
Contents
中小企業白書(2026年版)によると、後継者が不在の経営者は60代で約36%、70代で約26%、80代で約21%、全体としては約50%にのぼります。中小企業における後継者不足は依然として深刻な状況です。
後継者に適した親族が見つからない場合や、事業のさらなる成長を外部に託したい場合、選択肢となるのが「親族外承継」です。
「親族外承継」には2つの方法があります。
ひとつは、長年共に歩んできた役員・従業員が引き継ぐ方法(社内承継)です。役員に事業を承継することをMBO(Management Buy Out)、従業員に事業を承継することをEBO(Employee Buy Out)と表現することもあります。もう一つは、第三者の企業に譲渡する「M&A(事業譲渡)」の方法です。
この記事では、役員・従業員が事業を引き継ぐ親族外承継(社内承継)について、わかりやすく解説いたします。
親から子などの親族へと受け継いでいく「親族内承継」は、昭和・平成の時代までは最も馴染みのあった関係者の理解を得やすい方法ですが、経営者の親族に経営能力のある人材がいないと選べない方法です。近年では少子化や家族構成の変化のため、親族内で適切な後継者を確保することが難しくなっています。「従業員等への親族外承継(社内承継)」は、会社内部の役員や従業員を後継者に選ぶため、親族状況の影響を受けにくい点が親族内承継と違います。
また、外部に会社を売却する「M&A(事業譲渡)」では、事業の収益性を重視することが多いので、先代経営者の経営理念や企業文化が引き継がれるとは限りません。経営方針や社内体制が大きく変わる可能性があります。これに対して「従業員等への親族外承継(社内承継)」では、先代経営者が自分の理念を否定するような従業員等に会社を譲るとは考え難いため、経営理念が承継されて経営方針や社内体制が劇的に変わることはあまりない点がM&A(事業譲渡)と違います。
このように従業員等への親族外承継(社内承継)においては、先代経営者が大切にしてきた経営理念や社内文化がそのまま受け継がれ、事業が安定して継続していくことを期待できます。
後継者が従業員等であれば、事業内容や業界事情を熟知しています。そのため、従業員等への親族外承継(社内承継)をきっかけに経営が改善されて事業が飛躍することも期待できます。
従業員等への親族外承継(社内承継)では、M&A(事業譲渡)と違って社内体制が劇的に変わる可能性は低いので、雇用がそのまま維持される可能性が高く、従業員の理解を得やすいといえます。
お客さまにとっても、商品・サービスのクオリティや価格が大きく変わってしまう心配がありません。先代経営者と変わらぬ取引条件がこれまでどおり続くと期待できるメリットがあります。
従業員等に親族外承継(社内承継)をするデメリット・注意点としては、①適切な人選、②自社株の買い取り、③個人保証の問題の3点でがあります。
従業員等への親族外承継(社内承継)においては、後継者が会社の内部や現場を熟知しているため、先代経営者からの経営理念や社内文化の継承が最もスムーズです。適切な人選を行えば、他の従業員、顧客、関係者からの納得も得やすく、先に述べたメリットを享受できます。
ただ、従業員等に親族外承継(社内承継)する場合、この適切な人選というのが一番難しいのではないかと思います。誰もが納得するような人材がいれば別ですが、そうではない場合は大きな不満が残る可能性があるので、慎重な判断が求められます。
そのため、候補者の選定、社内調整の段階から顧問弁護士などに相談しながら進めるということも重要かと思います。
従業員等に親族外承継(社内承継)する場合、先代経営者が自社株を持ったまま従業員等に経営権だけを承継して「雇われ社長」にするというケースでない限り、後継者となる従業員等は、先代経営者から自社株を買い取って経営を引き継ぐことになります。それには多額の資金が必要となるので、後継者に金銭面で負担をかけることが多い点がデメリットです。
株式譲渡(売買)によって親族外承継(社内承継)する場合、役員や従業員自身で株式の購入資金を用意しなければなりません。
後継者に株式の買取資金がない場合の主な対策として、後継者が金融機関から融資を受ける方法や、投資ファンドから出資を受けるという方法もあります。投資ファンドから出資を受ける場合は投資ファンドに一定数の株式を取得されてしまうので、果たして安定した経営が可能かという問題が生じてしまいます。貸付や出資契約など、法的に不当な条項が入っていないかなども弁護士に相談することが重要かと思います。
また、株式譲渡(売買)の際には、トラブル防止のため、インターネットなどに掲載されている株式譲渡契約のフォーマットをそのまま使うのではなく、双方が納得できて、かつ、法的に問題のない「株式譲渡契約書」を弁護士に作成してもらうことを推奨いたします。
多くの中小企業においては、経営者個人が会社の借入金の連帯保証人となっています(経営者保証)。日本独特の商習慣である「個人保証」と呼ばれるものです。もし会社が倒産して借入金の返済ができなくなった場合は、経営者個人が会社に代わって返済することを求められることになります。
後継者となる従業員等が先代経営者の経営者保証をそのまま引き継ぐ場合、借入金が多額であるケースなどでは後継者やその家族にとって心理的ハードルが高くなります。
したがって、従業員等への親族外承継(社内承継)においては、経営者保証の問題がデメリットであり、後継者となる従業員等の本人にはもちろん、家族なども含めて、十分な説明をして理解を得られるように注意を払うことが必要です。
ただ、かつては「社長交代=保証人の交代」が当たり前でしたが、現在は中小企業庁の「経営者保証に関するガイドライン」の普及によって、「後継者に保証を引き継がせない(保証人なしでの承継)」ケースも増えています。
