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近年、インターネット上における根拠のない「欠陥住宅」「手抜き工事」などの書き込みが、建設・不動産業界において多発しております。
背景として、近隣住民や顧客が不動産・建設業者とトラブルになった際、感情的はけ口としてSNSを利用していたり、思い込みによる一方的な情報を既成事実のように記載していたりすることがあるようです。
問題は、近隣住民や顧客がいかなる動機で書いたものであるにせよ、このような真実ではない情報、いわゆる「デマ」の投稿がインターネット上に放置されていると、不動産・建設業者の風評被害が拡大し続けてしまうということにあります。
まず、不動産・建設業者の経営を直撃するリスクとして、新規顧客が契約前に離脱してしまうことが挙げられます。すなわち、検索結果に会社名と共に「手抜き工事」「欠陥住宅」などのワードが表示されてしまうので、表示された瞬間に受注の機会を失いかねません。
また、自社に関するデマが拡散することによって、金融機関や取引先からの信用が低下したり、分譲中の物件や施工中の案件に風評が波及して悪影響が及ぶリスクもあります。
ネット上の投稿は、時間が経つほど削除や発信者特定の法的手続が困難となって、損害賠償の請求や刑事告訴など法的対応が難しくなります。
また「デマを放置=黙認し真実と認めた」と第三者に誤って受け取られるリスクがあるうえ、拡散後はたとえ削除してもいわゆる魚拓や転載が残って風評被害などの実害が継続してしまうリスクがあります。
デマ投稿を放置して自社のイメージや社会評価が悪くなると、現場の職人や営業担当に対する世間の風当たりが強くなって士気が低下し、更には離職されてしまうリスクがあります。同時に、採用活動にも深刻なダメージが及びかねません。
不動産・建設業者に対する「手抜き工事」「欠陥住宅」といったデマ投稿について、投稿の削除や損害賠償請求などの法的措置が認められる判断基準は、以下のようになっております。
投稿内容が、一般的な読者層の普通の注意と読み方を基準として、不動産・建設業者の客観的な社会的評価を低下させるものであるかどうかが基準となります。法人の場合でも、悪質なデマ投稿によって社会的評価が害された場合には、名誉権の侵害が認められます。
不動産・建設業のサービスに関する事実は「公共の利害に関する事実」に該当し得ますが、近隣住民や顧客が嫌がらせや不当な金銭要求などの目的で悪質なデマを投稿した場合には違法性が認められて不法行為となります。
したがって、損害賠償や削除請求の対象となります。
「手抜き工事」などの客観的真実に反するデマ(虚偽の情報)を不特定多数に広める行為は、刑法上の信用毀損罪や偽計業務妨害罪に該当する可能性があります。
裁判例により「信用」は支払能力に限られず、販売される商品の品質に対する社会的な信頼も含まれるとされております。したがって、建物の品質に関する「手抜き」「欠陥」というデマ投稿は、「信用」を害する行為に該当し得ます。
そして「虚偽の風説を流布」とは客観的な事実に反する情報を不特定または多数の人に伝えることを指しますので、ネットへのデマ投稿はこれに該当します。
信用毀損罪は社会的評価を低下させる「おそれ」のある状態が発生すれば成立します。実際に売り上げが落ちるなどの現実の被害が発生することまでは必要ありません。
信用毀損罪が成立すると、デマ投稿者は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処せられます。
偽計業務妨害は「虚偽の風説を流布」すなわちデマを不特定または多数の人に伝えることによって他人(不動産・建設業者)の業務を妨害した場合に成立します。
業務妨害罪の成立にも、デマ投稿によって実際に受注数が減ったなどの結果は不要です。投稿を見た通常の人が「この業者に依頼するのをやめよう」と考えるような、業務を妨害するに足りる客観的な可能性がある状態になれば成立します。
偽計業務妨害罪が成立すると、デマ投稿者は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処せられます。
