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企業への誹謗中傷を削除したい!サイト別の口コミを削除する方法を弁護士が解説

1 削除できる口コミかどうかの判断について

(1)削除するための法的根拠

   口コミを削除する場合の法的根拠は、人格権に基づく差止請求権に根拠を求めるというのが一般的となっています。誹謗中傷はその人の名誉権を侵害するものですが、名誉権は人格権の中に含まれると解されているからです(北方ジャーナル事件最高裁判決参照)。この点、民法には723条の名誉回復処分としての差止請求権が規定されておりますが、これは不法行為の一種ですので、この差止請求権が認められるためには故意・過失といった要件を主張立証する必要がありますが、人格権に基づく差止請求権で行う場合には故意・過失の立証が必要ありません。そのため、人格権に基づく差止請求権を法的根拠に削除の申し立てをするのが一般的となっております。

 

(2)削除するための要件

ア 事実摘示型で構成する

     では、人格権に基づく差止請求権を行使していく場合、故意・過失という主観的要件は不要ということですが、その他の要件としてはどのようなものが挙げられるのでしょうか。

     名誉権が侵害されたということが必要となりますので、社会的評価を低下させたことの主張立証が重要となります。そして、社会的評価を低下させたというためには、事実を摘示して行う方法と、意見として論評する方法の2種類があると言われております。どちらも社会的評価を低下させることができるものですが、削除を申し立てる場合は事実の摘示にあたるものとして構成することが重要になります。

その理由ですが、意見論評型は、違法性阻却事由がないという主張立証が困難だからです。事実摘示型であればその指摘された事実が真実ではないという主張立証の一点につきますが、意見論評型はその意見の前提となる事実の反真実性を主張立証することになるのですが、その前提となる事実がどれなのか不明なケースが多く、また前提事実となるもの全てに反真実性を主張立証するのは困難だからです。

そのため、口コミの内容が「事実摘示型」にあたるように構成することが重要となります。事実摘示型に構成できない口コミであれば削除することが事実上困難になるケースが多いと思います。

削除できるかどうかは、主にこの部分を調査することになります。

  (参考)

 ・意見論評型の場合の違法性阻却事由について

    「ある真実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、右意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、右行為は違法性を欠くものというべきである(最高裁昭和五五年(オ)第一一八八号同六二年四月二四日第二小法廷判決・民集四一巻三号四九〇頁、最高裁昭和六〇年(オ)第一二七四号平成元年一二月二一日第一小法廷判決・民集四三巻一二号二二五二頁参照)」(最高裁平成9年9月9日)

 

イ 誰の社会的評価を低下させたのかを明らかにする(同定可能性)

  次に、削除を求めていく際に注意をしなければならないのが、その口コミが誰を誹謗中傷しているのかが明確になっているかどうかの確認です。よくあるケースですが、口コミを見る限りその誹謗中傷は不特定多数の方に当てはまるように見えるのですが、その口コミを見た人が自分に対する誹謗中傷だと思い込んでしまうケースです。この場合は削除を求めていくことが難しくなってしまいます。例えば、「A社のYという人間が」というようにイニシャルで記載されている場合、A社のイニシャルがYという方は複数いるのであれば、誰の社会的評価を低下したのか分かりません。誰の社会的評価を低下させたのか、その同定可能性の問題をクリアしないと削除を求めることは難しくなります。

  この点については、いかに同定可能性を満たしているかという点を説得的に主張していくことが重要となります。

 

2 各サイト別の削除の方法

  • 2ちゃんねる 

任意の削除依頼は受け付けていないため、削除仮処分しかないと言われています。また、この2ちゃんねるには、取締役や代表者がいないという特殊事情がありますので、特別代理人の選任が必要となります。そのため、2ちゃんねるについては特別代理人の選任のための予納金が必要とされています。

なお、運営者が2ちゃんねるか5ちゃんねるか判別がつかないと悩まられるケースもあるようですがIDの末尾が「.net」となっているかどうかで運営者が2ちゃんねるかどうか見極めます。

 

  • 5ちゃんねる

こちらは、2ちゃんねるから分裂してできたサイトです。そして、2ちゃんえるとは異なり、裁判所の命令がなくても任意の削除にも応じています。削除のフォームもサイト内にあり、それほど複雑な手続きを要せずに削除依頼をすることができます。

なお、5ちゃんねるはフィリピンの会社ですので、仮処分を行う場合、資格証明書はフィリピンからの取得となりますが、自分で取得するのはかなり難しいと思います。そのため、仮処分をする場合は、取得代行業者を使う必要があるとされています。

