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M&A(事業譲渡)とは?メリットやデメリット、M&A(事業譲渡)を行う流れについて弁護士が解説

1. M&Aとは

「M&A」とは、Mergers and Acquisitions(合併・買収)の頭文字で、企業またはその事業の全部または一部の移転を伴う取引をいいます。「ある会社が他の会社を所有・支配するための行為」や「会社や事業の移転を伴う取引」を意味する言葉として、会社や事業の移転を伴う組織再編行為や取引行為の総称として使われています。
X社がY社の保有する特定の事業(A事業)を買収して事業を取得するM&Aの手法(スキーム)のひとつとして、「事業譲渡」があります。

 

2. M&A(事業譲渡)の定義とは

(1)意義

「事業譲渡」とは、会社が営む事業の全部または一部を取引行為として他に譲渡する行為のことです。資産、負債、契約、従業員などを個別に承継(特定承継)させることになります。
会社法467条1項1号・2号によって、「事業の全部の譲渡」または「事業の重要な一部の譲渡」の場合、譲渡側(Y社)では株主総会特別決議が必要になります。
株主総会特別決議という会社法上の厳格な手続が必要となる「事業譲渡」の意義について、最高裁判所で昭和40年9月22日に出された判決では、①一定の事業目的のために組織化され、②譲渡人(Y社)が営んでいた事業活動の全部または重要な一部を譲受人(X社)に受け継がせ、③譲渡人(Y社)がその譲渡の限度に応じ法律上当然に競合避止義務を負う結果を伴うものをいうと述べられています。
「事業譲渡」は、1)譲渡側(Y社)が特定の事業(A事業)のみ手放したいケース、2)譲受側(X社)の買収資金が限られるケース、3)譲受側(X社)が簿外債務を引き継ぐリスクを取りたくないケースにおいて特に効果的なM&Aのスキームであると言われています。

(2)事業譲渡の流れ

事業譲渡を行う大まかな流れは、(1)準備(2)交渉(3)実行(4)運営、となります。

(1)準備

「準備」は、相手方と交渉を開始する前に自社内で「何を」「いくらで」「どのように」譲渡または取得するのかを固める準備フェーズです。M&Aスキームとして事業譲渡の方法によるかどうかもこの段階で決めることになります。
準備フェーズにおいては、価格の決定に関する法的事項、価格の調整に関する法的事項、表明保証(内容に嘘がないことの保証)といった法的事項について意識しておくことが重要です。

(2)交渉

「交渉」は、M&Aの方向性に関する大きな枠組みを定めた「基本合意」のための交渉、および買収条件の詳細に関する「最終合意」に向けた交渉のフェーズです。
交渉フェーズにおいては、交渉開始に先立つ「秘密保持契約書」、事業譲渡の大枠を定めた「基本合意書」、譲渡側(Y社)に対して行う調査「デューデリジェンス(特に法務デューデリジェンスによるリスクの評価)」といった法的事項について意識しておくことが重要です。事業譲渡前に譲渡側(Y社)の法的リスク(未払い賃金、契約の不備、知的財産の権利関係など)を洗い出すことによって、より良い条件での事業承継が可能になりますので、弁護士によるサポートを推奨しております。「事業承継を弁護士に依頼するメリットは?サポート内容について解説」の記事においてわかりやすく解説しておりますので、ぜひご覧ください。

(3)実行

「実行」は、最終的なM&A契約「最終合意書」の締結、および履行(クロージング)のフェーズです。M&Aスキームとして事業譲渡の方法を選んだ場合、履行(クロージング)として、①機関決定、②届け出等、③既存契約の確認などを経て、④事業譲渡の効力が発生します。
①機関決定
譲受側(X社)譲渡側(Y社)それぞれが取締役会決議を行い、さらに譲渡側Y社では原則として株主総会での特別決議が必要となります。
これに対して、譲受側X社では原則として株主総会決議は必要となりませんが、事業の「全部」を譲り受ける場合には株主総会特別決議が必要となります。ただし、簡易事業譲受や略式事業譲受として、株主総会特別決議が不要になるケースもあります。
②届け出等
譲受側(X社)およびA事業の売り上げ規模によっては公正取引委員会への届け出が必要になります。また、事業譲渡の当事者(X社・Y社)が上場会社であれば適時開示への対応や財務局への臨時報告書の提出も必要になります。
③既存契約の確認
事業譲渡の譲受側(X社)譲渡側(Y社)が当事者となっている契約の中に、事業譲渡の実行を制限する条項が含まれている場合があります。
たとえば、投資契約やファイナンス契約の中に含まれるコベナンツ条項(作為・不作為の約束事項)やChange of Control条項(支配権の移動が解除事由や期限の利益喪失事由とされている条項)、労働協約の中に含まれる労働組合の事前承認条項などです。
事業譲渡に先立って、このような条項が存在していないか、仮にこのような条項がある場合のとるべき手続について確認しておくことが必要です。詳細につきましては、弁護士にお問い合わせください。
④事業譲渡の効力発生
最終的なM&A契約(事業譲渡契約)に基づき、定められた日に資産・負債の引渡しや対価の支払いを実行することによって、M&A(事業譲渡)が完了します。

