MENU

債権・売掛金6つの回収方法

<内容証明郵便>

 債権回収の第一歩として、一番オーソドックスな方法として考えられるのが内容証明郵便です。

 内容証明郵便とは、いつ、いかなる内容の文書を、誰から誰宛に差し出されたかということを、郵便局(日本郵便株式会社)が証明する制度です。内容証明郵便を出す場合、あらかじめ3通同一の文書を作成しておき、1通は債務者に、1通は差出人に、残る1通は郵便局に保管します。この郵便局の保管する文書が、後にその文書を出したことの証拠となるわけです。

 当事務所で内容証明郵便を出す場合、必ず配達証明を付けます。配達証明とは、郵便物が債務者に配達されたことの証明をするものであり、この活用によって、債務者が配送先の住所にきちんと住んでいるかといったことも把握が可能になります。

 内容証明郵便では、弁護士名義で、債務者に対して期限内に支払わない場合には、法的手続を行う旨明記します。弁護士名義の内容証明郵便が一般人からの内容証明と異なる点は、弁護士が主体なので、支払いをしなければ本当に訴訟等を起こされてしまう、というプレッシャーを与えることができることです。

 多くの場合は、この内容証明郵便によって相手方から連絡があり、交渉がスタートすることになります。債権の内容に争いがなければ、話し合いによりスピーディーな解決が可能です。

 当事務所としても、債権の回収を第一に考えつつ、最大限個々の事件にあった解決方法を考えています。例えば、単純に債権の支払いを求めるだけではなく、代物弁済、担保の設定、在庫商品の引き揚げ及び買い上げ、他の売掛債権との相殺等、様々な方法により事案にあった解決の道を探していきます。

 ただ、注意すべき点としては、内容証明郵便を出すだけでは、何らの法的効力も持たないという点です。相手方に対し、強制執行等をしたい場合には、別の手続を検討する必要があります。

<支払督促>

 支払督促とは、債権者の申立てにより、裁判所が債務者に対して「支払督促」という文書を送付してもらうという制度です。

 支払督促は、支払督促を受けた債務者からの異議の申し立てがなければ、一定の手続の上で強制執行も可能となります。

 もっとも、債務者からの異議が出された場合には、通常の民事訴訟に移行します。そのため、債権の内容自体に争いがあるような場合には高い確率で通常の民事訴訟に移行してしまいますので、その分解決までに時間がかかってしまいます。したがって、このような場合には、最初から通常の民事訴訟を提起する方がよりスピーディな解決につながるでしょう。

 支払督促は、書面審査のみで強制執行も可能となる手続である反面、債務者の反応次第によっては、民事訴訟となる手続です。そのため、この方法をとる場合には、事案の見極めや他の手段との併用等も視野に入れた検討が必要となります。

<少額訴訟>

 少額訴訟は、60万円以下の金銭の支払を請求する訴訟を提起する場合に可能となる手続で、審理を原則として1回で終わらせて直ちに判決の言い渡しを受けることができる手続です。

 少額訴訟による判決も、通常の民事訴訟における判決と同様に強制執行が可能です。また、少額訴訟に特徴的なこととしては、判決によって分割払いその他の支払猶予が定められることがあり、裁判所によるより弾力的な対応が可能となっています。

 他方、少額訴訟の手続においても、債務者が通常の民事訴訟を望む場合には、やはり通常の民事訴訟に移行してしまいます。

 そのため、支払督促と同様、当初より争われることが見込まれるような事件の場合には、避けておいた方が無難と言えます。

 なお、少額訴訟は手続が大幅に簡単になっているので、弁護士に依頼することなく行うことも可能です。しかしながら、通常の民事訴訟に移行するリスク等も踏まえると、あらかじめ弁護士によるアドバイスを受けた方が得策と言えます。

