建設業や解体業の現場では、重機や大きな資材を取り扱うため、事故や労災のリスクが常に存在します。
もし事故が発生してしまった場合は、事業者としてはどのように対応すべきでしょうか?
スピーディに、かつ、後日のトラブルにも備えた的確な対応を行うことが重要です。
Contents
状況によっては119番(救急)通報します。
労災指定病院であれば労災保険から治療費が補填されるため、負傷者は支払わなくて大丈夫です。
労災では健康保険証が使えないので10割負担となることに要注意!
重大な労災であれば、速やかに労働基準監督署に連絡して指示を受けます。
状況によっては110番(警察)通報します。
会社側で取得した記録によって、事故状況(いつ、どこで、誰が、どのように、なぜ)を後から検証できるように事実を確認して、証拠を収集します。
これは、後日、労災保険の申請や「労働者死傷病報告書」等の書類を作成するとき、さらには示談交渉や労災裁判になったとき会社側の主張を裏づけるためにも活用できるよう、事故直後の時点で正確な記録(証拠)を豊富に収集しておくことが重要です。
具体的には
・事故が発生した現場を、様々な角度から写真や動画でたくさん撮影します。
・目撃者にインタビューし、事故発生時の状況証言を動画撮影や録音します。
・事故直後における負傷者の怪我の状態や程度についても、写真や動画で記録を残します。
事故発生直後に録音・撮影した目撃者のインタビューを確認・精査します。
さらに必要に応じて、目撃者、従業員、現場責任者、関係者などから聞き取り調査を行い、事故の原因を特定します。
事故の直接的な原因だけでなく、労働環境や人間関係など間接的な原因にも広く意識を向けることが大切です。
事故発生直後に撮影された写真や動画を確認・精査します。
さらに必要に応じて、現場検証を行い、事故状況を詳細に把握します。
安全書類、作業計画書、日報など関連書類・記録を精査し、事故原因の究明に役立てます。
これらの法令に違反していないか、現場の安全管理体制に問題がなかったかを調査します。
建設業や解体業の現場では、元請け業者、下請け業者、現場監督など、複数の関係者が関与していることも多々あります。
それぞれの関係者に過失や安全配慮義務違反がなかったかを検討して、責任の所在を明らかにします。
労働基準監督署に事故発生を報告し、必要に応じて調査を受けます。
会社は、労災によって労働者が負傷、窒息又は急性中毒により死亡又は休業した場合には、遅滞なく「労働者死傷病報告書」を管轄する監督署長に提出する必要があります。
監督署からの是正勧告や行政処分が出された場合、その内容を理解し、必要な対策を講じる必要があります。
労働災害を発生させてしまった場合、原因を分析し、再発防止策を策定して実施することが重要です。
そのため、監督署から「労働災害再発防止書」の作成・提出を求められることがあります。
会社としては、監督署からの依頼の有無にかかわらず、厚生労働省HPに掲載されている「労働災害再発防止書」の様式を活用して、事故原因の分析をし、今後のために再発防止策を策定して、定期的に見直すとよいでしょう。
まずは、被災者に対して必要な医療措置を受けられるようにします。
被災された労働者が適切な補償を受けられるように、労災保険の申請に必要な手続をサポートします。
労災が発生した場合、会社は、労働者に対して労働基準法により補償責任を負うことになりますが、労災保険に加入している場合は、労災保険による給付が行われることになります。
労災保険の申請は、原則として被災した労働者本人や遺族が行うよう規定されています。
しかし、会社としては、単に事業主証明欄の記載だけでなく、申請に必要な諸書類の準備や手続の代行などのサポートもすることが望ましいです。
労働基準法上の補償責任とは別に、労災について不法行為・債務不履行(安全配慮義務違反)などの事由により、被災者や遺族から民法上の損害賠償請求がなされた場合、会社としては示談交渉、裁判上の主張や立証などの対応が必要になります。
会社側で取得した諸記録や、それに基づく事故原因の調査・分析結果を活用して、事実に基づいて誠実に対応することが大切です。
労災に該当しない場合、私病を対象とする健康保険や共済組合保険の対象となるので、被災労働者にとっては不利な扱いとなります。
他方、会社としては、労災に該当すると、監督署から是正勧告を受けたり、次年度から保険料が増額されたり負担が大きくなります。
そのため、業務遂行性や業務起因性に疑義がある場合、労災か否かについて、会社側と労働者側で意見が割れる場合があります。
この場合、会社側はどのように対応すべきでしょうか?