インターネット上の被害は拡散によって拡大するため、被害の拡大を防ぐためには悪質なデマ投稿を速やかに削除することが最も効果的です。
不動産・建設業者に対する「手抜き工事」「欠陥住宅」といったデマ投稿や悪質なクチコミを速やかに削除する手順をご説明いたします。
削除請求を行う前に、後の裁判手続等も見据えて、対象となるデマ投稿の内容およびURLをスクリーンショット等で保存して、証拠を確保します。
どんなに悪質なデマであっても、被害者が自ら削除することはできません。サイト管理者に投稿を削除してもらう必要があります。まずは、各サイトが用意している専用フォームからデマ投稿の削除を依頼します。
Googleの「Legalヘルプ」ページにある専用ウェブフォームから、対象サービス(Googleマップ)と「法的な問題」を選択し、「リクエストを作成」のボタンをクリックし、具体的な内容を入力するためのフォームを開きます。
フォームに従って削除対象とするデマ投稿のURLや権利侵害の理由を入力して送信します。
サイト内のガイドラインを確認し、各投稿の横に設置されている「削除依頼ボタン(×印)」等から直接依頼を行います。
サイト上の「お問い合わせ」フォームや削除専用フォームを利用して、削除対象のデマ投稿を具体的に特定した上で削除依頼します。
権利侵害の理由の書き方など法的なご不明点につきましては、弁護士にお気軽にお問い合わせください。
サイト管理者に任意での削除を拒絶された場合や、より迅速な法的解決が必要な場合には、民事保全法に基づいて「削除仮処分」の手続をします。これは法的手続に沿ってデマ投稿の削除を求める裁判手続ですので、申立てについては弁護士にご相談されることをおすすめします。
サイト管理者が速やかに削除をしてくれないケースもあります。そのような場合は、良好な関係を築いている顧客からのクチコミ投稿を増やしたり、デマ投稿に対する一般公開での返信として「ご指摘いただいた内容に該当する事実の存在が認められない」旨を回答したりして、悪質なデマ投稿を稀釈させることが、実効性のある対処法であると思います。
不動産・建設業者としては、悪質なデマ投稿によって売上減少などの被害を被った場合には、投稿した者に対して損害賠償や謝罪を求めたいところです。
そのためには、発信者情報開示請求の法的手続によって、投稿者が誰であるかを特定する必要があります。
発信者情報開示請求を行うためには、①権利侵害の明白性(デマ投稿により名誉権等の権利が侵害されたことが明らかであること)および②開示を受ける正当な理由(損害賠償を請求するために必要である等)の2つの要件を満たす必要があります。
まず、掲示板やSNSのサイト管理者に対して、投稿者のIPアドレスとタイムスタンプの開示を求めます。
オンラインフォームやメールによる任意の開示請求も可能ですが、強制力がないため、多くの場合、裁判所を通じた「発信者情報開示仮処分命令」の申立てが必要となります。
IPアドレスは数か月で削除されることが多いため、迅速に申立て手続をすることが重要です。デマ投稿を認識したら速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。
次に、開示されたIPアドレスから判明した接続プロバイダに対して、投稿者の氏名・住所等の情報の開示を求めます。この際、手続中にログが消去されないよう「発信者情報消去禁止の仮処分」等も検討します。
接続プロバイダによる任意の開示は原則として期待できないため、「発信者情報開示請求訴訟」を提起するのが一般的です。
2022(令和4)年10月施行の改正プロバイダ責任制限法により、これまでの2段階の手続(コンテンツプロバイダと接続プロバイダそれぞれへの手続)を1つの非訟手続で行える「発信者情報開示命令」の裁判制度が新設され、こちらの手続も選べるようになりました。
実際にどの手続を選んだら良いのかは、個々の事案や相手方となるプロバイダ次第で異なりますので、弁護士にお問い合わせください。
投稿者の氏名・住所が特定された後は、当該人物に対して損害賠償の請求、謝罪の要求、将来の投稿の差止請求などを行います。また、権利侵害が業務妨害罪など犯罪を構成する場合には、刑事告訴も検討対象となります。
