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生徒に対する懲戒処分

1 生徒に対する懲戒処分とは

 学校法人は教職員だけでなく、生徒に対しても懲戒処分を行うことができます。学校教育法第11条では、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。」と規定されております。そして、この懲戒には退学、停学、訓告等があります。

 従来では、生徒の授業妨害などが問題となっておりましたが、近年では生徒がSNSを使ったいじめを行ったり、薬物などの刑法事犯に抵触するような行為での懲戒が増えてきているように思われます。

 

2 懲戒処分を行うについての留意点

  • (1)停学処分

 停学処分は、義務教育との関係で、公立・私立を問わず、小学校及び中学校で行うことができません。

 しかしながら、実際、小学校及び中学校では、自宅謹慎という形で停学処分がなされることが多い状況です、

 また、停学処分とは別に、「出席停止」というものがあります。これは、下記に掲げる行為を繰り返し行うなど、素行不良であって他の児童の教育に妨げがあると認める児童がいる場合に、市町村の教育委員会がその保護者に対して小学校に出席しないよう命ずるものです。

・他の児童に傷害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為

・職員に傷害又は心身の苦痛を与える行為

・施設又は設備を損壊する行為

・授業その他の教育活動の実施を妨げる行為

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  • (2)退学処分

 退学処分は、いかなる場合でも自由に行えるわけではありません。これに関係して、バイクの乗車を禁止する校則に違反した私立高校の生徒に退学処分をしたために校則の有効性を争った修徳学園パーマ退学事件(最高裁平成8年7月18日判決)では、退学処分は、「当該生徒に改善の見込みがなく、これを学外に排除することが教育上やむを得ないと認められる場合に限って認められる」ことを示しました。そのため、退学処分にするためには、学校としては改善の機会を与え何度も改善を試みたがそれでもダメだったというときにはじめて退学を検討することになります。退学は、学生という身分をはく奪する思い処分なので、非常に限定的にしか認められておりません。

 また、退学手続きを行う場合は、手続きにも配慮する必要があります。まず、退学処分の前提となる事実行為については中立的に詳細な事実認定を行う必要があります。これは外部の弁護士などに依頼することも重要かと思います。また、事実関係を調査する際はもちろんですが、事実関係が明らかとなった後でも当該生徒へ弁明の手続きを与えることが必要となります。その際には保護者なども同席させる必要があります。当該生徒だけでは十分な弁明ができない可能性があるからです。

 このような適正手続きを経ることが重要となります。なお、保護者の方から生徒側の弁護士の同席を求められる可能性があります。弁護士の同席を認めなければならない義務はありませんので、断っても問題ありません。もし、より充実した弁明の機会を与える趣旨で弁護士の同席を認める場合は、学校側も同じように弁護士を同席させるべきかと思います。

 

 

3 生徒への懲戒処分について

  • (1)授業を妨害した生徒への懲戒

 基本的には授業を妨害した生徒へは教育的指導で改善を求めていくべきかと思います。確かに、なかなか教育的指導の効果が認められないケースもあると思いますが、そのような場合は授業妨害の行為について記録を付け、保護者にも報告の上、一緒に改善を求めていく必要があると思います。あまりにも授業妨害が酷く他の生徒へ悪影響が出てしまっているような場合は例外的に自宅学習なども提案することもあり得るかと思います。但し、自宅学習にしても放置することなく定期的に学習支援を行い、落ち着いたころでなるべく早めに学校で受け入れるべきかと思います。

 あくまでも、学校での教育的指導が重要です。但し、妨害行為が犯罪行為になるような場合は、関係機関への相談も必要になろうかと思います。

 

  • (2)薬物を使用した生徒への懲戒

 違法薬物を利用した場合、社会的影響が非常に大きいと思います。違法薬物に手を出した生徒を学校に在籍をさせたままであれば逆に学校側のコンプライアンス上の問題も出てきます。薬物事犯に対して社会の厳しい評価がある中で、それとは異なる判断をすることはそれ自体がリスクであると思われます。違法薬物に手を出した生徒については退学処分を検討すべきであると考えいます。

 

(3)SNSで他の生徒を誹謗中傷した生徒への懲戒

 現在の生徒のいじめ問題は、SNSでの誹謗中傷をする形式に様変わりしていると思われます。つまり、SNSで他の生徒を誹謗中傷することはまさに現代の「いじめ」と評価すべきものと思われます。学校側としては、生徒への懲戒処分を検討するよりも先にまずはいじめの事実調査を行い、保護者らとその情報を共有し、そのいじめの根本原因を探ることが重要です。

 単に、SNSへの投稿を削除させたりするだけでは、根本的な解決になりません。学校側もいじめの事実を調査する義務がありますし、いじめの事実を認識すればそれを解決する義務を負います。単に、注意をするだけで済ませてしまうとその後もいじめが継続した場合、学校の責任問題も生じ得てきます。そのため、SNSへの投稿をする方法でいじめが発覚した場合は、調査を行い教育的指導でいじめを解決することを真っ先に考えるべきです。

 なお、いじめの事実調査については外部の弁護士を入れることが重要かと思います。この事実調査そのものがずさんであれば、いじめを解決できずに被害が拡大していきますし、そうなれば学校の責任も問われかねないからです。

 

 4 まとめ

 生徒への懲戒処分の中には停学処分や退学処分がありますが、これらの懲戒権を発動するのは極めて例外的な場合に限られるのではないかと思います。そのような懲戒権の発動をするかどうかにあたって一番重要なのは詳細な事実認定です。学校が行った調査などに問題がないかどうかなど是非弁護士に相談をしていただきたいと思います。調査には中立性も必要ですので外部の弁護士も調査に加えて実施することが重要ではないかと思います。

 

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森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

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