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薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)66条は、医薬品の広告が虚偽誇大広告になることを禁止しています。
これを受けて、厚生労働省の「医薬品等適正広告基準」は、医薬品広告の適正を図るため遵守すべきことを定めています。
この基準が対象となる広告は、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、ウェブサイトおよびSNSなどのすべての媒体です。
したがって、どのような媒体に掲載する広告であっても、「医薬品等適正広告基準」を遵守して表現をつくっていく必要があります。
ここでは「医薬品等適正広告基準」に沿った表現・NG表現について解説します。
ただ、広告が消費者に与える効果は、その表現、内容それ自体だけでなく、利用される媒体の性質、広告表現全体の構成や説明の文脈、さらには世相によっても異なります。
したがって、ある医薬品の広告が誇大広告にあたるかどうかは、「医薬品等適正広告基準」の解説及び留意事項等に記載されている事例や文面のみから形式的に判断されるわけではなくて、各種の要素を総合的に考慮して判断されます。
つまり、最終的には全体を俯瞰して誇大広告としてNGかを判断されることになります。
医薬品等については、名称に関して虚偽誇大な広告が禁止されています。
基本的には、承認を受けた名称をそのまま正確に記載する必要があります。
もし、名称について自由に広告できると他の製品と混同が起こるおそれがあり、また、名称によって効能効果に誤認が及ぶ可能性もあるからです。
ただし、一般用医薬品では、ブランド名など承認された販売名の一部(略称)を使用することが可能です。
また、承認を受けた名称の漢字に、ふりがな、アルファベットを併記することは可能です。
医薬品等の製造方法について、実際の製造方法と異なる表現、優秀性について事実に反する認識を得させるおそれのある表現はNGです。
最大級の表現、最大級の表現に類する表現は、優秀性について事実に反して誇大に誤認させる恐れがあるので認められません。
※NG具体例
・「最高の技術」「最先端の製造方法」
・「近代科学の粋を集めた製造方法」「理想的な製造方法」「家伝の秘法により作られた・・・」
他社の製品等の比較については、誤認を与えない限りOKです。
ただし、たとえ事実であっても他社の製品を誹謗するような広告になるとNGなので、注意が必要です。「時代遅れの手法」などの表現は他社製品を誹謗することになる可能性がありますので注意が必要です。
広告において「特許取得」などの文字を記載することは、それが真実でない場合は当然に虚偽・誇大な広告となりNGです。
また、特許を取得していることが真実であっても「医薬関係者等の推せん」に該当するため不適当と判断されています。
なお、特許権の侵害防止目的で表示したい場合には、
①「方法特許」または「製法特許」の文字
②特許番号
③特許発明にかかる事項
を併記して正確に表示することは差し支えないとされています。
したがって、特許について表示したい場合は、広告と明確に分離し、上の3つを併記して正確に表示するよう注意してください。
承認を要する医薬品等は、承認を受けた効能効果の範囲での広告しか認められません。
薬理学的に作用が認められないものはもちろん、たとえ薬理学的に作用が認められるものであっても承認を得ていないものは、未承認の効能効果についての広告表現になるのでNGです。
また、2次的、3次的な効果の表現もNGです。
承認された効能効果に一定の条件、いわゆる「しばり表現」が付されている場合、「しばり表現」を省略することができないのが原則です。
例えば、承認された効果が「日焼けによるシミ、そばかすを防ぐ」の場合、「日焼けによる」を省略して単に「シミ、そばかすを防ぐ」とのみ表現することはNGです。
承認された効果に一定の条件があるにもかかわらず「しばり表現」を省略してしまうと、承認された以上に広く効果があると消費者を誤認させるおそれがあるからです。
医薬品の効能効果や安全性について、それが確実である保証をするような表現はNGです。
企業の創業●年や販売●年という表現はOKですが、これと安全性や有効性を結びつける表現はNGです。
※NG具体例
・「体の悩みを解決、解消」「必ず現れる効果」「すべての痛みを解消」「副作用が一切ない」
・「長期服用でも安心」「副作用がないので安心」「アトピー性皮膚炎や敏感肌の方も安心」
・「□□(商品名)は●●年。この歴史が効果を証明しています。」
・「販売実績●●年に裏付けられた安全性」
効能効果や安全性について、最大級の表現やこれに類する表現(「強力」など)はNGです。
薬機法66条が効能効果について虚偽又は誇大な記事を禁止していますが、最大級や「強力」などは比べる対象が明確ではなく、消費者の誤解を招く可能性もあることから規制されています。
※NG具体例
・「最高のききめ」「無類のききめ」「肝臓薬の王様」「胃腸薬のエース」
・「世界一を誇る〇〇KKの□□」「強力な効き目」「比類なき安心」「絶対安全」
お客様の使用経験や体験談は、客観的な裏付けがない場合、効能効果や安全性に誤解を与えるため、原則として使用はNGです。
単に「わたしも使っています」の表現であっても、その使用によって安全とか効能効果に誤解を与える可能性があるため、使用は認められていません。
ただし、以下の2つについては、過度な表現や保証的な表現にならないことを前提に認められています。
①タレントが単に製品の説明や呈示を行う場合
②目薬、外皮用剤の広告で使用感を説明する場合
ただし、使用感のみを強調する広告は消費者に当該製品の使用目的を誤らせるおそれがあるためNG
※具体例
・OK「さっぱりとした使い心地で使用後もべたつきません。」
・NG 目薬で爽快感を強調する広告
平成29年に医薬品等適正広告基準が改正されて以降、使用前後の比較写真は、事実であることを前提に、
①承認外の効能効果を想起させないもの
②効果発現までの時間・効果持続時間の保証とならないもの
③安全性の保証表現とならないもの
はOKとなりました。
平成29年の改正で、テレビ広告やウェブサイトで用いる、画面中の模式図、アニメーション等については、炎症が消える場面の表現が、効能効果の保証的表現とならない範囲でOKとなりました。
ただし、承認された効能効果を超える表現はNGなので注意が必要です。
医薬品が身体に浸透する場面を模型、アニメーション等で表現することも、効能効果または安全性に関する虚偽・誇大な表現にならなければOKです。
ただし、浸透についての即効性について誤解を与えないような注意が必要です。
また、作用機序の説明も可能ですが、効能効果または安全性の保証的表現にならないよう注意が必要です。
広告に「新発売」「新しい」など使用OKですが、製品発売後12ヶ月間までが目安となっているので注意が必要です。
ここまで医薬品の誇大広告にならないための表現について説明してまいりました。
実際には、他にも注意すべき点が色々ございます。
たとえば、「医薬品等適正広告基準」には医薬品の即効性や持続性の表現、用法容量の表現等についても規定があります。
また、「頭痛」「咽頭痛」など複数の効能効果の承認を受けている医薬品の広告表現や、テレビ・ラジオにおける効能効果のしばり表現についても、別の規定があります。
さらに、スイッチOTC(医療用医薬品から転用された医薬品)の広告表現に特有のガイドラインや、医療用医薬品特有の広告規制などもあります。
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