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特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などのいわゆる「介護施設」を標的とした「虐待がある」等の虚偽告発は、近年、元職員や元利用者家族によるトラブルの延長、個人的な恨みなど様々な動機で発生しています。
介護施設が被る被害のパターンとしては(1)行政への虚偽通報、(2)ネット上の悪質なクチコミがあります。
元職員や元利用者家族などから「虐待がある」として市区町村に匿名で通報されるパターンです。
行政は原則として立入調査を実施せざるを得ないため、介護施設側としては、調査に対応する人的物的コストがかかります。それと共に、たとえ調査結果が白(シロ)であったとしても世間には「調査が入った施設」という印象が残るため風評被害を被ることになります。
Googleマップや介護事業者紹介サイトに虚偽の低評価投稿をされるパターンです。「利用者が放置されている」「職員が暴言を吐く」等の事実無根の情報がXやFacebookグループ等のSNSで拡散されることによって、風評被害を被ることになります。
利用希望者や家族が介護施設を選ぶ際にインターネット上の投稿(クチコミ)を重視する背景としては、介護施設の実態が外から見えにくく、公式パンフレットや職員の説明だけでは実際のサービスの質を理解・判断することが難しいことが挙げられます。
すなわち、介護サービスは、数字や制度の情報だけでは把握しにくい現場職員の対応やケアの仕方、夜間の対応、食事の味や温度、実際の生活ルール等によって満足度が大きく左右されます。その結果、実体験を持つ利用者本人や家族による体験談が実態を知るための貴重な情報源であるという理由で、介護施設選びにおいてインターネット上のクチコミが重要視されているものと思われます。
以上述べたように、インターネット上のクチコミは、利用希望者や家族が介護施設を選ぶ際の事実上の選択基準として重要視されています。
このような状況下で「虐待がある」など実際には起こっていないネガティブな出来事をあたかも現実に起こった真実であるかのように記載した虚偽のネット投稿は、介護施設の経営にとって大きなネガティブ要因となります。
虚偽のネット投稿を放置すると、たとえば「虐待」という強い言葉を含む1件の虚偽投稿が介護施設名と共に検索の上位で表示され続けることになるため、介護施設の社会的評価が下がり、風評被害が拡大して、継続的な利用者募集の停滞や入居申込の減少による事業継続のリスクを招きかねません。
行政(市区町村)は虐待の通報や相談があった場合に事実確認を行うため、介護施設側が虚偽のネット投稿を放置していると、調査や説明のための対応に追われるリスクがあります。真実でないネット投稿を放置していることで、行政から「何かあるのでは?」と疑義が残る施設として扱われるからです。
虚偽のネット投稿を放置して介護施設の虐待疑惑が世間に広まることによって、問い合わせ対応などの負担が増えたり、無関係な職員まで世間から加害者扱いされたりして、職員の働きやすさが損なわれて士気が低下し、離職の増加や採用難を招きかねません。
虚偽の通報や悪質なネット投稿の放置が長引くほど、介護施設にもたらす被害はより深刻になってしまいます。
介護施設としては、虚偽通報や悪質なネット投稿を放置することなく、速やかに防衛策をとるべきです。
弁護士としては、虚偽通報や悪質なネット投稿があった事実を示す証拠をスクリーンショットなどで直ちに保存して、内部で客観的事実の確認をし、内部記録を整理したうえで、悪質なネット投稿の削除請求など法的措置を速やかに進めるのが良いと思います。
介護施設の名誉を毀損する虚偽の書き込みに対しては、民事・刑事の両面で法的措置が可能です。
Googleマップやクチコミサイトの運営者等に対して、虚偽の投稿を削除するよう求めることができます。各サイトのフォームを利用する方法の他、仮処分という裁判手続を活用する方法もあります。
匿名での悪質なネット投稿の場合、プロバイダ責任制限法に基づき「発信者情報開示請求」を行い、投稿者の氏名・住所を特定できます。
2022年10月の改正法により、事案によっては簡易化された裁判手続を利用することも可能となりました。
ただし、プロバイダ側のログ保存期間が数か月と短いため、迅速な対応が不可欠です。
氏名と住所が判明した投稿者に対して、名誉毀損や業務妨害を理由とした損害賠償請求をすることができます。
また、悪質なケースでは、警察に、名誉毀損罪や業務妨害罪等で刑事告訴し処罰を求めることも検討します。
高齢者虐待防止法では、高齢者福祉サービス事業に従事する者に対して、同サービス関係者から虐待を受けていると思われる利用者を発見した場合に通報(内部告発)することを義務づけていますが、保護の対象には例外があります。
すなわち、通報内容が誤報であった場合、そのことをもって直ちに通報者に対して責任を問えるわけではないものの、故意または過失による虚偽通報については、守秘義務違反等の免責の対象外とされています。
したがって、介護施設側としては、虚偽通報者に対して法的な責任を追及できる可能性があります。
事案によっては、間違った情報が報道されないよう、弁護士等の専門家と相談の上で、取材の自粛要請、公式ホームページにおける見解表明、記者会見を通じた積極的な情報発信などを行うことが重要となります。
投稿内容について、まずは虐待など指摘された事実が本当にあったのかどうかを慎重かつ迅速に調査します。
調査の結果、投稿内容が事実無根で介護施設や運営者の名誉を毀損したり業務を妨害するようなものである場合は、サイト運営者に対して投稿の削除を要請します。
また、不法行為に基づく損害賠償請求、名誉毀損罪や業務妨害罪での刑事告訴も検討します。
匿名でのネット投稿の場合には、プロバイダ責任制限法に基づく「発信者情報開示請求」の手続で投稿者の氏名・住所を特定したうえで、損害賠償請求や刑事告訴を行います。
事実無根の悪質なネット投稿だからといって介護施設側がネット上で感情的な反論や過剰な反応をしてしまうと、投稿者を刺激して状況を悪化させたり、炎上(拡散)して介護施設の社会的評価を下げたりするおそれがあるため、注意が必要です。
プロバイダのログ保存期間が数か月と短いことに留意して、悪質なネット投稿を発見したら、投稿内容・URL・日時をスクショ等で記録したうえで、速やかに弁護士へ相談して法的手段を活用した適切な対応をとることをおすすめいたします。
虚偽通報や悪質クチコミは、介護施設の事業継続にとって重大なリスクとなりかねません。
速やかに証拠を保全したうえで、弁護士に相談し適切な法的対応をとることが、現実的な自衛策として有用であると思います。
弁護士法人森大輔法律事務所は、2015年に企業・経営者側の立場に特化した企業法務メインの法律事務所としてスタートして以来、業種も規模もさまざまな100社以上にわたる顧問先のリーガル・コンサルタントとして数多くの企業事例を取り扱い、法律の枠を超えた「経営を守る生きた知恵」をもご提供している事務所です。
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