 登記取得代行センター https://touki.world/

 

  • Twitter

削除請求はTwitterのWEBフォ―ム上から行うことができます。しかし、ハードルはかなり高い印象です。こちらのWEBフォ-ム上から削除が認められるケースは少ないと思った方が良いかもしれません。

Twitterには独自の問題もあります。リツイートの問題と呼ばれていますが、誹謗中傷したツイートをリツイートした場合も被害を拡散させるものであるとして削除対象や損害賠償の対象となるという点は近時の報道などからでもよく知られることとなりましたが、こちらもWEBフォーム上から削除が認められるケースは少ないです。

そのため、仮処分を行う必要がありますが、仮処分を行う際のTwitterの資格証明書はカルフォルニアから取得 (代行センターが現実的)する必要があります。Twitterで特徴的なのが、仮処分を行う場合、無担保(通常は30万円程度の担保を求められます。)での発令が定着しているので、他よりは仮処分を行いやすいのではないかと思います。

 

  • Facebook・インスタ・Googleマップ

こちらも、Twitterと同じで、基本的には仮処分を行うこととなります。

Googleマップの口コミ対応の詳細はこちら

  • 転職会議

WEBフォームからの削除申立てに応じてもらえるケースは多いかと思います。しかしながら、伏字という形での部分削除での対応となります。そのため、せっかく削除が認められても容易に削除された部分の文字が推認されてしまい、誹謗中傷された口コミが残ってしまっているのと同じ結果になってしまいます。そのため、転職会議については、基本的には仮処分で対応することが一般的です。

転職サイトでの誹謗中傷対応の詳細はこちら

 

  • サジェスト(オートコンプリート)

サジェストは、他のユーザーが検索したキーワードや検索頻度などで、色々な検索条件に基づいて表示されるものと言われております。Googleでは、サジェストに誹謗中傷のような単語があれば、サジェストが表示中に「不適切な検索候補の報告」をクリックすると削除を依頼できるフォームがあります。また、ヤフーでは、「Yahoo!検索-お問合せフォーム」の「お問合せ」ボタンから削除請求をすることができます。しかし、こちらについては、単語の羅列自体が人格権の侵害には当たらないという考えが強く、削除申立てをしても基本的には認められないケースが多いです。

しかしながら、単語の羅列であってもそれが一定の意味を与えるケースもあると思います。その場合にまで必ずしも人格権侵害が成り立ちえないとまでは言えないと思います。ハードルは高いですが、全く認められない余地がないとまでは言い切れないと思います。

 

3 直接交渉で削除に応じてもらえない場合の対応

  各サイトのWEBフォームで削除対応してもらえない場合は、削除仮処分の申し立てを裁判所に行うこととなります。TwitterやFacebook、インスタ、Googleマップなどは最初から仮処分の申し立てで対応するケースが多いのではないかと思います。そして、裁判所の仮処分による削除命令が出ればほとんどのサイト管理者はそれに応じます。

  仮処分の申立ては、法的な知識が必要となりますので、弁護士に依頼することをお勧めします。

  なお、仮処分の申し立てを行う場合に懸念事項となるのは担保の取り戻しができるかどうかという点です。担保は概ね30万円程度を求められますので、その担保が戻ってくるかどうかは非常に重要な点です。この点については、仮処分の取り下げをすることで担保の取り戻しの手続きを進めることができます。仮処分を取り下げると、削除した口コミが復活されるのではないかと不安になるかと思いますが、復活されたという事例の報告はほぼありません。

 

4 削除するかどうかの判断について

  削除するかどうかは慎重に判断する必要があるケースもあります。特に、口コミで誹謗中傷される背景に個人的なトラブルや、会社であれば労務トラブルなどがあるケースは削除しても同じような誹謗中傷をくり返し記載され、場合によってはエスカレートしていくケースもあります。概ね、複数の誹謗中傷が口コミに記載されている場合は、そのようなケースの可能性が高いです。

問題社員が誹謗中傷を繰り返している際の対策はこちら

そのため、なぜこのような誹謗中傷の口コミがされたのか、その背景も探る必要があります。そして、その原因が見つかればその原因も一緒に除去していくという姿勢が必要です。そのような姿勢もなく単に口コミを削除すれば、かえって炎上するという結果にもなりかねません。弊所では、ご依頼者様と一緒に誹謗中傷の口コミをされた背景なども検討するように心がけております。

口コミや誹謗中傷でお悩みの企業様は、無料削除診断にお申し込みください。

弁護士が無料で、書き込みの削除ができるか、難しい場合、どのような対応ができるかをお伝えいたします。

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森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

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