかたが早期予約キャンペーンが終了した後もキャンペーン価格で販売していた場合は、消費者は騙された!と思うかもしれません。つまり、早期予約キャンペーン期間終了後も1万円引きで販売し続けることを知っていたら、急いで買わなかったのにと思うかもしれません。この場合は明白に二重価格表示の規制を逸脱するものであって有利誤認に該当することは間違いないものと思います。
しかし、あまりの人気で実際に通常価格で販売する機会がなかったジャパネットたかたのケースは消費者が騙された、などと思うでしょうか。この点は非常に疑問に思うところです。消費者庁は、販売計画において早期予約キャンペーンン後に通常価格で販売する計画をしていなかったことを指摘しているようですが、そこはジャパネットたかたのキャンペーンで全て売り切るという自信があったからではないでしょうか。この営業努力は素晴らしいものであり、それを仇とするような行政処分には疑問が残ります。さらに言えば、在庫が残った場合は通常価格で販売した可能性は十分にあると思いますし、その可能性を全て否定することはできるのか疑問に思います。
以上のような点からして、今回、ジャパネットたかたに対する措置命令というのは本当に発動する必要性があったのか疑問に思わざるを得ません。確かに、ジャパネットたかたの方にも、「2万9980円相当の食材が入ったおせちが1万円引き」という言い方にすればよかったじゃないかという考えもあるかとは思います。ただ、早期予約キャンペーン期間で売れ残った場合は2万9980円で販売する他ないと認識していたのであれば、ジャパネットたかたの表記の仕方もそれほど責められないのではないか、と思ってしまいます。以上の理由から今回の措置命令には疑問を感じてしまいました。