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悪質な誇大広告抑止のための景品表示法の改正案について

 先日の2月24日に各新聞紙において、悪質な誇大広告を抑止するために消費者庁が法律の改正案をまとめたとの報道がなされました。報道を見ますと、改正案の内容は、悪質な誇大広告を行った事業者に対して、行政処分を経ないで100万円以下の罰金を科すほか、違反を繰り返した場合の課徴金を現行の1.5倍にするという内容のものでした。

 これまでは、措置命令や課徴金納付命令といった行政処分を行い、行政処分に従わなかった場合に罰金を課すというシステムになっていました。その意味で、これら行政処分を経ずに罰金を課すというのは大変画期的な改正案ではないかと思います。悪質な誇大広告に対しては、迅速に対応しなければならないという消費者庁の姿勢が出ているのではないかと思います。

 また、課徴金納付命令では、当該違反の対象となった商品の過去5年分の売上に対して3%の課長金が課せられるという内容となっており、これまで課徴金算定率を引き上げた方がよいのではないかという議論がなされておりましたが、これに応える形で違反を繰り返すした場合は1.5倍にするという形になりました。

 

 さらに、今回の改正案では、軽微な違反の場合は措置命令などで対応をするのではなく、事業者に改善計画を作成させるという「確約手続」の導入が盛り込まれました。改善計画を提出することで措置命令を免れることができます。これは独禁法の確約手続を参考にして導入されるものになります。

 これまでは、軽微な違反事例に対しても、違反であれば措置命令が出されていたように思われます(行政指導で終わらせるケースもありますが、これはあくまでも必ずしも違法とまでは言えないケースが対象だったのではないかと思います。)。この確約手続きの導入により、軽微な違反事例であれば事業者にとっても改善の機会を与えられることとなりますし、措置命令を免れるために速やかに表示内容の変更を受け入れ、結果的に表示の適正化が進むのではないかと期待しております。

 

 なお、今回の改正案の報道では取り上げられておりませんが、その他にも適格消費者団体・特定適格消費者団体(まとめて適格消費者団体等といわれております。)が違法広告に対して差止・被害回復を行うための制度の導入についても議論がされております。適格消費者団体等は違反の立証手段を持ち合わせておりませんので、立証手段確保のために事業者に対して合理的な根拠の資料の提供を義務付けるという内容の議論もされております。事業者にとっては、消費者庁だけではなく消費者団体等の動きも注視する必要が出てきますので、事業者の負担も相当なものになるかもしれません。今後の景品表示法の改正についてさらに注目していく必要があるものと思います。

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森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

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