
3月12日に「イモトのWiFi」を展開するエクスコムグローバル社に対して1億7000万円の課徴金納付命令が出されたとの報道がなされました。既に2024年3月1日に措置命令が出ておりましたが、これに続く課徴金納付命令ということになります。
事案としましては、「イモトのWiFi」の広告の中に「お客様満足度No.1」や「海外旅行者が選ぶ No.1」、「顧客対応満足度No.1」等という表記があったのですが、この表記には合理的な根拠がない(優良誤認)という判断をされたというものでした。報道によると、エクスコムグローバル社は、これら「No.1」表記を広告に表記するためにアンケート調査会社に調査の依頼をされていたようですが、その調査会社が実施したアンケート調査では、回答者のサービス利用経験が確認されていなかったということです。
一般の消費者が例えば「顧客対応満足度No.1」という表記を見れば、「イモトのWi-Fi」と別のメーカーのWi-Fi端末を実際に利用した消費者がそれらを比較し、どちらが良いかを判断した結果がアンケートに反映され、顧客対応満足度「No.1」という表記に至ったと理解するのが一般的ではないかと思います(そもそも、商品や役務を利用したことがない人の「No.1」感想というのはいったいどれほどの意味があるのでしょうか。一般消費者からすればそのような意味がない「No.1」が表記されているとは思いもしないはずです。)。
しかしながら、実際には、アンケート調査会社が、回答者が実際にサービスを利用していたかどうかの確認をせずに調査をしていたとのことでした。そうであれば、この「顧客対応満足度No.1」は、単なるアンケート回答者の印象を掲載したに過ぎず、一般消費者が広告から受け取る情報とは異なるものが表記されているということになります。「No.1」表記は消費者の購入の意思決定に大きく影響を与えますから、その意味で優良誤認ということになってきてしまいます。そして、それは「お客様満足度「No.1」」や「海外旅行者が選ぶ No.1」も同じこととなります。今回、消費者庁はこのような点を根拠に課徴金納付命令を出したものと思われます。
「No.1」表記というのは昔からある広告の手法の一つだと思いますが、近時ではこの「No.1」表記で多くの違反事例が報道されております。そして、この「No.1」表記は優良誤認とされておりますが、なぜ優良誤認となるのかについてまずは解説をしたいと思います。
優良誤認とは、商品役務の品質性能等について実際よりも著しく優良であると誤認をさせたり、他社製品よりも著しく優れたものであると誤解させるような表示をいいます。では、顧客対応満足度「No.1」などというのは商品役務の品質性能に関する記載と言えるのでしょうか。
一見すると、顧客満足というのは利用した側の主観面の問題であって、商品役務の品質性能そのものとは関係がないような気もしますが、おそらく、消費者庁は「No.1」という表記は他の商品よりも品質性能が優良であるということを想定させるものであるため、商品役務の品質性能とは関係がないとまでは言えないという立場をとったのではないかと思われます。また実際にも、消費者庁表示対策課が取りまとめた「No.1 表示に関する実態調査報告書」(令和6年9月26日)では、No.1 表示が購入の意思決定にどの程度の影響を与えるかを調査した結果、約5割の回答者が、「かなり影響する」又は「やや影響する」と回答したとの分析がなされており、これらが消費者の購入心理に大きな影響を与えている点は無視できないものと思われます。
以上の理由より、「No.1」の記載をする場合は、優良誤認の対象となりますし、この点については現在のところ異論がないように思います。
一部報道によれば、「調査をしたリサーチ会社には適法性を問い合わせるなど注意を払ってきた」と消費者庁の課徴金納付命令を争う姿勢を見せているとのことでした。リサーチ会社に調査を依頼していたとのことですが、通常、「No.1」表記をする場合、どのような名目で「No.1」と表記するかを決め、その表示の根拠資料となる調査をアンケート調査会社に依頼して、「No.1」の表記を納品してもらうことが一般的であると思われます。そして、エクスコムグローバル社も同じようにアンケート調査会社に依頼をしたとされております。
では、このように争う姿勢をエクスコムグローバル社が見せる根拠はどこにあるのでしょうか。実は景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)第8条1項の課徴金納付命令の規定には、違反であることを知らないことにつき相当の注意を払っていれば処分されない旨の規定があります。そのため、エクスコムグローバル社は、調査したアンケート調査会社に適法性を確認したことをもって相当の注意を払ったということを主張したいのではないかと推測されます。
しかしながら、これまで多くの「No.1」表記が優良誤認として判断されてきた背景にはアンケート調査会社の調査方法に問題があったからと言われていますし、そのことは現在では報道などを通じてかなり周知されているように思います。
これまで問題視されてきたアンケート調査会社の調査方法は、「No.1」という表記を獲得するために、実際に商品や役務を利用したことがない消費者も含めて、どの商品や役務が一番良いと思うか、という広告の印象についての調査になっていたケースがほとんどでした。消費者からみれば、実際に商品や役務を利用した人が他社の商品や役務として使用比較して、一番良いと思ったアンケート結果を集計しているものと思うはずですから、そのような調査結果を広告に掲載することは消費者を誤認させるものであって調査方法としては不適切であると言わざるを得ません。
このようにアンケート調査会社の調査方法には問題があることは多く知られているところでもあります。現実的に考えても、アンケート調査会社が実際に商品と役務を比較対象となる他社数社のものも利用させてアンケートをとるということはかなりの時間とコストがかかってしまうので、実際に利用したかどうかを問わずにアンケート調査を実施するほかなったのではないかと思われます。
そうしますと、エクスコムグローバル社が相当の注意を払っていたと言えるためには、アンケート調査会社が調査対象を虚偽の報告をしていたなどかなり限定的でない限り、エクスコムグローバル社が相当の注意を払ったと認定されることは難しいのではないかと思われます。単に適法かどうかだけを確認していただけでは、その責任を免れることは難しいのではないかと思われます。
「顧客満足度No.1」などの「No.1」という広告を出すこと自体、優良誤認になる可能性が必然的に高くなるので注意が必要かと思います。今後、「No.1」表記を出すのであれば、少なくとも以下の点は注意する必要があると思います。つまり、どのような顧客層からの満足度なのか、またアンケートの取り方では操作が可能かもしれませんので、どのようなアンケート調査を行ったのか(無作為のアンケートなのか)等が分かるような記載にしておく必要もあるだろうと思います。そもそも、顧客満足度については、スタッフの対応なのか商品の品質性能なのかいずれに満足しているのか分からないまま満足度にチェックを入れている可能性もありますし、ヘビーユーザーにだけアンケートをお願いすれば満足度は自動的に高まることとなります。そのため、「実際に商品を購入されたお客様から無作為にアンケートを行った結果となります。」などの注釈が入れられるようにしておくような調査にする必要はあると思います。なお、今回のエクスコムグローバル社の「No.1」表記の箇所にはこのような調査方法などの注釈記載がありませんでした。逆に言えば、このような注釈の表示ができないような記載は本来的には控えるべきではないかと思われます。
