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環境省が令和7年2月21日に発表した「令和5年度騒音規制法等施行状況調査の結果について」によると、騒音に係る苦情の件数は令和5年度は19,890件。
その苦情の内訳をみると、建設・解体作業が最も多く7,466件(全体の37.5%)でした。
解体工事では、くい打機、くい抜機などの重機を使ったり、トラクターショベルを使う場面もあります。
そのため、解体工事を行う上で騒音の発生は避けることはできません。
しかし、解体工事による騒音は、少なからず近隣住民のストレスとなります。
騒音を仕方ないとあきらめて管理・抑制対策を取らないでいると、近隣住民から訴えらえて、解体工事のスケジュールに悪影響が及んでしまうこともあります。
さらに、裁判例においては、建物解体工事での騒音(境界線部分で94デシベル)が、近隣住民につき、受忍限度を超えているとして、解体業者に損害賠償が命じられた事例もあります。
では、騒音トラブルで訴えられないためには何に気をつければよいでしょうか?
解体工事ではどうしても騒音が発生しますが、騒音に対する法律上の規制として「騒音規制法」があります。
具体的には、くい打機、くい抜機などの重機を使う作業をする場合には、作業を行う7日前までに市町村長への届け出が必要となります。
そして、市町村長は、著しい騒音により周辺の生活環境が損なわれている場合、解体業者に改善勧告や命令を発することができます。
解体業者が改善命令に違反した場合には、罰則もあります。
市町村長が改善勧告・命令を出す際の基準は、環境省により定められています。
騒音の大きさは、敷地境界において85デシベルを超えないことと定められています。
90デシベルは、騒々しい工場内やカラオケ店の中央に相当し、極めてうるさい状態で、人との会話は近くでも困難とされています。
また、人がうるさいと感じるのは、騒々しい街中レベル(70デシベル)以上だといわれています。
85デシベルとは、人が極めてうるさいと感じる一歩手前のレベルといえるでしょう。
一般的な住宅地(第1号区域)で解体工事を行う場合の作業可能な時間帯は、朝7時から夜7時までです。
また、作業期間は、1日あたり10時間以内で、連続6日以内です。
そして、日曜日と休日には工事が禁止されています。
以上のことから、騒音規制法において違法となるのは、
①解体工事中の騒音が継続して85デシベルを超えている
②夜7時から朝7時までの間に作業している
③日曜日、休日に作業している
④1日10時間以上作業している
⑤連続で6日を超えて作業している
場合です。
他にも、各都道府県や市町村における条例によって、騒音の規制値が定められている場合もあります。
解体工事を実施する前には、あらかじめ役所等に問い合わせて、その地域での騒音規制の有無を確認すると良いでしょう。
解体工事では大きな音が発生する以上、どれだけ対策していても、騒音トラブルが絶対発生しないとは言い切れません。
もし、実際に騒音トラブルが発生した時には、どのように行動すればよいでしょうか。
発生してしまった騒音に対する苦情に対しては、スピーディーに誠意を見せることが大切です。
まずは相手の話を傾聴して、しっかりと受けとめたうえで、①事情を説明し、②今後の改善策を伝えましょう。
クレームの対象となった騒音が法律上問題ない場合、解体業者に対処する法的義務はありません。
解体工事を中断する必要があるのは、①市町村長から工事中断を勧告・命令されたとき、②裁判所から工事の中断を言い渡されたときです。
したがって、たとえ「訴えてやる!」と言われても、その時点で解体工事を止める義務はありませんので、解体工事の中断要求に応じる必要はありません。不当なクレームに対しては弁護士などを活用し毅然とした態度をとることが大事です。場合によっては、クレーマーが工事を止めさせようと実力行使に出るようなことがあれば、業務妨害を理由に警察に相談したり、仮処分などの制度を利用して工事の邪魔をさせないようにすることも必要です。
騒音に関して慰謝料や迷惑料の名目で金銭を要求された場合についても同じです。
クレームの対象となった騒音が法律上問題ない場合、解体業者に対処する法的義務はありません。
裁判所から慰謝料の支払いを命じられた場合でなければ、解体業者が慰謝料の支払に応じる義務はありませんので、金銭の要求にも応じなくてよいでしょう。あまりにもしつこい要求の場合は、恐喝を理由に警察に相談することも必要です。
とはいえ、騒音トラブルが発生した場合、解体業者が現場での解体工事スケジュールを維持しながら、トラブル、特にまったく根拠のない不当なクレームに自ら対処するのは至難の業で、時間的にも精神的にも大変な負担です。
しかも、そのようなクレームは、対応方法を誤ると余計にトラブルが大きくなってしまうこともあります。
このような場合は、トラブルを法的に解決する専門家である弁護士に相談するとよいでしょう。
一緒にどのタイプのクレームなのかを検討して対応方法をきめていきます。
クレーム内容が明らかに不当・過剰であるような場合には、弁護士が断固たる措置をとることもできます。
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