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労働審判での会社側のダメージとは?企業側の弁護士が労働審判の流れについて解説

1. 労働審判とは

「労働審判」とは、個々の労働者と会社との間で生じた労働トラブル(解雇、配置転換・出向、パワハラ・セクハラ、残業代・退職金の未払いなど)を迅速・実効的に解決するための裁判所における手続のことです。
労働審判は、労働者からも会社側からも申し立てることができますが、ほとんどは労働者から申し立てられます。そのため、労働審判は、労働者が労働トラブルを速やかに解決するための制度として広く利用されております。

 

2. 労働審判が会社に与えるダメージとは

労働トラブルを解決する制度としては、労働審判のほかに労働局や労働委員会の「あっせん」があります。あっせんは参加を強制されるものではなく、また不参加の際にも会社が何らかの不利益を被ることはありません。また、あっせんでの合意内容をもとに強制執行(会社財産の差し押さえ)をされることもありません。
これに対して、「労働審判」は、 労働審判官(裁判官)の呼出しを受けたにもかかわらず正当な理由なく出頭しない場合5万円以下の過料の制裁を受ける強制力のある手続です。
会社側が答弁書を提出せず期日にも出席しない場合、申立人(労働者)の言い分どおりの審判が下されることもあります。
さらに、労働審判の審判には裁判上の和解と同じ効力があって強制執行も可能ですので、たとえば未払い残業代の支払を命じる審判が下さられたにもかかわらず従わなかった場合には、会社の預金口座が差し押さえられてしまうこともあります。
このように、会社が申し立てられた労働審判に対応しなかった場合、会社にとって大きなダメージとなります。
したがって、会社としては、労働審判の呼出しを無視することなく出席して、真摯に対応することが大切です。

 

3. 労働審判の流れとは

(1) 労働審判の基本的な流れについて

①申立て・期日指定

個々の労働者と会社の間で生じた労働トラブルが発生し、労働者から「労働審判手続申立書」が地方裁判所に提出されると、労働審判官(裁判官)から労働者および会社に対して第1回期日の指定と呼び出しがあります。

②答弁書や証拠書類の提出

これを受けて、会社側は労働審判手続申立書における労働者の主張を精査して、会社側の主張・反論を「答弁書」にまとめ、主張・反論を裏づける証拠資料を準備して、指定された期限までに裁判所へ提出します。

③調停

第1回期日では、まず、労働者による答弁書への反論や証拠調べがおこなわれて、速やかに争点と証拠が整理されます。
その後、「労働審判委員会」が間に入って調停(話し合いによる合意)による解決が試みられます。
「労働審判委員会」とは、労働審判官(裁判官1名)と労働審判員(労働関係の専門的知識を持ち、労使それぞれの立場を代表する者1名ずつ)の合計3名で構成される合議体です。
原則として3回以内の期日で審理は終結となります。労働審判委員会が提示する調停案に双方が合意するなどして話し合いがまとまった場合には、調停が成立し手続きは終了となります。この調停は、裁判上の和解と同一の効力があり強制執行が可能です。

④労働審判

調停が成立しない場合には、労働審判委員会が、当事者間の権利関係を踏まえつつ事案の実情に即した解決をするために必要な審判(労働審判)を行います。審理中に調停案が示されていたケースでは、その調停案とほぼ同じ内容の労働審判が言い渡されるケースもあります。
労使双方から2週間以内に異議の申立てがなく労働審判が確定すると、裁判上の和解と同一の効力を持ちます。

⑤異議申立てと訴訟移行

審判内容に不服がある場合、審判書が届いた日または口頭で審判の告知を受けた日から2週間以内に裁判所に対して異議の申立てができます。
適法な異議申立てがあった場合、労働審判の申立て時に訴えの提起があったものとみなされて、通常の民事訴訟へ移行します。

(2) 労働審判が訴訟に移行した場合の流れについて

通常の民事訴訟に移行した場合は、労働審判における資料や証拠が引き継がれます。
約2か月ごとに裁判期日が設けられて、会社側と労働者側が交互に書面で主張を提出します。そして当事者双方の争っている事柄(争点)がはっきりした時点で、当事者や証人を裁判所に呼んで尋問による証拠調べを実施して判決が出される、という流れになります。

