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大幸薬品に対する措置命令について

 2022年1月20日に、消費者庁は、大幸製品に対し、同社の「クレベリン」4商品の広告表示に根拠がないとして、措置命令を行いました。

 これは、同社の4商品のパッケージや自社サイトで「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」等と表示し、あたかも4商品を使用すれば、4商品から発生する二酸化塩素の作用により、身の回りの空間に浮遊するウイルス又は菌が除去又は除菌される効果が得られるかのように表示していました。

 しかしながら、消費者庁から同社に対し、上記表示の根拠となる資料の提出を求めましたが、提出された資料はいずれも、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものではありませんでした。

 このように今回の事案では、不実証広告(優良誤認)が問題となりました。

 不実証広告として優良誤認表示とみなされるか否かは、消費者庁から当該表示の裏付けとなる合理的な根拠の提出を求められた際に、合理的な根拠を示す資料を提出することができるかがポイントとなります。そして、その提出資料が合理的な根拠を示す資料と認められるかどうかは、次の二つの要件を満たす必要があります(不実証広告ガイドライン「第3」)。

提出資料が客観的に実証された内容のものであること

表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応している

 今回の事案では、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すことができなかったことから、①提出資料が客観的に実証された内容ではなかったと判断されました。不実証広告規制で特に問題になるのは、この①の要件です。不実証広告ガイドラインによれば、①提出資料が客観的に実証された内容であるというためには、その提出資料が

a)試験・調査によって得られた結果に基づくもの

あるいは

b)専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献に基づくもの

であることが必要となります。

 ただし、商品開発前から商品の効能効果に関するb)専門家の見解や学術文献があることは稀ですので、基本的にa)試験・調査によって得られた結果が必要になってきます。

 この試験・調査の方法は、表示された商品・サービスの効果、性能に関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法により実施する必要がありますが、そのようなものが存在しない場合には、社会通念上妥当と認められる方法等で実施する必要があります。この点、消費者庁は、社会通念上妥当と認められる方法等について、「表示の内容、商品・サービスの特性、関連分野の専門家が妥当と判断するか否か等を総合的に勘案して判断する。」と指摘しており、あくまで総合考慮という抽象的な基準にとどまっています。そのため、過去の事例等を踏まえ、個別具体的に判断せざるを得ない点に注意が必要です。

 また、近年、新型コロナウイルスの感染拡大により、ウイルス除菌グッズが流行しています。それに伴い、昨年も12月17日に二酸化塩素による空間除菌を標ぼうする商品の製造販売業者2社に対する景品表示法に基づく措置命令があり、このような空間除菌をうたう商品に対し、措置命令が多く出されています。消費者庁は、空間除菌をうたっている商品について特に注目している傾向がありますので、そのような商品を製造販売する際は注意が必要です。

 不実証広告にあたるかの判断は専門家の意見等を求める必要があるかと思いますので、お困りの際は弊所までご相談いただければ、過去の事例等を踏まえ、アドバイスさせていただきます。

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森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

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