(4)運営

最後に、M&A(事業譲渡)後の組織統合やシステムの統合、従業員への新体制の周知徹底などを行います。これによって、事業の継続性を確保することができます。

 

3. M&A(事業譲渡)と親族内承継・親族外承継との違いとは

「親族内承継」では経営者の子や配偶者など親族に、「親族外承継(社内承継)」では長年ともに歩んできた社内の役員や従業員に、事業とともに株式・経営権が引き継がれます。
これに対して、M&A(事業譲渡)は、会社が特定の事業のみを売却する取引であり、株式を売買するわけではないため、譲渡側(Y社)全体の経営権は移転しません。事業のみが外部の第三者(他社や個人投資家など)に売却されるのです。
そのため、M&A(事業譲渡)では、身内や社内に後継者にふさわしい経営能力と意欲を持つ適任者がいなくても、広く外部から最適な事業の引き受け手を見つけて、事業のさらなる成長を期待することができます。この点が大きな違いです。
そして、M&A(事業譲渡)においては後継者の育成についても考えなくてよいため、半年~数年と親族内承継・親族外承継(社内承継)に比べて比較的短い準備期間でも実現できます。
また、事業を市場価格で売却でき、経営者は事業の売却益(創業者利益)を現金で獲得することができます。
以上のようなM&A(事業譲渡)と親族内承継・親族外承継(社内承継)との違いゆえに、近年、特に中小企業においては、後継者が見つからないという問題を解消して事業の存続・発展を図ることのできる有効な方法としてM&A(事業譲渡)による事業承継が増えているといえるでしょう。
M&A(事業譲渡)の注意点としては、親族内承継・親族外承継(社内承継)と異なって企業文化の違いによる摩擦や従業員の不安が生じたり、買収後の統合プロセスが複雑になったりする点が挙げられます。
したがって、M&A(事業譲渡)を成功させるためには、弁護士などの専門家を交えて相性を慎重に評価して、事前のデューデリジェンスを徹底することが不可欠です。そして、従業員や取引先との信頼関係を維持するために、透明性のあるコミュニケーションと適切な情報開示が重要といえるでしょう。

 

4. M&A(事業譲渡)のメリットとは

(1)「会社分割」との比較

事業を買収して事業を取得するM&Aの手法(スキーム)として、「事業譲渡」の他に「会社分割」もあります。
「会社分割」とは、会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を、分割後ほかの会社または分割により設立する会社に包括承継させることを目的とする会社の行為を言います。
しかし、「会社分割」に関する会社法上の手続きは、会社そのものを丸ごと取得する方法である「合併」とおおむね同じで債権者保護手続なども必要になるため、「事業譲渡」の方が「会社分割」に比べてM&Aの手続自体はシンプルです。
したがって、移転対象事業の重要性が高く且つそれほど数の多くない契約によって構成されているケースでは、「事業譲渡」の方が利用しやすいというメリットがあります。

(2)「株式譲渡」との比較

また、「事業譲渡」は、資産や負債、契約、従業員などを個別に承継させる(特定承継)ので、「株式譲渡」のように譲渡側(Y社)の経営権は移転しません。
そのため、譲渡側(Y社)にとっては、必要な事業だけ(A事業)を選択的に切り出して譲渡できる点がメリットといえます。
また、譲受側(X社)にとっても、譲受対象の事業を選択できるため、投資コストをおさえたり、不要な負債やリスクを回避しやすい点がメリットといえます。ただし、選択を慎重に行わないと、事業の一貫性やシナジーを損なうリスクもあるので注意が必要です。

 

