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クレベリン(大幸薬品)に対して過去最高額の課徴金納付命令がなされた件について弁護士が解説

1 クレベリンに対して過去最高額の課徴金納付命令

 消費者庁は、大幸薬品が「クレベリン」という商品の広告の中で空間除菌とい表示をしておりましたが、その表示には合理的根拠がないということで、課徴金納付命令を行いましたが、その金額が6億円という過去最高の金額となりました。報道ではこの6億円という金額が大々的に報じられていましたが、この金額は実は対象期間内の当該商品の「売上」金額の3%と決められており、その計算に基づいて算出されたものとなります。

 つまり、過去最高額ということですから、それだけこのクレベリンが売れていたということになります。

 

2 売上の3%で十分な制裁となっているのかについて

 課徴金について売上の3%は少なすぎるのではないか、十分な抑止力になっているのでしょうかという質問を受けたことがあります。この点、実際に課徴金対象事例の相談にのっているときは、やはり事業者様はこの売上の3%という数字でも相当に負担を感じられている感じがあります。この3%は利益の3%ではなく、売上の3%ですから、薄利多売な事業であればほとんどの利益を吸い上げられる可能性もなくはないです。売上の3%を伸ばすということは並大抵のことではありませんから、その意味でも3%というのは決して甘い数字ではないと思います。

 また、措置命令を受けている訳ですから、相当に売上も落ち込むことが多いです。ですので、事業者にとっては3%であっても死活問題になりかねないケースは十分にあると思います。

 但し、課徴金が3%課されると分かっていても、未だに不当表示で摘発されるケースが多いようです。クレベリンのケースをみても、約202億4867万円の売上があったと報道されているようですが、この中の6億円だと抑止力にならないのではないかという声があることも事実です。

 そのため、景表法の改正法案では、違反行為から遡って10年以内に課徴金納付命令が課された事業者には1.5倍の課徴金を課すことや、100万円以下の罰金の制度も設けることが盛り込まれており、先日閣議決定されました

 

3 課徴金を免れる方法はあるかについて

 措置命令を受けたあとに課徴金を免れる方法はあるかという質問も受けることがあります。現在の制度ですと、課徴金対象事案(課徴金額が150万円以上)であれば、課徴金納付命令を免れることはできません。例外的に、事業者が所定の手続に沿って返金措置を実施した場合は、課徴金を命じない又は減額するという制度がありますが、手続きが煩雑ですし、実際には課徴金として支払う金額を消費者に返還するだけですので(但し、消費者から代金の返還請求を受けることを考えると決して意味がない制度ではないと思います。)、あまり利用されている実績はないようです。そのため違反をしてしまうと、もはや事後的にどのような対応をとっても、返金措置を講じない限りは課徴金は免れないということになっております。

 この点、景表法改正案では不当表示をした事業者が是正措置計画を申請し、内閣総理大臣の認定を受けられれば措置命令や課徴金納付命令の適用を受けないで、迅速に不当表示の問題を解決するという確約手続の規定が盛り込まれています。この確約手続は、独占禁止法にも規定されているものですが、自ら不当表示を申告し、速やかに消費者の誤認を解消することで行政処分を免れることができるというものです。是非、この確約手続を早く導入して欲しいと思っております。

 

4 まとめ

 以上のとおり、クレベリンという商品に対する課徴金が過去最高額と報道はされましたが、それは結局のところクレベリンがたくさん売れていたからに他なりません。そして、売上の3%はそれなりに抑止力があるものだと理解しておりますが、やはり一部では売上が大きいとその3%だけだと売り抜け勝ちではないかという批判があることも確かです。そのため、課徴金の制度を厳格化したり、罰金制度を設けた景表法改正案が提出され閣議決定を経ました。

 また、万が一、不当表示を行っても、いちはやく自己申告を行って消費者の誤認を解消することで行政処分を避けられる確約手続きの導入も景表法改正案に盛り込まれています。こちらの景表法改正案は、今国会で成立予定です。今後、注目していきいたと思います。

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森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

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