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【宿泊・ホテル業】「トコジラミがいた」「食中毒になった」等の致命的な営業妨害クチコミへの法的措置

Contents

1. 宿泊業が直面する「トコジラミ」「食中毒」クチコミの特殊なリスク ― 許認可事業ゆえの影響

(1)旅館業法と食品衛生法による2つの監督

インターネット上における宿泊施設の衛生に関するクチコミは、評判だけの問題では終わりません。行政の調査や処分につながるおそれがある点で、他の業種より影響が大きくなります。

①旅館業法

旅館業は、旅館業法(昭和23年法律第138号)の許可を受けて営む事業です。営業者は、換気、採光、照明、防湿、清潔など、宿泊客の衛生に必要な措置を講じなければなりません。都道府県知事などは、営業者に報告を求めたり、立入検査をしたりできます。違反があれば、許可の取消しや、1年以内の営業停止を命じることもできます。

②食品衛生法

食事を出す施設は、食品衛生法(昭和22年法律第233号)の規制も受けます。食中毒患者を診断した医師は、すぐに最寄りの保健所長へ届け出なければなりません。届出を受けた保健所長は調査を行い、違反があった場合には、都道府県知事が営業の禁止や停止などを命じることがあります。

 

(2)トコジラミは行政も注意を呼びかけている

厚生労働省は、2023年12月22日付の事務連絡「旅館業の施設等におけるトコジラミ対策に関する周知徹底について」を都道府県などに出し、旅館業者への周知を依頼しました。あわせて「旅館・ホテルのための害虫対策の手引書」も公表しています。そのため、クチコミを見たサイト利用者が保健所に相談した場合、宿泊施設に確認の連絡が来て対応が必要になることは十分に考えられます。

 

(3)予約サイトのクチコミは予約の判断に直結する

楽天トラベルなど宿泊予約サイトやGoogleマップなど地図アプリのクチコミは、宿泊を検討している人が予約の直前に読みます。衛生に問題がある旨のクチコミがあった場合、それだけでその宿泊施設が候補から外される理由になりやすく、クチコミが削除されない限りその影響は長く残ります。

 

2.クチコミを見つけたときの初動対応 ― 事実確認・証拠保全・保健所への備え

(1)証拠の保全

「トコジラミがいた」「食中毒になった」等の致命的な営業妨害クチコミを見つけた際、宿泊施設としてはすぐにでも反論や削除の申請をしたいところですが、その前に①証拠の保全、②宿泊施設内での事実確認、③保健所からの問い合わせへの備え、の3つを並行して進めることが初動対応として重要です。

まず、投稿日時、投稿者の表示名、本文、評価、添付された写真を、URLと閲覧日時が写る形でスクリーンショットやPDFに保存します。

インターネットの投稿は後から編集されたり削除されたりすることがあります。そのため、保存しておかないと、後の手続で投稿の内容を証明できなくなるので、証拠の保全はとても重要です。

 

(2)宿泊施設内での事実確認

宿泊施設内において指摘された宿泊日と客室を特定し、その時期の清掃・点検の記録を確認します。

①トコジラミのクチコミの場合

該当する客室と周辺の客室を点検します。

必要に応じて駆除業者に調査を依頼し、その結果を書面で受け取ります。

②食中毒のクチコミの場合

指摘された日の献立、仕入れの記録、調理・温度管理の記録、スタッフの健康状態、同じ日にほかの宿泊客から体調不良の申出がなかったかについて記録を確認します。

食品衛生法により営業者は原則としてHACCPに沿った衛生管理が求められていますが、その実施記録が重要な資料となります。

なお、宿泊施設としては予約情報から投稿者を推測して直接連絡したくなるかと思います。しかし、個人情報の利用目的との関係やトラブルの拡大のリスクを考えると、その前に弁護士に相談して今後の方針を定め、それに沿って対応していくことをおすすめします。

 

(3)保健所からの問い合わせへの備え

宿泊施設内で確認した事実と記録を時系列にまとめて、保健所からの問い合わせに備えます。

食中毒の場合、医師の届出をきっかけに、保健所の調査がすでに始まっていることもありますが、調査には協力するのが基本です。

保健所が食中毒と判断しなかったことは、宿泊施設側にとって有利な事実となります。ただし、それだけでクチコミがすべて虚偽だと言えるわけではないことに注意が必要です。

 