労災であるか否かの認定は、独自になされるものではありません。
被災労働者からの療養(補償)給付等の保険給付請求を前提として、労働基準監督署長が支給又は不支給の決定をする際にはじめて行われます。
会社が労災ではないと考えている場合でも、労働者が労災申請を行う権利を妨げることはできません。
労働者が労災申請を行いたい場合には、必要な書類の作成に協力すべきでしょう。
ただし、会社が労災ではないと考えている場合には、労災の申請書にその旨を一言添えることができます。
また、会社の主張を裏付ける証拠や説明資料もあわせて提出できます。
療養補償給付の申請書(様式第5号)の事業主証明欄⑲に、災害の原因及び発生状況について、たとえば以下のように付記します。
(例)「〇〇は、定められた休憩時間中に、敷地内通路において個人的に持ち込んだスケートボードに乗っていたところ、転倒し負傷しました。会社としては業務遂行性がないと考えております。詳細は、別途提出する報告書をご参照ください。 労働者の労災申請を妨げるものではございません。」
(例)「事故発生は所定労働時間外であり、〇〇が、会社の許可なく作業場に立ち入り、個人的な目的で機械を操作しようとした際に発生しました。会社としては業務遂行性がないと考えております。・・・(以下同文)・・・。」
(例)「〇〇は、ヘルメットの着用義務がある場所において、会社の再三の注意にもかかわらずヘルメットを着用せず作業を行っており、その結果、頭部に被災しました。これは、会社の安全指示に対する明確な違反行為であり、業務起因がないと考えております。・・・(以下同文)・・・。」
(例)「〇〇は、以前より持病(腰痛症)を患っていました。当日の業務内容(軽作業)から見て業務による負荷が原因で発症したとは考え難く、私病の悪化であり業務起因性がないと考えております。・・・(以下同文)・・・。」
被災労働者に対しても、会社側がなぜ労災でないと考えるかについて、会社側の証拠や説明資料を用いて説明しておく方が良いでしょう。
大きな労災事故では、労働基準監督署の監督官が労働安全衛生法違反事件として捜査します。
また、多くの労災事故は刑法の業務上過失致死傷罪(第211条前段)に該当するため、警察官も捜査します。
これらの捜査で、会社への立入調査、事情聴取、書類の押収などが行われるときは、対応が必要になります。
事故や労災には、迅速かつ的確な対応が重要です。
もし対応を誤ると、余計にトラブルが大きくなって、解決が長引いてしまうこともあります。
会社に法務担当者や顧問弁護士がいない場合、本業を維持しながら迅速かつ的確に対応していくのは、時間的にも精神的にも大変な負担となります。
このような場合は、事故や労災を法的に解決する専門家である弁護士に相談するとよいでしょう。
弁護士に依頼すれば、
・事故や労働災害発生時の初期対応に助言・支援
・労働基準監督署による事故調査に助言・立会サポート
・被災された労働者が労災保険の申請をスムーズにできるよう助言
・被災者からの損害賠償請求に対する示談交渉や裁判での主張・立証に代理人として対応
・刑事手続や行政処分への助言・立会サポート
・会社の内部調査への助言・立会サポート
・再発防止策を作成するのに必要な法的助言・支援
・安全管理体制の問題点を検証し、法令遵守した改善策をアドバイス
など
多岐にわたるオールマイティな支援を受けることができます。
これらの支援によって、事業における法的リスクを軽減できます。
弁護士は、事業者が安心して本業に専念できるよう、全面的な法的サポートを提供できます。
森大輔法律事務所は、日本各地で頑張る多くの建設・解体業者さまと顧問契約を締結して、100年続く建設・解体業の支援に力を入れております。
この10年でのべ100件以上、全国各地の建設・解体業者さまの御相談に乗り、トラブル対応、クレーム対応、建設・解体業者さまの代理人として示談交渉や裁判、工事代金の回収、顧問弁護士として労働安全関連の法律相談、請負契約書の作成・リーガルチェック等にたずさわってきました。
森大輔法律事務所は、建設・解体業者さまが安心して本業に専念するために必要な、多岐にわたるオールマイティな法的サポートを提供できます。
森大輔法律事務所のホームページから24時間いつでも相談できます。
建設・解体業の案件の経験豊富な弁護士が喜んでスピーディに対応します。
女性弁護士を含むチームによる対応、オンライン(ZOOM)による対応もできます。
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