
Contents
「退職勧奨(たいしょくかんしょう)」とは、会社が社員(従業員)に対して「自分から辞めてほしい」と促したりお願いしたりして自発的な退職意思の形成を勧める行為です。
会社が一方的にクビにする「解雇」とは異なり、退職勧奨はあくまで話し合いによる「お願い」ですので、社員に従う義務はなく辞めるつもりがなければ断ることができます。社員が同意しない限り退職の効果は生じません。
このように退職勧奨には解雇のような強力な効果がないので、法律上の禁止事項はありません。したがって、退職勧奨に関する規定が就業規則や雇用契約書にない場合でも、会社はいつでも自由に退職勧奨を行うことができます。
また、円満に辞めてもらうために、会社側から退職条件として退職金の上乗せ(加算金)や転職支援などのメリットを提示することもできます。
退職勧奨を拒否した問題社員に対して懲戒処分を行う場合、就業規則にあらかじめ懲戒事由と処分の種類が明記され周知されている必要があります。
問題社員の行動が就業規則上の懲戒処分事由に該当するかを厳密に検討します。戒告、減給、出勤停止、降格といった段階的な処分も検討し、指導や軽微な処分を重ねても改善が見られない場合に、より重い処分や最終的な解雇を選択します。
業務命令違反を理由とする懲戒処分の場合は、裁判になった際、会社から明確な業務命令が出されたのに社員が拒否したという一連の経緯についての客観的な証拠が必要です。そのため、「書面」による業務命令を出しておきます。
処分を決定する前に、問題社員に対して懲戒処分を検討していることを告げて言い分を聴く「弁明の機会」を与えます。具体的には、弁明の機会を与えたことが証拠としても残るように、会社から「弁明通知書」を交付して、いかなる問題行動について懲戒処分を検討しているかを明らかにしたうえで、弁明の機会を与え、問題社員から会社に「弁明書」を提出させます。
処分を決定した際は「懲戒処分通知書」を交付し、就業規則に定めがあれば「始末書」を提出させるとともに、社内秩序を維持するために懲戒処分を公表します。その際、公表が名誉毀損にならないよう、問題社員の氏名は伏せて客観的事実の概要のみにとどめる等の注意が必要です。詳しくは弁護士にお問い合わせください。
問題社員を解雇するには、そこに至るまでに会社が改善指導や教育訓練を重ねたという実績が必要です。退職勧奨を拒否されたことを受けて勤務態度の改善を促す場合には、段階的な指導と記録の徹底が重要になります。
指導の事実や本人の反応を記録しておくことは、将来解雇を検討する際の立証に不可欠です。それゆえ、会社からの改善指導は口頭だけでなく「警告書」や「改善指導票」などの書面で問題点・改善点を明示することによって実施します。会社からの改善指導に対して問題社員が反抗的な態度を示した場合は、「反抗的な態度を示した」という一連の経緯を記録に残します。
3~6ヶ月程度の期間を区切った改善指導を実施し、その間1~2週間に一度チェックして、達成状況を本人にフィードバックして改善を促します。
改善指導を繰り返しても改善されなかったり反抗的な態度を続ける場合には、戒告や減給などの懲戒処分をして事態の深刻さを警告します。それでも改善されない場合には解雇もやむを得ないと認められるように思います。
会社には人事権があるので、職種や地域が限定して雇用しているのでなければ、原則として本人の同意なく配置転換を命じることができます。問題社員の言動が職場の業務遂行を妨げている場合には、業務上の必要性に基づく配置転換として有効と認められやすいと思われます。
ただ、不当な動機や目的で配置転換をすることは禁止されています。退職勧奨が失敗した直後の配置転換は、辞めさせる目的(不当な動機)に基づいて行われたもので違法と裁判所に判断されるリスクがあるため注意が必要です。
会社が社員に退職を勧めること自体は何ら違法ではなく原則として自由です。
しかし、退職勧奨に応じない社員に対して何度も執拗に辞めろと迫ったり人格を否定する言葉を使ったりして無理やり辞めさせようとすることは許されません。このような行き過ぎた行為は不法行為となり、会社が損害賠償責任を負うこともあるため、注意が必要です。
裁判例において、社員が退職しない意思を明確に表明しているにもかかわらず、その後も長期間にわたり多数回、長時間の面談を繰り返したことは、違法な退職勧奨と判断されています。
面談は1回につき30分~1時間程度とし、合理的な理由なく繰り返さないようにします。退職勧奨を更に実施する場合には、新たな退職条件を提示するなどの対応を検討すべきでしょう。