3.営業妨害クチコミに対して取り得る法的措置 ― 削除請求・発信者情報開示請求・損害賠償請求

一般的には、①インターネットサイトへの削除申請、②発信者情報開示請求、③損害賠償請求の順に検討します。

どこまで進むかは、クチコミ内容が虚偽であることをどこまで示せるかと、かかる時間や費用に見合うかで判断します。

 

(1)削除請求

インターネット上の虚偽の書き込みは、消さない限り被害が広がりかねません。そのため、速やかに削除を求めることが重要です。

投稿されたクチコミを削除できるのは、投稿者本人かサイト管理者に限られます。したがって、削除請求は、削除権限を持つサイト管理者(Google、楽天など)に対して行います。方法は大きく分けて2つあります。

1つ目は、任意の削除請求です。

サイトの専用フォームなどを使い、書き込みが名誉毀損などの権利侵害に当たることや、ガイドライン・利用規約に違反することを伝えて、削除を求めます。

宿泊施設のクチコミの多くは、各サイト運営者のガイドラインや規約に沿った任意の対応に任されています。

2つ目は、削除の仮処分です。

サイト管理者が任意の削除に応じない場合には、裁判所に削除の仮処分を申し立てることを検討します。

仮処分が認められるには、名誉権などの権利が侵害されていること(被保全権利)と、正式な裁判の結論を待っていては損害が拡大すること(保全の必要性)を示す必要があります。この場合、名誉毀損等にあたるかの検討が重要になります。

たとえば「客室にトコジラミがいた」という書き込みは、具体的な事実を示すもので、宿泊施設の社会的な評価を下げます。

ただし裁判所(判例)は、①公共の利害に関する事実であること、②もっぱら公益を図る目的であること、③内容が真実だと証明されたこと、の条件をすべて満たす場合、違法性がないとしています。また、真実だと証明されなくても、投稿者に真実と信じる相当の理由があれば、故意や過失がないとしています。

宿泊施設の衛生や安全は、サイト利用者にとって公共性のある情報と評価されやすいです。また、「不潔だと感じた」「二度と泊まらない」といった表現は、意見や論評として扱われます。そのため、前提となる事実の重要な部分が真実で、人身攻撃に及ぶなど論評の範囲を超えていなければ、違法とはされにくく不法行為は成立しません。結局は「真実かどうか」が争点になります。弁護士に相談した場合は、どの箇所をどの法的根拠で削除を求めるか、仮処分を申し立てるにあたって真実を裏づける記録が足りているか等を弁護士が法的観点から一緒に検討いたします。

なお、弁護士以外の者が報酬を得て削除請求を代行することは、弁護士法第72条で禁止されています(非弁行為)。「削除代行」をうたう業者にご注意ください。

 

(2)発信者情報開示請求

インターネットサイトでの投稿者の多くは匿名ですが、たとえ匿名の書き込みであっても、投稿者がどこの誰であるか特定できる場合があります。特定には、情報流通プラットフォーム対処法に基づく「発信者情報開示請求」を利用します。

開示が認められるには、主に、権利侵害が明らかであることと、損害賠償請求などのために開示を受ける正当な理由があることの2つの要件が必要です。

名誉毀損を理由とする場合、「権利侵害が明らか」といえるためには、書き込みが真実でないことなど、違法性を否定する事情がないことを、請求する宿泊施設の側で証拠により示す必要があります。

従来は、サイト管理者と接続プロバイダに対して2段階で手続を行うのが一般的でした。2022年10月施行の法改正で「発信者情報開示命令」の手続が新設され、事案によっては一体的に進められるようになりました。

ただし、アクセスログの保存期間は一般に数か月程度とされ短く、期間が過ぎると投稿者の特定は事実上不可能になります。したがって、開示の見込み、使うべき手続、証拠が足りているかについて、早い段階で弁護士にご相談されることを推奨いたします。

 

(3)損害賠償請求

投稿者を特定できたら、民法第709条と第710条にもとづく損害賠償を請求できます。

民法第723条にもとづいて、名誉を回復するための措置として謝罪広告を求めることもできます。

ただし、予約の減少やキャンセルが「そのクチコミのせいだ」と立証するのは簡単ではありません。請求できる金額の見込みは、慎重に見積もる必要があります。この点につきましても弁護士がご相談に応じますので、お気軽にお問い合わせください。

 