5. M&A(事業譲渡)のデメリット・注意点とは

「事業譲渡」は事業を構成する契約関係を個別に移転するため(特定承継)、個々の契約当事者の同意を要し煩雑である点がデメリットになります。
具体的には労働関係を移転するためには個々の従業員との再契約が必要になりますし、取引関係を移転するには個々の取引先との再契約が必要になります。また、許認可の承継もできないので、許認可の再取得も必要になります。
したがって、たとえば移転対象事業が重要度の高くない多数の契約(たとえば取引金額の僅少な契約)によって構成されているケースでは、むしろ包括承継の効果が生じて個々の契約当事者の同意を要することなく契約関係を移転できる「会社分割」の方が適している場合もあるように思います。
ただ、その場合でもChange of Control条項など包括承継を制限する機能を有する条項が含まれている契約がある場合には、契約当事者の同意を取得しなければならないことに注意が必要です。
そのため、いかなるM&Aの手法が良いのかについては、事案の性質や法務・経営戦略に応じた専門的判断が必要になりますので、詳しくは弁護士にご相談ください。

 

6. M&A(事業譲渡)における税制上の注意点とは

(1)譲渡側の税制上の注意点

事業譲渡の譲渡側(Y社)においては、事業譲渡財産の時価と簿価の差額が譲渡益と認識されて「法人税(約30%)」の課税対象となるので注意が必要です。
また、事業譲渡の際には譲渡する資産に対して「消費税」が課せられます。事業譲渡によって譲渡される資産は課税資産と非課税資産があり、課税資産については消費税(10%)の納税義務があります。

(2)譲受側の税制上の注意点

一方、事業譲渡の譲受側(X社)には、原則として「法人税」の課税はありません。
もっとも、上述のように消費税における課税取引となるため、譲渡対象資産のうち課税資産については「消費税(10%)」の課税対象となります。
また、譲渡対象資産に不動産が含まれる場合、不動産登記の際の「登録免許税(本則2%)」および「不動産取得税(本則4%)」も課せられます。
事業譲渡には税制適格組織再編制度による税務上の優遇措置がないため、大きな税負担が発生することに注意が必要です。

 

7. M&A(事業譲渡)を検討している経営者様は弁護士法人森大輔法律事務所へご相談を

(1) 弁護士への相談メリット

M&A(事業譲渡)を成功させる秘訣は、弁護士など専門家の協力を準備段階から得ておくことです。
弁護士は、法的リスクを管理したり、契約書を作成したり、法的なトラブルを未然に防いだりすることに貢献できます。具体的には、譲渡側(Y社)においてこれまで締結された契約書に法的リスクがないか、未払い残業代などの隠れ負債が存在しないか、これまでの株主総会に不備がないかなどを法的にチェックできるので、事業をより円滑に譲渡するための土台を整えることができます。
また、持続的な成長にとって不可欠なコンプライアンス(法令遵守)を重視した経営を共に考え、会社に浸透させることも弁護士の役割として期待されているものと考えております。
M&A(事業譲渡)はじめ事業承継についてご不明点やご不安なことがございましたら、速やかに事業承継に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。

(2)弁護士法人森大輔法律事務所への相談メリット

弁護士法人森大輔法律事務所は、2015年に企業法務メインの法律事務所としてスタート以来、業種も規模もさまざまな100社以上にわたる顧問先のリーガル・コンサルタントとして数多くの企業事例を取り扱ってまいりました。
法律の枠を超えた「経営を守る生きた知恵」をも提供し、事業承継支援サービスにも力を入れている法律事務所です。
「100年続く企業を共に創る」をパーパス(存在意義)として掲げ、法的リスクを排除し「経営」「事業の精神」をより強固な形にして次世代へ安心して託せるように、親身かつレスポンス良く貴社の事業承継をサポートしてまいります。
弁護士法人森大輔法律事務所は、経営者様の想いを汲み取って、貴社の事業が100年続くための「最良のパートナー」として共に歩み続けます。
「M&Aを含む事業承継支援サービスのご案内」について、以下の記事でわかりやすく説明しておりますので、ご参照ください。
https://moridaisukelawoffices.com/category/4163

弁護士法人森大輔法律事務所では、複数の弁護士+税理士によるチームでご依頼に対応します。事業承継の手続でも、事業承継前後の日常業務でも、複数のプロによる手厚いサポートを受けることができるので、安心です。
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森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

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