 

4. 労働審判は会社側に不利なのか

労働審判は会社側にとって不利であるとはいえません。
なぜなら、まず第1に、通常の民事訴訟を担当するのが裁判官のみであるのに対し、労働審判では会社側の理解者たりうる「使用者側の立場を代表する労働審判員」が労働審判委員会のメンバーであるため、会社側の立場に理解や配慮が示されやすい制度といえるからです。
第2に、労働審判によってトラブルがスピーディーに解決されることは、会社にとっても負担が少なくて済むからです。通常の民事訴訟の場合は、約2か月ごとに回数制限なく裁判期日が設けられてトラブル解決までに必要な対応期間が長いため、時間・手間・ストレス・弁護士費用・遅延損害金などが労働審判よりも多くかかる傾向にあります。
第3に、労働審判は非公開で傍聴も原則として認められませんが、通常の民事訴訟の場合は公開法廷で誰でも傍聴ができるため、会社のトラブルが公衆の目にさらされることになってしまうからです。
したがって、会社にとっては、通常の民事訴訟の方が労働審判よりもデメリットが大きく不利であるといえます。労働審判の手続内で紛争を解決できるのであれば、その方が会社側にとってもメリットのあるケースが多いように思います。

 

5. 労働審判を申し立てられた際の、会社側の適切な対応方法とは

労働審判は、解決までのスピードが速いぶん、タイトなスケジュールで手続が進んでいきます。
まず、労働審判官(裁判官)に指定された日までの短い期間で労働者の主張を精査して、会社側の主張・反論を「答弁書」にまとめて、主張・反論を裏づける証拠資料を準備しなければなりません。
そして労働審判の期日より前に、あらかじめ、どのような解決を目指すか、どの程度までならば譲歩できるか等の方針も決めておく必要があります。
しかし、不慣れな会社の担当者が短い期間でこのような事前準備をしっかり整えることは至難の業と思われます。
したがって、会社が労働審判を申し立てられた際は、速やかに、会社側での労働審判に対応できる弁護士に相談・依頼して万全の事前準備を整えることが適切な対応方法であると思います。

 

6. 労働審判を申し立てられた際に、弁護士に相談するメリットとは

(1)期日にむけた準備がスムーズ

労働審判は、タイトなスケジュールで手続が進みます。そのため、短い期間で労働者の主張を精査して、会社側の主張・反論を「答弁書」にまとめて、裏づけとなる証拠資料を準備しなければなりません。
弁護士であれば、会社の担当者と綿密に打ち合わせをしながらスムーズに「答弁書」を作成したり、証拠資料として準備すべきものを的確に指示したりすることができます。

(2)裁判所での対応が的確

さらに、審判期日においては、労働審判官や労働審判員からの質問に対して口頭で的確かつ十分に対応し、タイミング良く会社側の主張を伝えたり裏付けとなる証拠を提出したりしなければなりません。
このような裁判所における主張や立証は、法律の専門家である弁護士が得意とすることころです。

(3)妥当な解決案

また、第1回期日から和解についての話し合いが行われるため、会社側としては、第1回期日より前に、どのような解決を目指すか、どの程度までならば譲歩できるか等の方針を決めておく必要があります。その際、弁護士のアドバイスがあれば妥当な落としどころを見極めやすいかと思います。
また、労働審判において会社が何らかの形で金銭を支払った場合、その事実が他の従業員の耳に入ると、他の従業員からも同じような労働審判を起こされたり、会社の労務管理に対する信頼が失われたりする事態を招きかねません。
弁護士であれば、話し合いの中で、調停案に「会社Yが一定の金銭を支払うのと引き換えに、従業員Xは紛争内容および解決内容について一切口外せず秘密を保持しなければならない。」旨の条項を入れる提案をしてトラブルの拡大を防いだり、労働審判の審理過程で判明した会社における労務管理の問題点を改善するアドバイスをしたりすることもできます。
したがって、労働審判の呼出状が届いたら、速やかに会社側での労働審判に対応できる弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

 

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森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

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