4.クチコミが一部「事実」だった場合の注意点と、宿泊客・予約サイトへの説明対応

「トコジラミがいた」「食中毒になった」等の致命的な営業妨害クチコミであっても、クチコミの一部が事実であれば、クチコミ全体を削除させるのは難しくなります。

法的措置を急ぐと、かえって施設の評判を下げるおそれもあります。まずは事実の部分に対応し、事実と違う部分だけを切り分けて検討するべきと考えます。

(1)削除や開示が認められにくくなる理由

先に説明した判断基準のとおり、内容の重要な部分が真実であれば、違法とはされにくくなります。

それでも、たとえば「1室で1匹見つかった」のが事実なのに、「館内中にトコジラミがいる」と書かれている場合は、誇張された部分について争う余地があります。

どこまでが事実で、どこからが事実でないかを、記録をもとに線引きすることが出発点であるといえます。

 

(2)宿泊客への対応

被害を受けた宿泊客には、謝罪とあわせて事後の取扱いについて具体的に案内します。

返金や補償を申し出るときは、法的な責任を認める趣旨かどうかを意識して記載することが大切です。

後の交渉への影響を考えて、文案は慎重に作成します。当事務所では、宿泊客との交渉とセットで文書作成もサポートしております。

 

(3)予約サイト上の返信と、予約済みのお客様への説明

予約サイト等における公開の返信には、宿泊施設側で確認した事実と、取った対策(駆除や点検の実施、衛生管理の見直しなど)を簡潔に書きます。

投稿者の宿泊日や客室など、個人を特定できる情報は書かないようにします。また、感情的な反論は、読んだ人の印象を悪くするだけですので書かないようにします。

さらに、予約済みのお客様から問い合わせがあった場合に備えて、説明の文面を用意しておきます。特に食中毒のケースでは、保健所の指示や調査結果と食い違わないよう注意が必要です。

広報の基本は、確認した事実は認め、誤りだけを具体的に訂正し、改善策を明らかにすることです。当事務所では、公開の返信文や予約済みのお客様向け文書の作成もサポートいたしますので、お気軽にお問合せください。

 

5.再発防止のための体制づくり ― 衛生管理の記録・クレーム対応フロー・弁護士に相談するタイミング

「トコジラミがいた」「食中毒になった」等のインターネット上のクチコミへの対応がうまくいくかどうかは、クチコミが書かれる前に、宿泊施設がどのような記録と手順を用意できていたかで決まります。

(1)衛生管理を記録に残す

客室の清掃・点検の記録、駆除業者による定期点検と駆除の記録、HACCPに沿った衛生管理の記録などを日常的に残してスムーズに取り出せる状態にしておきます。

厚生労働省の「旅館業における衛生等管理要領」は、ねずみや衛生害虫の発生源が見つかった場合は、ただちに必要な措置をとるよう求めています。措置をとったこと自体を記録に残しておくことが、後で施設を守る材料になります。

 

(2)クレーム対応の流れを決める

宿泊施設において、たとえば「現場でのクレーム受付→責任者への報告→記録→顧問弁護士に報告・相談→対応方針の決定→回答」といった一連のクレーム対応フローをあらかじめ決めておきます。

チェックアウト前に宿泊客の申出を受け止めて対応できれば、クチコミとしてインターネット上に公開される前に解決できることもあります。

 

(3)弁護士に相談するタイミング

宿泊施設にとって弁護士への相談が特に役立つのは、①クチコミを見つけた直後(何を保全し、どの手段を選ぶか)、②保健所から連絡があったとき、③公開の返信や返金・補償の文案をつくるとき、のタイミングかと思います。

ただ、弁護士の活用の仕方で本当に差が出るのは、問題が起きる前のタイミングです。

たとえば弁護士との月1回の打ち合わせで最近のクレームやクチコミを一緒に確認して、記録の様式・対応マニュアル・宿泊約款を見直したり、日常的に疑問点や不安に思う事項を弁護士に報告・相談したりしておくことで、いざというときに「記録がない」「誰が判断するのか決まっていない」という事態を防ぎやすくなります。

 

6.「トコジラミ」「食中毒」等の営業妨害クチコミでお悩みの宿泊施設の方は弁護士法人森大輔法律事務所にご相談ください

(1)宿泊施設に必要なのは「冷静な法的判断の軸」

「トコジラミ」「食中毒」等のクチコミは、虚偽であっても放置すれば、予約の減少、世間からの信頼低下、スタッフの意欲低下や離職、行政や報道への波及など、現実の損害につながりかねません。