すなわち、事業承継の際に、内部・外部からのガバナンスを強化して、①資産の所有やお金のやりとりに関して法人と経営者が明確に区分・分離されている、②財務基盤が強化されており法人のみの資産や収益力で返済が可能である、③金融機関に対し適時適切に財務情報が開示されている、という経営者保証ガイドライン3要件のすべてまたは一部を満たせば、後継者は、経営者保証なしで融資を受けられたり、すでに提供している経営者保証を見直すことができる可能性があります。
弁護士がガバナンス強化をサポートできるケースも多くありますので、詳細につきましては、弁護士にお問い合わせください。
自社株の承継について、親族外の後継者であっても「事業承継税制」を利用できます。「事業承継税制」とは、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(円滑化法)」の認定を受けた非上場会社の株式を贈与・相続により取得した場合において、その非上場株式にかかる贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている税額の納付が免除される制度です。
「事業承継税制」は、親族内承継の場合だけでなく、従業員等の親族以外の後継者が、先代経営者である株式所有者から株式を生前贈与または遺贈された場合でも活用できます。「事業承継税制」を利用できると、後継者は一定期間事業を継続することを条件に納税が猶予され、さらに一定の要件を満たすことで最終的には税金が免除されますが、先代経営者、後継者および会社が事業承継税制の適用を受けるための要件すべてを満たしている必要があることに注意が必要です。
また、一度「事業承継税制」が適用されたとしても、取消事由に該当すると納税猶予は取り消されてしまいます。取消事由は制度の適用を受けてから最初の5年間と、5年経過後で異なるので、この点にも注意が必要です。
事業承継税制の適用を受けられないケースにおいては、自社株の評価額を下げてから自社株の譲渡をすることが、税制上、重要になります。
しかし、後継者となる従業員等の資金負担を減らそうと時価より著しく低い価格で譲渡してしまうと、税務上、差額分を「贈与」として受け取ったとみなされ、従業員側に多額の贈与税が課せられるおそれがあるので注意が必要です。事前に税理士による適正な非上場株価の算定を受けることが必須といえるでしょう。
従業員等への親族外承継を成功させるためには、早めの準備が大切です。
後継者を決定してから実際に承継が完了するまでには、後継者の育成、資産承継の調整、税務対策など多くのプロセスが必要となるため、少なくとも3年、できれば5年~10年の時間をかけて計画的に余裕をもって進めると良いでしょう。
成功の秘訣は、弁護士など専門家の協力を早い準備段階から得ておくことです。
たとえば、弁護士であれば、これまで締結された契約書に法的リスクがないか、未払い残業代などの隠れ負債が存在しないか、これまでの株主総会に不備がないかなどを法的にチェックすることによって、対外的に信頼されるガバナンスへとアップグレードし、事業をより円滑に承継するための土台を整えることができます。
また、弁護士は、持続的な成長にとって不可欠なコンプライアンス(法令遵守)を重視した経営を共に考え、会社に浸透させることにも貢献することができます。
事業承継についてご不明点やご不安なことがございましたら、速やかに事業承継に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
事業承継を進める5つのステップや、事業承継を弁護士に依頼した場合の業務内容及び費用については、「事業承継を弁護士に依頼するメリットは?サポート内容について解説」の記事でわかりやすくご案内しておりますので、ぜひご覧ください。
弁護士法人森大輔法律事務所は、2015年に企業法務メインの法律事務所としてスタート以来、業種も規模もさまざまな100社以上にわたる顧問先のリーガル・コンサルタントとして数多くの企業事例を取り扱ってまいりました。
法律の枠を超えた「経営を守る生きた知恵」をも提供し、事業承継支援サービスにも力を入れている法律事務所です。
「100年続く企業を共に創る」をパーパス(存在意義)として掲げ、法的リスクを排除し「経営」「事業の精神」をより強固な形にして次世代へ安心して託せるように、親身かつレスポンス良く貴社の事業承継をサポートしてまいります。
弁護士法人森大輔法律事務所は、先代経営者様の想いを汲み取り、後継者様を支えて、貴社が100年続く企業となるための「最良のパートナー」として共に歩み続けます。
具体的な内容につきましては、「M&Aを含む事業承継支援サービスのご案内」をご覧ください。
弁護士法人森大輔法律事務所では、複数の弁護士+税理士によるチームでご依頼に対応します。事業承継の手続でも、事業承継前後の日常業務でも、複数のプロによる手厚いサポートを受けることができるので、安心です。
・事業承継でお悩みの方
・いつか事業承継したいが、何から始めるべきか困っている方
・幅広い法務・労務の相談・研修にスピーディーで親身に対応できる顧問弁護士が必要な方
・商標、契約書、広告などのリーガルチェックも気軽に頼める顧問弁護士がほしい方
弁護士法人森大輔法律事務所のホームページから24時間いつでも相談できます。
【相談はこちら】
事業承継・企業法務に詳しい弁護士が喜んでスピーディーに対応します。
女性弁護士を含むチームによる対応も可能です。
オンラインWeb会議ツール(ZOOM)を活用して、全国どこでも対応できます。
もちろん、直接オフラインでお会いしてお話を伺い、資料を一緒に見ながらのご相談も大歓迎です。
森大輔法律事務所は、東京・東銀座(歌舞伎座の向かい)にあります。
東京メトロ銀座線・東銀座駅と6番出口で直結しておりますので、アクセスが大変便利です。
お困りのことがありましたら、どうぞお気軽にお問合せください。