 また、少額訴訟は、同じ簡易裁判所に、1年に10回までしか少額訴訟を利用することができないことにも注意が必要です。

<民事調停>

 民事調停とは、民事上の紛争について当事者が裁判所の下で話合うことによって、合意による解決を図る手続です。

 民事調停を行うメリットとしては、話合いによる解決を目指す手続であることから、訴訟等による解決よりも柔軟な解決策を盛り込むことができます。また、合意が成立した場合には強制執行も可能です。

 他方で、あくまでも話し合いによる解決であることや、民事調停の申し立てにより債務者に出頭が強制される効果がないことなどから、話し合いがまとまらない、又はそもそも債務者が裁判所に出頭しない等の理由で解決が難しいこともあります。

<訴訟手続>

 弁護士による債権回収として、誰もが最初に思い浮かべるのが訴訟手続です。訴訟手続は、弁護士が債権者の代理人となって裁判所に対して訴えを提起し、判決を求める手続です。訴訟手続により得られた判決は、これをもとに強制執行を行うことが可能となります。

 当事者間で話合いがそもそもできないような場合や、債権について争いがあることなどから当事者同士話し合っても解決ができない場合等、もはや話合いで解決できない場合は、速やかに訴訟手続に移ることをお勧めします。

 訴訟手続には時間がかかるのでは、とお考えの方も多いと思いますが、訴訟を提起したとしても債務者が出頭しない場合や全く争わなかったような場合には、思いのほか早く解決する場合もあります。

 また、通常の民事訴訟においても、訴訟の進捗状況を踏まえつつ、債務者と和解をする機会があります。提訴前の話し合いでは解決できなくても、債務者に不利な判決が出ることが見込まれる場合には、多くの場合債務者との和解が成立することもあり、スピーディーな解決が可能となります。

 他方、訴訟手続による場合には、争いがあってもこれを排除して債権回収を達成するという特性から、時間と費用が掛かります。そのため、争いの状況や債権者の資産状況などの調査を踏まえた事案の見極めを通じて、費用倒れにならないかという観点からの検討が重要となります。

 当事者間の話し合いが尽きたところから訴訟手続が始まります。訴訟手続が必要とされる場合には、多くの場合債務者の資産状況が悪化していて債権回収が困難な場合もあり得ます。そのため、訴訟手続をしたとしても、費用倒れになってしまうこともあります。しかしながら、話合いで解決しないような相手に対しては、訴訟手続を取らなければ債権回収はまず不可能なのもまた事実であり、その債権回収の可能性の見極めも必要となります。当事務所では、こうした債権回収の事実上の可能性も大切な要素として債権者様と一緒に考えていく姿勢を大切にしております。

<強制執行>

 債権の内容を強制的に実現する手続です。具体的には、債権者が、債務者の不動産や第三債務者に対する債権等を差押え、強制的にこれらを金銭に換価して回収していきます。

 強制執行は、一般の債務者にとって最も強力な手続です。債務者の資産が判明している場合には、ほぼ強制執行手続により債権の回収が可能となります。

 強制執行には、強制執行の対象により、大きく分けて不動産執行、動産執行、債権執行の3種類があります。債務者の資産状況に併せて、一番効果のありそうな手段を選択していきます。

 そのため、強制執行をする場合、債務者の資産がどこにあるかをきちんと把握しておく必要があります。仮に債務者の資産のありかがわからない場合、その債権は絵に描いた餅ともいえる状況にあるからです。

 当事務所では、強制執行に先立って債務者の資産状況を調査し、可能な限り適切有効な方法で取り立てることモットーにしております。債権回収は結局取り立てて初めて意味があるものですから、できる限り有効な手段を債権者様と一緒に考えていくという方針を取っております。

The following two tabs change content below.

森大輔

2009年の弁護士登録以来、企業問題に取り組む。森大輔法律事務所を開所し、労働分野や広告、景品表示案件を中心に多くの顧問先をサポートしている。講演実績は多数あり、企業向け・社会保険労務士向けの労務問題セミナーを定期的に開催している。

NEWS & TOPICS 新着情報