一般的にお客様からのクレームには不当なクレームと、意味があるクレームがあります。意味があるクレームはこちら側に非があるケースです。このようなクレームを無視していてはお客様もどんどん離れていってしまいます。このようなクレームはよりよいサービスを提供するために必要なものであり、会社にとっては財産となります。
他方で、こちら側に全く非がないにもかかわらずクレームをつけられることがあります。この場合に対応を誤るとクレームがさらに激しくなりますし、対応している従業員も疲弊してしまい退職や治療を要するという事態にも発展しかねません。
以下では、こちら側に非がないことを前提として、事例ごとにどのように対応をすべきかについて説明したいと思います。なお、いずれのクレームに対しても必ずお名前と連絡先を確認することを忘れないようにしましょう。聞き忘れてしまうと、書面で警告したり、弁護士に依頼しようとしても、すぐに対応ができなくなってしまうので注意が必要です。
この場合は、本来であれば商品の使用方法が常識的な使い方の範囲(仮に使い方に誤りがあったとしても、そのように使用するのも仕方がないようなケース)であれば、場合によっては賠償責任の可能性もあるかもしれません。そのため、こちら側に非がないケースであったとしても、どのような使い方をされたのか、どのようなケガをされたのかしっかりと確認をする必要があります。お金目当てで本当はケガもしていないというケースもあるかもしれませんので、可能であれば診断書ももらっておくべきかと思います。診断書も提出しないようであれば、こちらとしても対応の仕様がないという対応で良いかと思われます。
また、診断書が出てきたときには、そのケガが当該商品の使用中に生じたものかどうかを検討する必要があります。例えば、レトルト食品の封を開けようとした際に指を切ったということであれば商品との関連性が認められるかと思いますが、足を痛めて歩行が困難となったというようなものについては商品との関連性が全くないだろうと思います。このような、商品との関連性がどこまであるのかを検討する必要があるだろうと思います。
その上で、今回のケガについては、上記の調査結果を踏まえたところ賠償義務や代金の返還義務はありませんと毅然とした態度で臨むことが重要かと思われます。
上記のように、本当にケガをしたのか、それが当該商品と関連性があるかどうかの調査が必要となりますが、この点については是非弁護士にご相談頂ければと思います。
この場合は、従業員の態度についてどこに問題があったのか聞き取りをしましょう。通常であれば、「こちらの方で事実確認の上、注意するようにしたいと思います。」という回答で終了するケースが多いかと思います。
しかしながら、中にはこれだけで収まらず、当該従業員本人に代わるよう要求し謝罪を求めてくる場合もあります。このような場合に当該従業員に代わって対応をさせるということは控えるべきかと思います。この場合も、「趣旨は承りました。本人にも注意を促しておきます。」という対応で十分です。それでも執拗に電話がかかってくる場合は、書面にて警告書を出すべきかと思います。内容は強要罪や業務妨害にあたる旨を指摘し、これ以上継続するようであれば警察に相談する旨の記載までして警告することも検討されるべきかと思います。
なお、クレームの対象となっている従業員に直接対応をさせることは避けるようにしましょう。会社は従業員を守らなければなりません。仮に、当該従業員に対応を丸投げしてしまうと、メンタルに不調をきたすおそれがありますし、場合によってはパワハラ認定される可能性も出てくるので注意が必要です。
また、上記のクレームは強要罪(刑法223条)等にあたる可能性がありますので、証拠保全という意味でもなるべく電話のやり取りは録音をとっておいた方が良いと思います。
この場合は、最初から代金支払いを不当に免れる目的の可能性が十分にあります。「お代は結構ですから。」というと、急に態度が穏やかになって帰っていくというケースも報告されているようです。周囲のお客様の目も気になって、ついついこのような対応をしがちになるかもしれません。ただ、このような安易な解決をしてしまうとまた同様のケースが繰り返される可能性がありますし、それを見ている従業員のやる気にも悪影響を与えてしまう可能性があります。
このような場合は、まずはクレームをつけている方に、毅然とした態度で退店を求めましょう。もし、そのような対応が難しいということであれば、可能であれば別室に移動してもらい、その場で警察を呼ぶということも一つの方法です。大きな声で怒鳴り散らしている時点で威力業務妨害に該当する可能性がありますので警察も対応してくるケースかと思います。
このように、謂れのないクレームに対しては毅然とした対応をすることが重要です。