退職勧奨に応じない意思を明確にした社員は、何を言っても退職勧奨に応じない可能性が高いので、法的リスクをおかしてまで深追いすることはせず、最終手段としての解雇の検討に移った方が良いと思います。
退職勧奨に応じないからといって、翻意を促すため「退職しなければ解雇する」など脅しととられる発言や懲戒解雇事由がないのに「懲戒解雇になる」と断定的に説明することは避けるべきです。
裁判所が「その事案では懲戒解雇など到底無理だ」と判断すれば、社員を騙して脅した不法行為として損害賠償の対象となる可能性もあるため注意が必要です。
退職勧奨を拒否した直後に、報復や退職誘導を目的として配置転換や出向を命じることは、権利濫用として無効であると裁判所に判断されるリスクが高いです。特に、必要性に乏しく社員に不利益が大きい配置転換や出向は、退職に追い込む目的と認定されやすいため注意が必要です。
問題社員トラブルによって職場環境が悪化していて一刻も早く改善したい会社側としては、当初、退職勧奨ではなく一方的な通知による解雇を希望されるケースも多いです。
しかし、問題社員を一方的に解雇すると、高い確率で不当解雇であると主張されて裁判トラブルに発展することも少なくありません。そうなると、長期にわたる訴訟に巻き込まれるリスクや不当解雇と認定されて高額な慰謝料や未払給料の支払(バックペイ)を負担するリスクを生じ、かえって解決に時間も費用も労力もかかってしまいます。
他方、退職勧奨には法律上決まったルールがないものの、実施方法が不適切であれば問題社員が会社に対して損害賠償の裁判を起こすリスクがあります。
退職勧奨をするかどうか決める初期の時点で弁護士に相談することによって、退職を求めることが法的に適切かを客観的に検討してもらえます。そのうえで、会社から合意による退職に向けた説得(退職勧奨)ができるよう計画的に段取りを整えてもらうことができます。
基本は社内から適切な人材を選んで退職勧奨することが望ましいですが、感情的にこじれていて当事者だけでは話し合いが難しい事案や重い懲戒処分が想定される事案においては、弁護士が退職勧奨の面談に同席することによって、問題社員の納得感を得やすくなります。
すなわち、問題社員が会社に不信感やわだかまりを有している場合でも、弁護士が面談に立ち会って、法的な根拠に基づいて第三者的な視点も踏まえた説得をすることによって、問題社員が納得して退職する可能性が高まります。
退職勧奨により問題社員と退職の合意ができても、その後の退職に向けた手続が適切でなければトラブルになるリスクがあります。問題社員との面談に関わった弁護士に「退職合意書」の作成を依頼することによって、社員とのやりとりを踏まえた実効性のある「退職合意書」にできます。
また、退職勧奨が拒否された際も、弁護士への相談によって問題社員の行動が就業規則上の懲戒処分事由に該当するかを厳密に検討できたり、解雇の前提として重要な改善指導の進め方や記録の仕方についてアドバイスを受けたりできます。
このように問題社員への対応や退職勧奨を弁護士に相談することによって、法的トラブルを回避して円滑な解決を図ることができます。
弁護士法人森大輔法律事務所は、2015年に会社・経営者側の立場に特化した企業法務メインの法律事務所としてスタートして以来、業種も規模もさまざまな100社以上にわたる顧問先のリーガル・コンサルタントとして数多くの企業事例を取り扱って参りました。法律の枠を超えた「経営を守る生きた知恵」をもご提供している事務所です。
我々は、労務トラブルから会社の経営を守りたいという想いから、問題社員の解雇、ハラスメント、労働審判、団体交渉など労務問題への対応に力を入れて取り組んでおります。
したがって、問題社員への対応はじめ、会社・経営者側の立場で適切な対策をとることができます。
・問題社員への対応に苦慮されている方
・社内で発生した労務トラブルに頭を悩ませている方
・幅広い法務・労務の相談にスピーディーで親身に対応できる顧問弁護士が必要な方
・社内マニュアル、契約書、広告、商標などのリーガルチェックや社内セミナーも気軽に頼める顧問弁護士がほしい方
弁護士法人森大輔法律事務所のホームページから24時間いつでもご相談できます。
【ご相談はこちら】
労務トラブルに詳しい経験豊富な弁護士が喜んで対応します。
女性弁護士を含むチームによる対応も可能です。
オンラインWeb会議ツール(ZOOM)を活用して、全国どこでも対応できます。
お困りのことがありましたら、どうぞお気軽にお問合せください。
※弁護士法人森大輔法律事務所は会社・経営者側専門となります。社員(従業員)側からのご相談は現在、受け付けておりません。
