新型コロナウイルス感染拡大対策として、令和2年4月7日に、首相から緊急事態宣言が出されました。この宣言に基づき、対象となった東京など7都府県の知事から外出自粛の要請がなされたため、休業に踏み切る企業が数多く見受けられました。
しかしながら、親事業者が休業判断を行ったことで、多くの下請業者が、
・支払期日を経過しているのに親事業者から下請代金を支払ってもらえない
・納品を断られたために、自費で管理しなければならない
といったトラブルに巻き込まれているのが現状です。
それでは、下請業者としては、どのような対応を取ることができるでしょうか。
まず、緊急事態宣言が出たとしても、必ずしも「不可抗力」による休業とは言えません(正確には、「不可抗力」に当たるか当たらないかは、親事業者と下請業者間で締結した契約書のうちの不可抗力条項の記載によって結論が異なってきますが、少なくとも、現時点において、各省庁は、緊急事態宣言や外出自粛を「不可抗力」とする見解を示していません。)。
そのため、親事業者が緊急事態宣言を受けて自主的に休業した場合であっても、親事業者は、なお、下請代金を支払う義務を負うことになります。
さらに、緊急事態宣言による親事業者の休業について、下請事業者側に責任はありませんので、親事業者による下記の行為は、下請代金支払遅延等防止法第4条第1項により、禁止されています。
・下請事業者の給付の受領を拒むこと。
・下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと。
・下請代金の額を減ずること。
・下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせること。
また、令和2年2月14日と3月10日の2回、経済産業省は、業界団体(約1,100団体)を通じて、親事業者に対して、「下請取引配慮要請」を発出しました。同要請は、下記のとおりです。
■取引上のしわ寄せ防止 ①サプライチェーンの毀損等を理由にして、通常支払われる対価より低い下請代金の設定を行わないこと。 ②適正なコスト負担を伴わない短納期発注や部品の調達義務の委託を行わないこと。 ③下請事業者が、事業活動を維持し、又は今後再開させる場合に、できる限り従来の取引関係を継続し、あるいは優先的に発注を行うよう配慮すること。
■納期や支払い等への一層の配慮 ①納期に遅れる可能性に留意し、納期に関し柔軟な対応を行うこと。 ②原材料価格等の高騰及び短納期によるコスト増を踏まえ、適切なコスト負担を行うこと。 ③下請事業者の資金繰りが苦しい状況にあることを踏まえ、迅速な支払いや前金払等の柔軟な支払いに努めること。 ④発注の取消・変更を行う際には、仕掛品代金の支払いを行うなど最大限の配慮を行うこと。 ※経済産業省「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」より抜粋 |
下請代金の未払いや納品拒否等でお困りの方は、ぜひ一度、ご相談ください。