一方で、感情的な全面否定、安易な事後対応は、トラブルを拡大するおそれがあります。宿泊施設には、冷静かつ戦略的に動くための「法的な判断の軸」が欠かせません。

 

(2)弁護士に相談すべき3つの理由

①初動の誤りが最大のリスクだから

クチコミを見つけた直後の対応が、その後の展開を大きく左右します。弁護士が初動から関わることで、証拠の取りこぼしや不用意な対応といった後悔しても取り返せないミスを防ぎやすくなります。

②法的見極めが必要だから

法的措置には、とるべき場合と、とるべきでない場合があります。たとえば、クチコミの一部が事実に基づく場合には、訴訟がかえって逆効果になることがあります。訴訟に進むと公開の法廷で審理され、書き込みの内容がかえって注目されることもあるからです。弁護士は、事案ごとにリスクを見極めたうえで適切と思われる対応をご提案いたします。

③対外的な説明に法的な裏付けができるから

クチコミを目にした見込み客は、宿泊施設からの公開の返信文での説明などを厳しい目で見るものです。説明内容に弁護士による事前の法的チェックが入ることで、不用意な表現による新たなトラブルを防ぎやすくなります。万一、裁判や行政の調査に発展した場合にも、初動から一貫した対応をとることができます。

(3)顧問弁護士をおすすめする理由

虚偽のクチコミの対応は、法律・広報・組織運営が複雑に絡み合う問題です。トラブルが起きてからあわてて弁護士を探すより、普段から宿泊施設の実情を知る顧問弁護士がいる方がスムーズに対応できます。日頃から気軽に相談できる弁護士がいることによって、クチコミ1件への対応も落ち着いて判断しやすくなります。

顧問弁護士がいれば、平常時には、クチコミの監視、クレーム対応フローの整備、危機対応マニュアルの作成、スタッフ向けハラスメント研修などを一緒に進めることができます。問題が起きたときには、証拠保全と内部調査の支援、公開の返信文の作成、クチコミ削除請求、クチコミ投稿者の特定、被害を受けた宿泊客への補償交渉まで、初動からスピーディーに対応できます。さらに、日常的な記録の残し方、カスタマーハラスメントへの対応といった日々のお悩みについても、その都度お気軽にご相談いただけます。

顧問弁護士との契約は、宿泊施設にとって有効なリスク対策の一つといえます。

 

(4)弁護士法人森大輔法律事務所の特長

弁護士法人森大輔法律事務所は、2015年に事業者・法人側の企業法務を中心とする法律事務所としてスタートしました。業種も規模もさまざまな100社以上の顧問先をサポートしてきた経験から、法律の枠を超えた「経営を守る生きた知恵」をご提供しています。

ネット上の虚偽クチコミやハラスメントから宿泊施設事業者様の経営を守りたいという思いからネット問題やハラスメント対策に力を入れて取り組むと共に、日常的なご相談に継続してお応えしております。

クチコミへの対応方針を一緒に考えるにとどまらず、返信文の確認、衛生管理の記録様式やクレーム対応フローの作成など、実務の作業にも弁護士が自ら手を動かしてサポートいたします。

弁護士法人森大輔法律事務所では、女性弁護士を含むチームで対応しますので、女性スタッフや女性のお客様からの聴き取り等にも配慮いたします。オンライン会議(Zoom)を活用して全国どこでも対応できるほか、事務所で対面でお会いし、資料を一緒に見ながらのご相談も歓迎しています。当事務所は東京・東銀座(歌舞伎座の向かい)にあり、東京メトロ日比谷線・都営浅草線「東銀座駅」6番出口に直結しています。

 

(5)こんな宿泊施設事業者様は、まずご相談ください

・GoogleマップのクチコミやSNSの虚偽書き込みへの対応に悩んでいる

・お客様への説明や公表の返信文の文面に不安がある

・クレームを受けたときの対応フローを整えたい

このようなお悩みをお持ちの宿泊施設事業者様は、まずはお気軽にご相談ください。

・幅広い法務・労務の相談にスピーディーかつ親身に対応できる顧問弁護士をお探しの方

・就業規則・ガイドライン・契約書・広告・商標などのチェックやスタッフ向けセミナーも弁護士に気軽に頼みたい方

このような方からのご相談もお待ちしております。

ご相談のお申し込みは弁護士法人森大輔法律事務所のホームページで24時間いつでも受け付けております。

インターネット問題や企業法務に詳しい弁護士が喜んで対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

【ご相談はこちら】

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森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

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