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未払い工事代金の回収方法を弁護士が解説

(1)なぜ工事代金の未払いが生じるのか

工事代金を請求したときに、施主さんや元請などからいつまで経っても支払いがなされないというケースがあります。支払いがなされない原因は様々ですが、建物の構造が図面と違ったため追加工事が発生した、契約書がなかったため金額の算出方法について双方の認識が異なっていたなどの原因も考えられますが、圧倒的に多いのは支払能力がないため支払えないというケースではないかと思います。

そして支払能力がないケースと言っても様々な段階が考えられると思います。すなわち、他にも支払いがたまっているため解体工事費用の支払いを後回しにしているケースから、既に破産状態にまで至っておりどうにも支払いができないケースまであると思います。ただ、どのような段階であっても早期に回収に着手するということが重要になります。

 

(2)弁護士から支払い通知書を出すことにどのような意味があるのか

では、具体的にどのような方法で工事代金の回収を行っていくのかという点ですが、まずは弁護士名義で支払いを求めることが重要です。弁護士名義で支払いの通知書を郵送すると、すぐに支払ってくるケースもそこそこあります。また、なぜ支払いをしないのかの理由を明らかにしてくるケースがあります。支払いをしない理由が明らかとなれば、こちらも反論をすることができます。そして、こちら側の主張に合理性があると判断してくれれば工事代金を支払ってくれるケースもありますが、双方の言い分が平行線のままであれば、訴訟に移行せざるを得ません。ただ、このようなケースで訴訟に移行しても支払能力には問題がないのであれば回収の可能性は高いと思います。

問題は、弁護士からの通知を受領したにも関わらず、何ら反応をしないケースです。このような場合は、工事代金の金額に特に争いがないものの支払能力がないために無視せざるを得ないというケースです。ない袖は振れぬと言いますが、このようなケースが一番対応に苦慮するケースになります。

このように、弁護士からの支払いを求める通知書を出すことによって、一定の割合で支払いを行ってくるものの、仮に支払いがなされなかったとしてもどのような理由から支払がされないのかが明確となり、今後の対応方法にとって重要なヒントとなります。

 

(3)民事・商事留置権は工事代金の回収に役立つか

建設業には建築関係も含まれており、建築では建物を立てたりします。そして、建物を建て完成させたのに工事代金を支払ってくれない場合、建物について留置権(民事留置権)が発生しますので、工事代金を支払ってくれるまで建物の鍵を渡さないということも方法としては可能です。こうすることによって、建設業者に優先的に支払いをしなければならないという心理的プレッシャーを与えることが可能となります。

なお、建物の敷地まで占有できるかという議論があります。これは、商事留置権の成否という論点になりますが、商事留置権は民事留置権と異なり成立要件として牽連性が必要とされておりません(また商人同士ではないと適用がないため、事業者同士の場合に限定されます。)。そのため、建物の建築工事と牽連性がない土地にも商事留置権が成立するのかという議論があります。ただ、この点については最高裁判例がある訳でもなく、学説的にも否定説が強く主張されているようです。土地の占有を許してしまうと、土地に抵当権を設定している抵当権者を不当に害してしまうという考えもあるようです。そのため、土地までには商事留置権は成立しないと考えるべきかと思います。そうであれば土地を占有して工事代金を回収するということは難しいと思います。

他方、解体業の場合は更地にしてしまうため、建設業のような留置権という手法は期待できません。上記の商事留置権の議論からしても、解体をしてその更地を引き渡さないということも基本的にはできないと考える方がよいと思います。そのため、ケースにもよりますが、解体業の場合がより回収リスクが高いという見方もできるかと思います。

 

(4)訴訟はどのように進んでいくのか

特に請負工事代金の金額に争いがないような事案であれば、相手方は裁判に出席せずに1回で裁判が終わる可能性もあります。この場合は判決をもらった後にどのように回収していくのか、強制執行の問題になります。他方で、金額に争いがないような事案であっても相手方が裁判に出てくる可能性があります。このような場合は、支払いをする意思をもっている可能性がありますので、分割などの支払で回収できる見込みはあります。

次に、工事の範囲や内容について争いがあったりするような場合ですが、こちらは訴訟が終わるまである程度の期間がかかります。ただ、こちら側の主張が認められるような場合は、最終的には和解などで回収できる可能性が高いものと思われます。

なお、解体業や建設業の訴訟は和解によって解決するケースが多く、訴訟をすることも工事代金の回収方法の一つとして意味はあるものと思われます。

 

(5)強制執行による回収方法

訴訟をしても和解などで工事代金の回収ができなかった場合は、強制執行をしていくことになります。まずは、相手方の銀行口座を差し押さえることを検討します。銀行口座の差押えは書面での申立てだけでできますので、簡易に回収ができる方法の一つです。ただ、銀行口座がどこにあるのかが分からないケースも多く、そのような場合は弁護士照会などで調査することになります。

また、銀行口座の差押えの他に会社にある現金などを差し押さえる動産執行という方法もあります。こちらは、現金などを扱っている相手方であればそれなりに効果もあります。

さらに、不動産なども所有しているようでしたら、こちらを差し押さえることで工事代金を回収することが可能です。

 

(6)まとめ

以上のように工事代金を回収するには、いくつもの段階があり、それぞれの段階でどのような方法が適切かを見極める必要があります。また、相手方の資力が日々変化していくことも予想されますので、なるべく早めの対応が必要になってきます。工事代金の回収でトラブルが生じた場合は、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。

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森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

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