2022年2月3日の日経新聞に珍しい摘発例の記事が掲載されていました。それは、2021年12月、カレーや和洋菓子の老舗として知られる中村屋とその採用担当者が入管法違反(不法就労助長罪)の疑いで書類送検された事件です。
中村屋は、人材会社から派遣された外国人の与えられた在留資格が「技術・人文知識・国際業務」であると知りながら、約3年間、在留資格の範囲を超える和菓子の製造業務をさせていたとのことです。この「技術・人文知識・国際業務」は、日本企業に就職した外国人が一般的に所持することが多い在留資格ですが、活動できる業務の例としては、翻訳・通訳、私企業の語学教師、販売・営業、海外業務等です。そのため、中村屋における和菓子の製造業務など、比較的単純な作業については、この在留資格では行えない業務ということになります。
今回、問題となった不法就労助長罪は、「外国人に不法就労活動をさせた者」等(入管法第73条の2)が違反の対象となります。従来、外国人を直接雇用する企業の摘発例はありましたが、今回は派遣先の刑事責任を追及するものであり、大変珍しい事件として注目されています。かねてから派遣先企業では、人材会社を隠れ蓑に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格外の業務を行うことが横行していましたが、ついに派遣先企業にもメスが入ったということになります。
不法就労助長罪に問われた事業主は、懲役3年以下または罰金300万円以下の罰金という重い刑が課されてしまいます。今回、中村屋は、人手不足を理由に違法とわかっていながら在留資格外の業務を行わせ、人手不足解消を優先して行っていたとのことですが、今後、今回の事件を契機に、このような人手不足を理由に(わかっていながら)在留資格外の業務を行わせている派遣先企業に対する摘発が益々進むと思われます。
また、派遣先企業の人手不足が深刻な問題となっている中、外国人を採用する企業は多いと思われますが、今回の中村屋の事件のように、在留資格外の業務を行わせた場合、派遣先企業の経営者のみならず、採用担当者も書類送検される可能性がありますので、十分注意が必要です。そして、採用担当者も罪に問われるということをしっかりと社内で周知させることも重要といえます。
知らずに在留資格外の業務を外国人に行わせていた事例も多くありますので、今回の事件を契機に、一度、外国人の在留資格をしっかり確認すると良いでしょう。外国人に在留資格外の業務を行わせているかの判断が難しい場合は、弊所にご相談いただければお答えいたしますので、お気軽にご相談ください。