客観的事実に反する噂や情報を不特定または多数の者に伝える行為(虚偽の風説の流布)や、偽計を用いて他人の信用・業務を害する行為は、刑法233条により処罰の対象となります。具体的に「手抜き工事」などの事実無根な内容をネット上に書き込むことは、これらの罪に該当する可能性が高くなります。
業務妨害罪における「妨害」とは、現実に業務が阻害される結果までを必要とせず、業務の運営を阻害するおそれのある状態を生じさせれば成立します。
したがって、投稿を見た通常の人がその業者への依頼を躊躇するような内容であれば、たとえ1回のデマ投稿であっても業務妨害罪が成立する可能性があります。
特に、悪質なデマ投稿のせいで相次ぐ問い合わせへの対応に従業員が追われ業務の停滞が生じているような場合には、刑事告訴を検討すべきと思います。
デマ投稿が単なる商品・サービスへの否定的な評価にとどまらず、社長や従業員の人格非難に至るほど悪質な内容である事案や、競業他社が関与して意図的に虚偽の評価を投稿させている事案などは、悪質性が高いと思われます。
このような悪質なケースについては、刑事告訴を検討すべきです。
投稿者に対して書面等で業務への支障を通知してデマ投稿をやめるよう求めたにもかかわらず妨害行為が続いているケースでは、業務妨害の故意や悪質性が明白となりやすいです。このようなケースでは警察に相談する際、その経緯も証拠を示して説明することが重要になります。
警察に刑事告訴を受理してもらうためには困難が伴うことも少なくありません。デマ投稿の内容や日時を具体的に特定した証拠を揃えて、粘り強く説明することが必要です。お困りの場合には、どうぞ弁護士にご相談ください。
自社に対するいわれのないデマ投稿を発見した際、直ちに削除を求めたいところですが、証拠の保存(デマ内容、URLを含むスクリーンショット等)を怠ってはいけません。
削除請求、損害賠償請求、刑事告訴など全ての法的請求において、いつ、どのような内容のデマ投稿が行われたかを示す資料が必要となるため、発見後すぐに記録して保存する必要があります。
プレスリリースや記者会見等を通じて過剰に反論することは避けた方が良いです。かえって世間の注目を集めてしまい、風評被害の拡大を招く恐れがあります。
自社ホームページ等で事態を公表する場合、デマの内容を具体的に特定しすぎてはいけません。詳細を記載しすぎると、新たな「尾ひれ」がついて情報が拡散したり、かえって世間の注目を浴びて被害を大きくしたりするリスクが生じるからです。
広報では、デマの内容について概括的な記載に留めたうえで「ご指摘のあった内容に該当する事実の存在は認められない」旨を明示した方が良いと思います。
安易な法的措置は「都合の悪い意見を踏み潰すのか」という社会的批判を招くリスクがあります。
また、敗訴した場合「裁判所がその投稿の合法性を認めた」と世間に受け取られたり 「消費者の正当な批評を裁判で口封じしようとした」という悪質な印象を与え、ブランド価値を大きく毀損させるリスクがあります。
警告書の発送や損害賠償の請求をする前に、ぜひ弁護士にご相談いただければと思います。
弁護士法人森大輔法律事務所は、2015年に企業・経営者側の立場に特化した企業法務メインの法律事務所としてスタートして以来、業種も規模もさまざまな100社以上にわたる顧問先のリーガル・コンサルタントとして数多くの企業事例を取り扱い、法律の枠を超えた「経営を守る生きた知恵」をもご提供している事務所です。
我々は、インターネットトラブルや労務トラブルから不動産・建設業の経営を守りたいという想いから、誹謗中傷クチコミ、問題社員の解雇、ハラスメントなどの問題に力を入れて取り組んでおります。
それゆえ、ネットトラブルへのスピーディーな対応はじめ、「カスハラ(カスタマーハラスメント)を学ぶ社内セミナー」「インターネットトラブルを防ぐ社内セミナー」などのセミナー(研修)開催、社内規程や就業規則の整備など、企業・経営者側の立場で適切な対策をとることができます。
・悪質なデマ投稿による誹謗中傷・風評被害への対応に苦慮されている方
・社内における労務トラブル、問題社員への対応でお困りの方
・幅広い法務・労務の相談にスピーディーで親身に対応できる顧問弁護士が必要な方
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