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解体事業者が気をつけるべきクレームの対応方法|知っておくべきルールや予防策を解説

解体工事において、ある程度の騒音の発生は避けられませんが、近隣住民からクレームが寄せられることも少なくありません。解体事業者は苦情に対して配慮をしつつも、法律に基づいた正確な対応をする必要があります。

本記事では、解体事業者が気をつけるべきクレームの対応方法に関して、理解しておくべきポイントを解説します。

解体事業における騒音の基準

騒音規制法について

工事や事業活動で発生する騒音は、「騒音基準法」という法律で規制されています。解体工事の騒音はある程度は許容されますが、法規制や基準に違反していないことは確認しなければなりません。

騒音規制法の目的は、解体工事などで発生する騒音について必要な規制を行うことで、生活環境を保全して近隣住民や通行人たちの健康の保護を担保することです。具体的には、騒音と判断する大きさの基準や工事を行える時間帯、日数や曜日等の基準を遵守しなければならない旨が示されています。

基準を守らない業者には、市町村長が改善勧告等を行うことが可能です。解体工事を行う場合は、騒音規制法の基準の範囲内で工事を行う必要があります。

環境省の基準

騒音規制法には、法律違反となる具体的な数値基準までは明記されていません。実際の判断は、環境省が設定した基準に従って行われます。

一例として、音の大きさに関しては、85db(デシベル)を超える騒音を発生させてはいけないと定められています。また、工事を行える時間帯に関して、住宅地や商業地では午前7時〜午後7時までの10時間以内、工業地域では午前6時〜午後10時までの14時間以内と規制されています。さらに、6日以上連続して工事を行うことは禁止されています。

解体業者が守るべきルールは国が定めたものだけではなく、都道府県や地域で定められた基準も存在します。解体工事を行う業者は、国や自治体が定めた基準を超えないように注意して工事を進めなければなりません。

環境省|特定建設作業に伴って発生する騒音の規制に関する基準

基準値を超えた場合

上述したように、騒音には85dbという上限があります。しかし、重機を移動させるときやコンクリートを壊すときなど、この基準を超過してしまうことを避けられない場合もあります。

このような一時的な大きな騒音は許されることが多いのが実情です。作業中に一瞬でも騒音基準を超過してしまうと法律違反となるわけではありません。一時的な超過に関して毎回市町村長から改善勧告等をしていてはキリがないからです。ただし、長時間基準値を超え続ける場合は異なります。周辺住民のストレスが溜まり、クレームトラブルになる可能性が高いです。

受忍限度について

解体工事の騒音基準の判断にあたって、「受忍限度」という概念を理解する必要があります。受忍限度とは、人が一般的な社会生活を送る上で我慢できる限度を超えているかどうかを判断する基準となる考え方です。

人が社会の中で生活を営む以上は、当然他者が発する騒音にさらされます。その騒音が違法というためには、一般的に我慢できる限度を超えていると見なされる程度である必要がありますが、受忍限度に関しては具体的な数値基準があるわけではありません。事例ごとに裁判での判断に任せられるため、抽象的な基準ではあります。

しかし、受忍限度という考え方を知っていることでクレーム対応時の1つの判断材料になり得ますので、まずは把握することが重要と言えます。

解体事業でクレームが来た際の対応方法

迅速に事情説明を行う

解体工事にあたって騒音基準の確認や近隣住民への配慮をいくら実施していたとしても、クレームトラブルは起こり得るものです。クレームが発生した場合は、できる限り迅速に事情説明を行うことを心がけましょう。時間が経てば経つほど住民の方のストレスも蓄積され、騒音以外の内容に関しても追及されることになりかねません。

クレームへの丁寧な返答はもちろん、事前通知やチラシ、貼り紙を使った迅速な事情説明は必須です。また、住民の方たちの話に耳を傾ける時間を作ることも、相手側のストレス軽減に大きくつながります。最もしてはいけない対応は、クレームを受けているにも関わらず放置することです。印象の悪い対応を続けていると、近隣住民の間やネット上で悪質事業者のようなイメージがついてしまう恐れがあります。

解体工事の中断を要求された際の対応

クレームトラブルが拡大すると、解体工事の中断を要求されることがあります。しかし、近隣住民からの苦情だけで工事を中断する必要はありません。一度中断をしてしまえば、工事再開には再び住民の許可を得る必要性が生まれ、工事のスケジュールに多大な悪影響を与えることになります。

解体業者が工事を中断しなければならないのは、裁判所から工事の差し止めを通達された時のみです。通常は裁判所で工事差し止めの判決が出されるほど事態が悪化することはありません。もし工事の差し止め請求が起こったとしても、判決が出る前に工事は完了するため、近隣住民からの中断要求に必要以上の心配は不要です。

ただし、住民から中断を要求されているにも関わらず何も対応しないことは、決して好印象ではありません。防音シートを性能の高いものに変えるなど、何らかの改善策を講じている努力を見せることが重要です。

金銭による解決を求められた際の対応

クレームトラブルの悪化によって、場合によっては近隣住民から慰謝料を請求される可能性もあります。しかし、解体業者側はそのような金銭要求に応じる必要は全くありません。

金銭請求に従う必要があるのは、工事の中断同様、裁判所がそのような判決を下したときだけです。法律基準に則って工事を進めている場合、裁判所で住民からの金銭請求が認められるような事態になることはほとんどないでしょう。恐喝に近い要求をしてきた場合は、クレームをした側が罪に問われることもあります。度を越してクレームがしつこい場合は、弁護士や警察に相談することを推奨いたします。

解体事業者様のためのクレーム対応は森大輔法律事務所まで

解体事業者は国や自治体が定めた基準内で工事を進める必要がありますが、どれほど注意していてもクレームは発生し得るものです。クレームが発生した際は、迅速な対応が必要です。また、クレームを未然に防ぐために、工事前に周辺住民への挨拶を欠かさないようにしましょう。それでもなお、必要以上に事業者側が不利益を被る事態となる場合はクレーム対応に関して弁護士から専門的なアドバイスを受けることを推奨いたします。

森大輔法律事務所では、建設トラブルや民事訴訟の経験が豊富な弁護士がご相談に対応いたします。クレームの予防策だけでなく訴訟時のサポートも徹底して行いますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

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